のんびりしたい魔人と氷姫 

志位斗 茂家波

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とある国王の頭痛

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SIDE アルバスト・フォン・メーリング

「はぁ……どうしてこうなってしまったのだろうか?」

 メーリング王国の王城内で、国王アルバストは溜息を吐いていた。



 1ヶ月ほど前、舞踏会があった翌日に、アルバストは舞踏会での出来事を息子である第1王子のオロウから聞いていた。

 その時にはお腹を何故か下していたために出席できず、自分たちはトイレに籠っていたのである。


「父上!!このたび僕はあの悪逆非道なフリージアを国外追放にして、このたび新たに真実の愛つぉいてレンゲを妻にすることを決定いたしました!!そして、舞踏会の場で見事に宣言をしてやりましたよ!!」

 どやぁぁっと、物凄く殴りたいようなどや顔と呼ばれる笑顔で言い放ったオロウに対して、まだ腹が下し気味であったアルバストは激怒した表情で言葉を発しようとしたが……


「な、な、何をお前は…‥‥」

 グギュゴロゴロゴロゴロ……
「ぐぅっつ」


 怒りで叫ぼうとしたが、下しているので力が入らないアルバスト国王。


 落ち着いてお腹を指すって抑え、ようやく声を発した。

「何をお前はやっているのだ?舞踏会の、つまり公の場で堂々と婚約破棄をするとは、その意味をお前は理解しているのか!!」
「父上、あの女はこの愛しのレンゲに酷いことをしていたのですよ?そんな悪女には堂々と皆の前で裁かれるのが筋ってものでしょうが?」

 アルバストの言いたいことをよく理解していないような、オロウの愚かさに、アルバストは頭を抱えたくなった。



「いいかよく聞けこの愚息よ。お前が出した証拠等は全て冤罪であるとすでに各所で判明しているのだぞ!!」


 激怒しながらも、漏れないようにお腹を押さえるアルバスト。





 実は舞踏会の後、ようやくトイレから出てきたアルバストたちに従者たちから事のすべてを彼は聞いていたのである。

 既に証拠等もあるようで、フリージア令嬢を慕っていた者たちは直ちに国王の下へその証拠の数々を、念のためにコピーしたものを送ったのである。



「有りもしない冤罪で侯爵令嬢を貶め、婚約破棄をするばかりか国外追放!!私がその場にいればいさめた者を、お前は直ぐに済ませてしまったではないか!!」
「え、冤罪!?そんなはずはありません父上!!大体婚約者の身でありながら、私に体を許さないほうがおかしいのだと思うのですが!?」


 自分勝手なその発言に、怒りを通り越して呆れるアルバスト。

 下々の物に、オロウがどの様言われているのかを理解しており、その馬鹿さをより感じたからである。










 そして現在、そのあまりの愚かさに、これ以上王家の醜聞となるのを防ぐためにオロウを王城の自室へと謹慎したのだが、その態度に変化は見られない。

 むしろ、余計に暴れまわり、廃嫡を現在検討中なのである。


 ただ、厄介な事として、オロウは様々な問題ごとを出していた。


 まず、彼に手を付けられた女性たちへの賠償金問題。

 もう人間か?と疑問を疑いたくなるほどの性欲をオロウは持っていたようで、娼館などに通い詰め、避妊せずに子供が大量にできているらしい。

 一応あんな奴でも王族であり、生まれてきた子にも王家の血が流れていることになる。

 ただ、オロウは飽きたら捨て、全くその問題に見向きもしていないようできちんとケアを行っていないことが明らかになったのである。

 泣き寝入りをする女たちもいて、中にはどこぞやの貴族の令嬢だった……なんてこともあったのだ。

 その為、諸関係に対して整理するために動いているのだが、もはや数が多くてむしろ良くそれだけを相手に出来たよなと、感心はしたくないが、それだけの事をしていたことにアルバストは驚いた。



……むしろ、自分の息子の不貞に気が付けなかった自分も同罪であろう。

 オロウをたぶらかしたレンゲとやらも、なんとあの婚約破棄の時点で妊娠をしていたようなのだが、ここでさらに驚くべきことに、その子供はどうやらオロウの子供ではなかったようだ。


 貴族には不貞で子供ができていたりするので、きちんと誰の子供かなどを確認できる魔法があり、それで鑑定が可能のだが、レンゲに出来ていた子供はオロウとの血のつながりがなかったのである。

 どうやらオロウに惚れてはいたもの、護衛の一人にも夢中になったそうで、その際に……過ちを貸したそうだ。



 婚約者を寝取ったという事だけでも十分罪なのに、さらにその子供を王族の子供として詐称しようとしたことによって、レンゲは強制的な胎堕をさせられ、実家へ送り返された。

 だがしかし、その実家……キリ男爵家はどうも不正を働いていたようで、貴族籍剥奪の平民に落としていたので、帰ったところでどうしようもない。

 
 その後の彼女の話は聞こえてこなくなったが、おそらくどこぞやの好き物の貴族に飼われたのではないだろうかと言われ、その後消息が不明になった。






「ごたごたもなんとかして、流石につかれたな……」

 はぁっと息を吐き、肩を叩いて疲労の色を魅せるアルバスト国王。

 幸いと言うか、王子は他に第2、3,4王子といるので、いつでもオロウを廃嫡することは可能で、その他の皇子たちに王位を継がせることができるのであった。


 
 それはそれでいいとして、まだ他に問題があった。


「とんだ置き土産と言うか、フリージア令嬢の功績によって支えられていたところが大きかったのがなぁ……」

 

 ふと臭いをかぐと漂う異臭。

 不快になるようなものでもあり、頭痛の種でもあり、そして気分的に沈ませるようなものである。





……ギルドにて、フリージアはいくつもの特許を登録し、そしてある契約を結んでいたことを知ったのは、その異常事態が起きてからであった。

 彼女はどうやらあらかじめこの婚約破棄が起きる可能性を見通していたようで、全ての彼女の特許は「王子との婚約破棄が一方的になされた場合、このメーリング王国の(実家の侯爵家の領地を除く)彼女の特許を使用した物はすべてギルドが回収してフリージアが生きている間は、彼女自身が契約を撤回するまで再設置や似たようなものの設置はできないようにする」とされていたのである。


 ギルドはどの国にも所属しない、どの国の王族だろうとその命令を受け付けない絶対独立機関。

 彼女が生きている限り、その契約は履行され、そして続いていく。


 フリージアが許すその時まで、彼女が特許を取った製品はすべてこの国では使用不可能なのだ。






 そして、そんな彼女の特許を取った製品と言うのが、実は国内に多く存在していた。

 設置されているだけで、周囲の下水道などの浄化をする噴水。

 いつでも冷えたまま、新鮮なまま保存できる冷蔵庫及び冷凍庫。

 


 その他多くの彼女の特許によって生み出されたものが、この国に数多く存在し、いつしか当たり前のようになっていたのだ。


 そして、そんな彼女が一方的な婚約破棄及び、国外追放された今、その契約はなされ、全ての彼女の製品が無くなった時、その事態に気が付いたのである。






…‥‥新鮮な食材は消え、浄化されないせいかそれともあの馬鹿王子の業が深いのが影響を与えるのか空気はよどみ、水は濁り、何もかも汚れてしまった。

 
 メーリング王国は、かつてその綺麗さが誇りだった国である。

 だがしかし、いつしかよどんでいき、どんどん国全体が汚れてしまった。



 フリージアの帰還を望み、そして再び綺麗な土地へと望む者もいたが、彼女は現在行方不明である。

 唯一実家のクロニクル侯爵家には、彼女の物は残っており、それを譲り受けようとしたのだが、ギルドからの契約で再設置も不可能であった。



 たった一人の清浄をもたらす令嬢が消えたことで、この国はあっという間に汚濁に飲み込まれていく。




 現在もフリージアを捜索はしているのだが……彼女は父親に手紙を出しているようだが、出しているのは別の国からである。

 だがしかし、その国には彼女は住んでおらず、手紙を出す時にだけしか現れないようなのだ。


 彼女は妻がいる王から見ても美しい娘であるがゆえに、すぐにでも目撃情報が集まるかと持ったが……何者かが隠しているかのように、その所在が捕まらない。





 はぁ、っとため息をつきアルベスタ国王は頭を抱えるのであった。
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