私はあなたの魔剣デス ~いや、剣じゃないよね、どう見ても違うよね?~

志位斗 茂家波

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6章 悪意と善意、トラブルメーカーと苦労人

6-4 帰路と遭遇の難しさ

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‥‥‥基本的に、帝国から王国へ帰る際には馬車を使用するだろう。

 だがしかし、特に問題がなければそうでない帰路の手段を取ることがある。


「まぁ、たまにはのんびりとした飛び方も、ありだなぁ…」
「ゆったりとした羽ばたきで、こうものんびり進むんですネ」

 大空をバサァっとゆっくり羽ばたき、完全竜化した姿でのんびりと飛行する。

 やろうと思えばこの状態でかなりの速度を出してあっという間に王国へ辿り着くことも可能だが、そう急ぐ旅路でもないだろう。

 そもそも、馬車ならそれなりに時間がかかる距離を短縮できる姿でもあるが‥‥まぁ、たまにはこういうゆったりとした空の旅路も悪くはない。

 ジェット機で飛ぶのではなく、のんびりとした飛行船に乗っての旅路だと思えば、ここまでゆっくりと空を行くのも面白いものではある。


「でも、そんな横で普通に空中を歩くメイドがいるのはどうなのか…ウイングとかでもないのに、何で空の上を平然と歩けるんだよ」
「単純にメイドとして、どんな場所でも歩めるようにしているだけなのデス。たとえ火の中水の中、地面の奥深く、重力が凄まじい場所‥‥そんな様々な環境にも対応できつつ、平然とした動きが出来るようにしていますからネ」
「前者はともかく、後者は特殊な環境だよな?」

 まぁ、そんな場所も行ったことはあるけれども、それって絶対にメイドが歩むような場所ではないだろう。

 そう思いつつも、ゼナだからやろうと思えばできるのかと、もはや便利な言葉でツッコミを放棄しておく。乱発すると説得力が落ちそうなものなのだが、彼女の場合そんな気もさせない。
 
 いや、そもそも毎回ドンドン斜め上にやって来るので、落とすどころか上げているのだが‥‥うん、深く考えるまい。

 今はただ、のんびりと空の旅を楽しんでいるので、難しいことを考える意味もないだろう。




 面倒事に関してのスルースキルも、メイド魔剣を手にしてから向上してきたような気がしなくもないが、深く考えずに飛行していると、ふとある光景が見えた。

「あれは‥‥大空をゆく、魔獣の群れか。飛行可能な『オンブバード』だったか」
「空から急降下して、背中に取りついて無理やり負荷をかけ、腰をやったところを狙う魔獣でしたネ」
「別名ぎっくり腰誘発鳥…あれで数多くの魔剣士たちが、腰を痛めたという話も聞くな」

 魔獣は通常、生きとし生けるものを滅ぼそうとしてくるのだが、あの魔獣たちはさらにたち悪く、相手を痛めつけてから攻撃をしてくるという話を聞いたことがある。

 ぎっくり腰誘発鳥…そんなものに腰を痛められたくはない。

「せっかくのんびりとした旅路に出てこられうのは嫌だが、やるしかないか。ゼナ、ここはグラビティマシンソードモードの重力球を使って、一気に仕留めるぞ」
「了解デス!」

 完全竜化を解除し、ゼナの形態を変えてすぐに攻撃の用意を始める。

 相手の方もどうやら俺たちの存在に気が付いたようで、すぐに滅ぼしてこようとするのか、まとめて一気にやって来るらしい。

 たった一体が仕向けられるという事はなく、全力で潰すためか全部迫ってくる光景は、数の暴力を振るおうとする輩にしか見えない。
 
 通常であれば恐ろしい場面なのだろうが、生憎このモードはそういう相手にこそかなり有利に働くのだ。

「『重力球』発射!!」

 ぶぉんっと音を立てて半透明の黒い球を作り、オンブバードの群れへめがけて発射する。

 真っ直ぐそのままの勢いで飛来し、直撃する寸前に一気に巨大化した。

【【【グギャゲゲゲェェェ!?】】】

 当たらないだろうと思っていた様子だが、突然大きくなって次々に勢いよく群れが飛び込み、捉えられたことに関して驚きの声を上げる。

 だが、こうやって捕まった時点で既に相手は詰んでいるのだ。

「せーの、一気に潰すっと!!」
グッシャァァァァァァ!!

 大きな球が群れを包み込んだまま、あっと言う間に圧縮され、内部にいた魔獣たちもまとめて押しつぶされる。

 抵抗する間もなく、強力な圧縮に対して素直に従わされて、断末魔も上がらなかった。

「後は念のために…ガトリングソードモードからの、チャージショット!!」

 魔剣による攻撃で魔獣を葬ることはできるが、万が一という事もあるだろう。
 
 というか、こんなに押しつぶされてしまった状態なのに、まだ辛うじて息があるようでびくびくと蠢いており、一気に消滅させるためにエネルギー弾を発射する。

 ついでにブレスもプラスして、高威力の火炎弾と化した攻撃が飛び‥‥‥そのまま相手をすべて呑み込み、消し炭にするのであった。



「‥‥‥魔獣反応、消滅。無事に消えたようデス」
「そうか…うん、何となく思うけど、だいぶえげつない戦い方もできるようになったなぁ」

 あっけない戦いを終え、俺は思わずそうつぶやく。

 帝国に来る前は、まだ今のような数の相手はガトリングで掃射していたが、留学を終えた頃合いには数の多い相手に対してより有効な攻撃手段を獲得し、圧勝することが出来るようになった力。

 魔獣を葬り去るという想いはあるのだが、それでも今のようなやり方が出来るようになったことに、自分でやったことながら中々えげつない手段を取れてしまったなと何とも言えない気持ちになる。

「というか、ドラゴンの力もそんなに使わずに出来たけど‥‥‥留学を終えたら、ここまで強くなってしまうことに想像できたのだろうか」
「留学云々、関係ありますかネ?」

‥‥‥珍しく、ゼナからのツッコミが入ったようだが、ノーコメントで通すのであった。



 でも考えたら、ゼナが強化されたからこちらも同時に強化したような‥‥‥だが、それでもまだ強さには上限はないし、正攻法ならまだしも搦め手などの手段もあるだろうし、きりがない話なのかもな。


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