のんびりしたい魔人と氷姫 

志位斗 茂家波

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氷姫

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SIDE氷姫


「たーーーーすーーーーけーーーーてーーーーーーー!!」

 いつの間にか溶けかかって川に沈みそうになっている氷の船から水をかきだしながら、私、フリージア・フォン・クロニクル侯爵令嬢、いえ、もう家名を捨てただのフリージアとなっている私は、岸辺の方に見えた人の影に、助けを求めた。


 ああ、何でこんなことになったのでしょうか……








 時間は戻り、昨夜のことを思い出した。

 私はその時、メーリング王国の王城で主催されていた舞踏会に出席していたのである。

 会場を歩き、私は昔思いついて計画していた、最終段階となるべきその瞬間を今か今かと待っていました。




……実は私には、前世と言うべき記憶があるようです。

 身体が弱く、余り外に出られず、深窓の令嬢なんて呼ばれていましたが、とにもかくにもあまり自由がない生活でした。

 思いっきり動き回りたいのに、身体の方が付いていかず、倒れてしまう。

 そんなある日、私の体の治療ができるかもしれないという話が持ち上がり、飛行機に乗ってその地へ向かおうとしたのです。




 ですが、不運にも事故に遭って、気が付けば私はフリージアという少女としてこの世界に転生していました。

 
 前世の不自由な生活の分か、生まれつきどうやら私は色々力を持っているようで、特に氷の魔法を得意にできていたのです。

 そのせいで、氷姫と呼ばれることが多かったのですが……ちょっと恥ずかしいと思えました。



 まぁ、暑い日とか、アイスを食べたい時に役に立つのは良かったですし、不自由だったときに本を読み漁りまくり、知識を得ていたおかげで、時たま父の領地経営の相談に乗ったり、様々な特許などを取得して、前世出来なかったやりたいことを色々やってみていたのです。

 というか、特許ってこの世界にもあるんですね。なんでも他国の方で考えられた制度で、ギルドとか言うのが会って、そこで登録するそうです。そして、登録者が特許の許可を停止すると、全てのその特許の製品が使えなくなるという仕掛けもあるのだとか。ううむ、物凄い仕掛けである。

 特許の例としては、大陸を超えた国の方にいる精霊王の妃が考え出した物とか、土地そのものを入れ替える力を持った帝国の王妃とかも出しているのだとか。どこの国の王妃もすごいなぁ。



 ですが、侯爵令嬢と言う身分のせいか、次第に淑女教育とかで自由が無くなり、本当につらい日々でした。

 しかも、いつの間にか浮気男と言うか、ゆるゆるの最低無能馬鹿王子と呼ばれるメーリング王国の第1王子との婚約が結ばれていたのです。

 なんでも王城からの要請で断り切れず、嫌々と言う形でした。


……この話を聞き、私は激怒しましたが一ついい案を思いつきました。

 淑女教育とかで自由もなく、更にそんな男の下へ嫁ぎたくも純潔を散らしたくもない。

 そう!!私は何処かゆったりとした地でのんびりとした生活が送りたいのです!!


 その思いと、心の叫びを合致させるナイスアイディアを思いついたのは良かったでしょう。







 そして舞踏会の終盤、ついにその時が来ました。

 馬鹿王子ことメーリング王国の第1王子であるオロウ・フォン・メーリングが、取りまきとその傍らには化粧がめっちゃ濃い少女を連れて、私の前に来ました。


「フリージア・フォン・クロニクル侯爵令嬢!!お前との婚約をこの場で破棄させてもらう!!」


きたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!
(゚∀゚)


 そう思いっきり叫びたかったですが、心の中でばれないように我慢いたしました。


 ここで焦っては、何もかも無駄になってしまう。

 ええ、淑女らしくきちんと対応し、この機会を逃さないようにしないといけません。


 このためだけに、今この国の国王や王妃と言った他の王族方は、私のこっそり入れた下剤で籠ってもらってまして、邪魔が入るはずもありません。

 と言うか、止めに来るだろうし絶対にここでさっさと終わらせてもらわねばいけません。

 普段は嫌ですが、今回ばかりはある意味頼りになる王子でしょう。

 あ、余談ですが第2,3,4と他にも王子がいるそうですけど、この馬鹿よりは賢いそうですよ?ただまぁ、この馬鹿がやらかしそうなので一時的避難として他国へ留学させられているそうで、一度しか見たことがありませんけどね。




「……なるほど、婚約破棄ですか」


 内心の歓喜をばれないようにしながら、私はそっと対応し始めます。

 慎重に、焦らず、魚を釣るときのようにそっと大物婚約破棄を釣り上げるのです。



「そうだ!!貴様はこの僕にとって愛しいレンゲ・フォン・キリ男爵令嬢に嫉妬ゆえか数々の非道なふるまいをしていた聞く!!そのため、お前のような極悪非道の冷徹な女よりもこのレンゲを愛するしかできなくなってしまった!!そもそも、このレンゲはすぐさま相手をしてくれたのに貴様は婚約状態でということから体も許さずこの発散をさせなかった!!よって、この僕との婚約を破棄するのが一番良いのだと結論付けたのである!!」


 最初の方は完全な冤罪であり、むしろ逆にそのレンゲさんとやらが仕掛けてきた証拠もこちらの方で握っているのですが…‥‥そこではなく、後半のセリフの方に驚きましたよ。

 淑女故に、きちんと婚姻を結ぶまでは貞操を守り抜くのが当たり前だと思うのですが、この馬鹿王子とレンゲとか言う女はどうやらそれすら考えずに、若い時の過ちとでも愚かさとでもいうべきか、身体の関係を作ったようですね。

 

 その言葉を言ったことで、王子は「婚約している身でありながら、別の女に」……いや、元々悪評高い馬鹿でしたので特に問題はないかもしれません。

 レンゲさんの場合は、「婚約者を寝取った女」ということになるでしょうけど、まぁそれはいいでしょう。人を作るのは、その人自身の行いによるものですからね。



 で、私は「婚約者を格下の女にとられた」という事になるでしょうけど、むしろ馬鹿の性欲のはけ口になっていただき感謝しています。私は本当に愛する人としか契りませんからね。



 そして、その後に出るであろう言葉を、私は身構えて今か今かと待ち構える。



「本来であれば、この愛しのレンゲを害したという事で連帯責任で家をとりつぶしと言いたいところだが……家を潰すという事は、そのあとがまを決めなければならなくてめんどくさい!!そこで、お前を国外永久追放とここで処分を下す!!」


 ヨッシャキタコレ!!


 歓喜を隠しながらも、私は落ち着いて受け入れた。

「……では、今からでもこの国から私は去りましょう。それではさようなら」



 踵を返し、私は真っ直ぐに城から出た。


 そのまま馬車に乗って……ではなく、御者に手紙を持たせて行かせた。


 まぁ、その手紙は父宛であり、色々と詰め込んでいるのでちょっとした辞書並みになったけどね。




 荷物とかは、何もない。

 でも、未練もないしきちんと事前に計画していたことなので心配はないのだ。






 月夜の中を歩き、国内を流れるとある川に私はたどり着いた。

 魔法で氷の船を作り、その船の中で横になって流れに身を任せる。

 川の流れの速さから、昼頃には目的地であるとある森に近いところまで差し掛かるはずだ。

 そしてそこには、この国外追放を見越して事前に私が用意していたのんびり生活を送るための拠点があるのだ!!









 で、時間は今に戻り、たどり着く前に天候を考慮していなかったという失態があって、船が溶け出して物凄く慌てました。

 ああ、なんでそういう肝心なところで私は抜けるんでしょうか……?



 結局助かったのは良いのですが、助けてくれた相手は青年…‥‥でも、どこか不思議な雰囲気があり、そして明らかに人外であると私の勘が告げています。

 計画って、うまいこと行かない物ですねぇ・・・・・・・・・・
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