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緋色の転生編
3.たくさんの幸福で包まれますように
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「…………ふがっ」
んーなんっっっじゃあこりゃ。
なんかいつものベッドより柔らかい気がする。
雲の上かここは?
きんもちいぃ~いつまででも寝られる~。
すやぁ。
「…………じゃない死んだの私?!!」
慌てて身体を起こすと、見慣れない景色が目に入った。
どこだここ?
広い部屋に高そうな家具、高そうな絵。
ベッド大きい。大人五人とか余裕でしょこれ。
え?マジでどこ?
ガシャン
「ほぇ?」
大きな音がしたと思ったら、部屋の入り口でアルティが桶ごと水を溢してる。
「リ、コ…ちゃん…」
「ん?あ、はいリコリスです。うぃっす?」
「リコちゃん…リコちゃあああああん!!」
「うひゃあ?!!」
アルティは泣きながら私に飛びついてきた。
無料で幼女に抱きつかれる世界線たまんねぇー。
って言ってる場合か自重しろ!
そうか、魔物の群れと戦って気絶したんだ…
ここはアルティの屋敷か。
倒れた後、介抱されたらしい。
傷は無い…痛みもない…
ちゃんと生きてるみたいで何より。
よかった…
「うわあああああん!よかった!よかったよぉ!!わああああああん!!」
「うんうん、よしよし。泣かない、泣かないよー」
アルティの泣き声を聞きつけて、お父さんたちが部屋に入ってきた。
「リコリス…ああリコリス!!」
お母さんが涙いっぱいに抱きしめてくる。
「三日も眠りっぱなしで…このままずっと目が覚めないんじゃないかと思った…」
「ママ…」
心配させちゃったな…
ちょっと無理しすぎたか…
「リコリス」
「パパ――――」
パンッ
乾いた音が一つ。
左の頬を叩かれたとわかったのは、怒鳴られた後だった。
「何故…何故あんなバカなことをしたんだ!!一歩間違えれば死ぬところだったんだぞ!!何故おれたちの帰りを待たなかった!!何故一人で向かって行った!!」
「…………」
「お前が賢いのはわかってる!!アルティたちを心配したことも!!結果的に何とかなったのかもしれない!!だけど、だけどなぁ…お前が死んじまったら、遺されたおれたちはどうなる!!」
叩かれた頬は痛くない。
でも痛い。
泣きそうなくらい痛い。
「心配させるなよ…愛しい娘だぞ…!!」
「ゴメンなさい…ゴメン、なさい…」
シーツの上に涙が落ちた。
本気で心配してくれてたことが、とてつもなく嬉しくて。
「くそっ…くそっ…!!」
「ユージーン」
「…っ、すまねえ。おれが…おれがもっと早く帰ってりゃあ…ちくしょお…!!」
泣いてるお父さんの代わりに、今度はヨシュアさんとマージョリーさんが前に出て、ベッドの脇に両膝をついた。
「ヨシュアおじ様、あの魔物たちは…」
「君がオークジェネラルを倒した後、すぐにユージーンたちが駆けつけてくれてね。逃げた魔物以外は全て討ち倒したよ。君の従魔たちも頼もしかった」
窓の外に目を向けると、庭でリルムたちがお昼寝してる。
柔らかい芝生は気持ちがいいらしい。
「リコリス=ラプラスハート」
「ほへっ?は、はい」
「クローバー領領主として、貴殿に礼を言う。私を、私の家族を、そして領民を守ってくれたこと、心から感謝する。我が辺境伯家の名に於いて、貴殿への感謝を生涯忘れないことを誓おう」
子どもながら、そういうのに縁が無かった元女子大生ながら、貴族…それも辺境伯という地位の人間が平民に膝をついて口上を述べる意味は、なんとなく理解出来た。
これがとてつもないことであるということを。
はぁ、大げさぁ…
息詰まるぅ…
そういうのはいいので、とりあえずご飯とかいいですかね…
「討伐した魔物の素材等は、ひとまずこちらで預かり冒険者ギルドで査定してもらっている。ユージーンたちとも相談したんだが、今回は全て君への報酬という形を取らせてもらいたい」
冒険者ギルド…
なるほどそういうのもあるのか。
「あの、気にしないでください。アルティのために必死だっただけです。結構なまぐれっていうか…とにかくみんな無事でよかったです」
「……さすが英雄の子と括るのは失礼だろうね。親子二代で返しきれない貸しを作った」
「親子二代…それは、辺境伯様がパパたちと知り合いなのと関係があるんですか?」
「昔二人で旅をしていた頃、魔物に襲われていたところをユージーンとソフィアに助けられたの。それ以来のお友だちなのよ。あなたのお父さんたちはね、十年前このドラグーン王国が魔物の軍勢に襲われたとき、たった二人で国を守った英雄なの」
ほへぇ、すっご。
規模が大きすぎてポカーンてなったけども。
「騒がれるのが苦手で、田舎で隠居みたいな生活をしているんだけどね」
「ゴメンねリコリス。黙っていて」
「ううん。英雄でも何でもパパとママなのは一緒だから」
ていうか隠し事なら私もしてるから。
「本当…無事でよかったわ」
「ママ…」
「それはそれとして」
「?」
「オークジェネラルを倒したことと、いつのまにか増えてるスキルについての説明はしてくれるのよね?」
「はへぁ…」
唐突すぎて変な声出た。
【鑑定】で人のスキル見るのはプライバシーの侵害だからやめなさいって言ってたのに!
お母さんのえっち!近親相姦!エロ同人誌!
ちょっと早い反抗期突入しちゃうんだからね!プンッ!
「リコリス」
「はひっ!」
「話しなさい」
魔物よりお母さんの方が怖いんですが…
ていうか、ご飯…
で、誤魔化せそうもなくてわかる範囲で説明したのに、大人たちは不可思議だと顔をしかめた。
「ただでさえ聞いたことがないユニークスキル…それに加えて異質な能力…。魔物だけじゃなく人間にまで効果を及ぼすなんて」
「賢者ソフィアでさえ概要が掴めないなら、ひとまずは保留かな。危険は無さそうだし、安心していいんじゃないかな?」
「それはそうだけど…スキルの習得条件が簡単すぎるのよ。普通は修行や経験の積み重ねで習得するものなのに。それに、考えなしに従魔を増やすのは感心しないわね」
それはゴメンと思ってる。
「スキルは便利だけど、そればっかりに頼っていたら痛い目に遭うわよ。特に【自己再生】と【痛覚無効】なんて、治るから無茶していい、みたいに解釈するでしょう」
実際、それありきでオークジェネラルを倒したみたいなもんだから否定は出来ない。
けど、後悔はしてない。
無茶な戦いをしないと、私じゃきっとみんなを守れなかったから。
「そろそろリコリスにも、いろんなことを教える時期なのかもな」
「なら、リコリスちゃんも学園に通うかい?」
「学園?」
「ナインブレイド第一学園。七歳から通える国の公立機関さ。一般教養から礼節、武術、スキルなどいろいろなことを学べる。全寮制でアルティも再来年入学予定なんだ。平民も希望すれば貴族に混じって入学試験が受けられる。君がいてくれればアルティも安心して学園生活を送れると思うんだが、どうかな?」
アルティが横で目をキラキラさせてる。
学園ねぇ。
「おれとソフィアも学園に通ってたんだぞ。おれは勉強嫌いで中退したけどな」
偉そうに言うことか。
いろんな女の子が集まってくるのは、めちゃくちゃ興味ある。
美少女と美人女教師に囲まれた生活とか絶対楽しい。学園編はテンプレですからねぇ。
けど、
「お断りします」
「なんで?!」
アルティの圧よ。
「堅苦しいのはちょっと…。学園に通うお金ももったいないし。私はのびのび育ちたいので」
多分に本音なんだけど。
こちとら小中高ともう学校生活謳歌しきって女の子好き拗らせてるわけでして、ええ。
さすがにもういい。
それに、ずっと考えてたことがある。
「私、将来旅に出たいんです」
「旅?」
「どこまでも自由に。楽しいことを探して。そんな生活に憧れてるんです」
「リコリスちゃんは、将来何になりたいの?」
「幸せになりたいです!」
私が笑顔でハッキリ言うので、クローバー夫妻はつられて笑った。
お父さんとお母さんは苦笑いだけど、アルティは泣いてるなんでやねん。
「アルティ…リコちゃんも一緒に学園に通えると思ってた…」
「ゴメンね」
「ねえ、旅に出るって遠くに行っちゃうの?すぐ?もう会えない?」
「とりあえず成人…十八になるまでは行かないよ。今のままで一人旅なんて絶対無理だからね。ちゃんと鍛えて、お父さんたちが認めてくれるようになるまでは、のつもりでいる。たまには帰ってくるから、二度と会えないなんてことはないよ」
「本当?本当に本当?」
「うん。だってアルティは、一番の友だちだから」
ニカッと笑うとアルティは嬉しそうに抱きついて――――こぬ。
ありゃ?いつもなら嬉しいって抱きついてくるのに。
リコリスちゃんちょっと待っとったよ?
「…………」
顔真っ赤にしてモジモジしてる。
可愛いからいいけど、なんじゃねいったい。
「あらあら」
「アルティは昔からリコリスちゃんと仲が良かったものね」
そりゃ良いけども。
何で今その確認したの?
アルティは黙っちゃうし、大人たちの視線は生ぬるいし。
「じゃ、じゃあ…学園を卒業したら、私もリコちゃんと旅に出る!いっぱい勉強して、いっぱい魔法使えるようになるから!だから…」
私が断ると思ったのだろうか、アルティは顔を伏せた。
ヨシュアさんに目配せすると、肩を上下させて言っても止められないみたいなジェスチャーをしたので、一応了承と解釈した。
「待ってる」
私はアルティを抱きしめてそう言った。
アルティはまた泣いて、力いっぱい抱きつかれて首の骨がへし折られそうになったけど。
まったく…無茶した甲斐はあったかなと、そっと頭を撫でたのであった。
数日後、倒した魔物の素材の査定が終了した。
爪や牙、肉に毛皮、それに装備と魔石。
折れたナイフの代わりが欲しくて、牙を数本、街の鍛冶屋でナイフに仕上げてもらい、あとは肉と毛皮だけ引き取ることにした。
それ以外はほとんど使い道が無くて、欲しいもの以外は全て買い取ってもらい、総額金貨3枚と大銀貨4枚になった。
ちなみに時代時期にもよるけど日本円レートだと、
白金貨1枚=1000万円。
大金貨1枚=100万円。
金貨1枚=10万円。
大銀貨1枚=1万円。
銀貨1枚=1000円。
大銅貨1枚=100円。
銅貨1枚=10円。
鉄貨1枚=1円。
くらい。
金貨3枚だと、タルト村なら税を引いても一年は家族三人で余裕のある生活が出来る。
とはいえヨシュアさんたちの方が被害が大きいわけで、満額そのまま受け取るのはどうにも気が引け、4割程を損害に当ててもらうよう嘆願した。
当然ギルドからは、これだけのドロップアイテムを持ち込んだ人物についての言及があったらしいけど、ヨシュアさんが口添えして何とかしてくれたっぽい。
貴族様々である。
冒険者ギルドか…旅に出るならいつかは登録が必要になるのかな。
あとは魔物の対応。
街道にまでモンスターが出現するのは、べつに珍しいことではないとヨシュアさんの談。
今回の何が異常ってその数。
人を襲いたくてウズウズしてたのか、シンプルに食糧難で人里まで降りてこないといけなかったのか。
魔物の報告は変わらずあるが、あのときほどの数の目撃情報は上がっていない。
お父さんの言ってた迷宮ってのが気になったけど、とりあえずは安心ということにしておこう。
で、私はというと。
とりあえずお母さんからしばらくは従魔を増やすのを禁止された。
スキルは無闇やたらに増やせばいいというものじゃない、だってさ。
たぶんうちの家計的な部分も含まれてるんだと思う。
その考えには同意なので、ひとまずは今覚えてるスキルを伸ばしてみようと思う。
それに剣も使えるようになりたいし、魔法もいっぱい試してみたい。
将来旅に出るのに先立つものも必要だし、やることは山積みだ。
でもまあとりあえず、無事に生き残れたことを報告でもしてみようじゃないか。
誰にって?
そりゃあ……
「リコリスちゃーーーーん♡♡♡」
私のことが好きすぎるこの神様に。
「見てたよぉ♡魔物の群れに立ち向かっていくリコリスちゃんカッコよかったぁ♡」
「見てたんなら助けてよ。死にかけたんだが」
「ダメなのよぉ…これでも神だから、下界に直接干渉は出来ないの…。一応、たまに神託は出してるんだけどね♡」
「たまにて…教会で祈っただけで話せてる私っていったい。ていうか私を転生させてる時点で干渉はしてるんじゃ」
「だってリコリスちゃんは私の特別なんだもん♡」
特別で片付けられる私とは。
「あ!でもあんまり無茶しちゃダメよ。死にかけたときは私すっごい焦ったんだから」
「さーせん」
「素直でよろしい♡」
「今日はさ、お礼を言いに来たんだ。【百合の姫】をもらったときは、女の子特化のスキルかーとか、ふざけてるなぁ神様とか思ってたんだけど…いや正直今も思ってるけど、この力のおかげで大事なものを守れたから。だからありがとう。守らせてくれてありがとう」
言うと、神様は何も言わずにそっと頭を撫でた。
あったかい…
優しいぬくもりが伝わってくる。
やがて神様は時間だと手を離した。
「またいつでもお話に来てね♡」
「今なんかした?」
「ちょっと加護あげちゃった♡私の加護持ちはリコリスちゃんが初めてだよ♡」
「光栄…でいいのかな」
「フフフ♡それじゃあね♡」
「あ、待って待って」
「どうかした?」
「いや、今更なんだけど神様の名前訊いてなかったなって。あるんでしょ、名前?」
神様は嬉しそうに顔を綻ばせると、後ろ手を組んで踊るように告げた。
「私はリベルタス。永劫の自由を司る女神。リコリス=ラプラスハート、あなたの未来がたくさんの幸福で包まれますように」
んーなんっっっじゃあこりゃ。
なんかいつものベッドより柔らかい気がする。
雲の上かここは?
きんもちいぃ~いつまででも寝られる~。
すやぁ。
「…………じゃない死んだの私?!!」
慌てて身体を起こすと、見慣れない景色が目に入った。
どこだここ?
広い部屋に高そうな家具、高そうな絵。
ベッド大きい。大人五人とか余裕でしょこれ。
え?マジでどこ?
ガシャン
「ほぇ?」
大きな音がしたと思ったら、部屋の入り口でアルティが桶ごと水を溢してる。
「リ、コ…ちゃん…」
「ん?あ、はいリコリスです。うぃっす?」
「リコちゃん…リコちゃあああああん!!」
「うひゃあ?!!」
アルティは泣きながら私に飛びついてきた。
無料で幼女に抱きつかれる世界線たまんねぇー。
って言ってる場合か自重しろ!
そうか、魔物の群れと戦って気絶したんだ…
ここはアルティの屋敷か。
倒れた後、介抱されたらしい。
傷は無い…痛みもない…
ちゃんと生きてるみたいで何より。
よかった…
「うわあああああん!よかった!よかったよぉ!!わああああああん!!」
「うんうん、よしよし。泣かない、泣かないよー」
アルティの泣き声を聞きつけて、お父さんたちが部屋に入ってきた。
「リコリス…ああリコリス!!」
お母さんが涙いっぱいに抱きしめてくる。
「三日も眠りっぱなしで…このままずっと目が覚めないんじゃないかと思った…」
「ママ…」
心配させちゃったな…
ちょっと無理しすぎたか…
「リコリス」
「パパ――――」
パンッ
乾いた音が一つ。
左の頬を叩かれたとわかったのは、怒鳴られた後だった。
「何故…何故あんなバカなことをしたんだ!!一歩間違えれば死ぬところだったんだぞ!!何故おれたちの帰りを待たなかった!!何故一人で向かって行った!!」
「…………」
「お前が賢いのはわかってる!!アルティたちを心配したことも!!結果的に何とかなったのかもしれない!!だけど、だけどなぁ…お前が死んじまったら、遺されたおれたちはどうなる!!」
叩かれた頬は痛くない。
でも痛い。
泣きそうなくらい痛い。
「心配させるなよ…愛しい娘だぞ…!!」
「ゴメンなさい…ゴメン、なさい…」
シーツの上に涙が落ちた。
本気で心配してくれてたことが、とてつもなく嬉しくて。
「くそっ…くそっ…!!」
「ユージーン」
「…っ、すまねえ。おれが…おれがもっと早く帰ってりゃあ…ちくしょお…!!」
泣いてるお父さんの代わりに、今度はヨシュアさんとマージョリーさんが前に出て、ベッドの脇に両膝をついた。
「ヨシュアおじ様、あの魔物たちは…」
「君がオークジェネラルを倒した後、すぐにユージーンたちが駆けつけてくれてね。逃げた魔物以外は全て討ち倒したよ。君の従魔たちも頼もしかった」
窓の外に目を向けると、庭でリルムたちがお昼寝してる。
柔らかい芝生は気持ちがいいらしい。
「リコリス=ラプラスハート」
「ほへっ?は、はい」
「クローバー領領主として、貴殿に礼を言う。私を、私の家族を、そして領民を守ってくれたこと、心から感謝する。我が辺境伯家の名に於いて、貴殿への感謝を生涯忘れないことを誓おう」
子どもながら、そういうのに縁が無かった元女子大生ながら、貴族…それも辺境伯という地位の人間が平民に膝をついて口上を述べる意味は、なんとなく理解出来た。
これがとてつもないことであるということを。
はぁ、大げさぁ…
息詰まるぅ…
そういうのはいいので、とりあえずご飯とかいいですかね…
「討伐した魔物の素材等は、ひとまずこちらで預かり冒険者ギルドで査定してもらっている。ユージーンたちとも相談したんだが、今回は全て君への報酬という形を取らせてもらいたい」
冒険者ギルド…
なるほどそういうのもあるのか。
「あの、気にしないでください。アルティのために必死だっただけです。結構なまぐれっていうか…とにかくみんな無事でよかったです」
「……さすが英雄の子と括るのは失礼だろうね。親子二代で返しきれない貸しを作った」
「親子二代…それは、辺境伯様がパパたちと知り合いなのと関係があるんですか?」
「昔二人で旅をしていた頃、魔物に襲われていたところをユージーンとソフィアに助けられたの。それ以来のお友だちなのよ。あなたのお父さんたちはね、十年前このドラグーン王国が魔物の軍勢に襲われたとき、たった二人で国を守った英雄なの」
ほへぇ、すっご。
規模が大きすぎてポカーンてなったけども。
「騒がれるのが苦手で、田舎で隠居みたいな生活をしているんだけどね」
「ゴメンねリコリス。黙っていて」
「ううん。英雄でも何でもパパとママなのは一緒だから」
ていうか隠し事なら私もしてるから。
「本当…無事でよかったわ」
「ママ…」
「それはそれとして」
「?」
「オークジェネラルを倒したことと、いつのまにか増えてるスキルについての説明はしてくれるのよね?」
「はへぁ…」
唐突すぎて変な声出た。
【鑑定】で人のスキル見るのはプライバシーの侵害だからやめなさいって言ってたのに!
お母さんのえっち!近親相姦!エロ同人誌!
ちょっと早い反抗期突入しちゃうんだからね!プンッ!
「リコリス」
「はひっ!」
「話しなさい」
魔物よりお母さんの方が怖いんですが…
ていうか、ご飯…
で、誤魔化せそうもなくてわかる範囲で説明したのに、大人たちは不可思議だと顔をしかめた。
「ただでさえ聞いたことがないユニークスキル…それに加えて異質な能力…。魔物だけじゃなく人間にまで効果を及ぼすなんて」
「賢者ソフィアでさえ概要が掴めないなら、ひとまずは保留かな。危険は無さそうだし、安心していいんじゃないかな?」
「それはそうだけど…スキルの習得条件が簡単すぎるのよ。普通は修行や経験の積み重ねで習得するものなのに。それに、考えなしに従魔を増やすのは感心しないわね」
それはゴメンと思ってる。
「スキルは便利だけど、そればっかりに頼っていたら痛い目に遭うわよ。特に【自己再生】と【痛覚無効】なんて、治るから無茶していい、みたいに解釈するでしょう」
実際、それありきでオークジェネラルを倒したみたいなもんだから否定は出来ない。
けど、後悔はしてない。
無茶な戦いをしないと、私じゃきっとみんなを守れなかったから。
「そろそろリコリスにも、いろんなことを教える時期なのかもな」
「なら、リコリスちゃんも学園に通うかい?」
「学園?」
「ナインブレイド第一学園。七歳から通える国の公立機関さ。一般教養から礼節、武術、スキルなどいろいろなことを学べる。全寮制でアルティも再来年入学予定なんだ。平民も希望すれば貴族に混じって入学試験が受けられる。君がいてくれればアルティも安心して学園生活を送れると思うんだが、どうかな?」
アルティが横で目をキラキラさせてる。
学園ねぇ。
「おれとソフィアも学園に通ってたんだぞ。おれは勉強嫌いで中退したけどな」
偉そうに言うことか。
いろんな女の子が集まってくるのは、めちゃくちゃ興味ある。
美少女と美人女教師に囲まれた生活とか絶対楽しい。学園編はテンプレですからねぇ。
けど、
「お断りします」
「なんで?!」
アルティの圧よ。
「堅苦しいのはちょっと…。学園に通うお金ももったいないし。私はのびのび育ちたいので」
多分に本音なんだけど。
こちとら小中高ともう学校生活謳歌しきって女の子好き拗らせてるわけでして、ええ。
さすがにもういい。
それに、ずっと考えてたことがある。
「私、将来旅に出たいんです」
「旅?」
「どこまでも自由に。楽しいことを探して。そんな生活に憧れてるんです」
「リコリスちゃんは、将来何になりたいの?」
「幸せになりたいです!」
私が笑顔でハッキリ言うので、クローバー夫妻はつられて笑った。
お父さんとお母さんは苦笑いだけど、アルティは泣いてるなんでやねん。
「アルティ…リコちゃんも一緒に学園に通えると思ってた…」
「ゴメンね」
「ねえ、旅に出るって遠くに行っちゃうの?すぐ?もう会えない?」
「とりあえず成人…十八になるまでは行かないよ。今のままで一人旅なんて絶対無理だからね。ちゃんと鍛えて、お父さんたちが認めてくれるようになるまでは、のつもりでいる。たまには帰ってくるから、二度と会えないなんてことはないよ」
「本当?本当に本当?」
「うん。だってアルティは、一番の友だちだから」
ニカッと笑うとアルティは嬉しそうに抱きついて――――こぬ。
ありゃ?いつもなら嬉しいって抱きついてくるのに。
リコリスちゃんちょっと待っとったよ?
「…………」
顔真っ赤にしてモジモジしてる。
可愛いからいいけど、なんじゃねいったい。
「あらあら」
「アルティは昔からリコリスちゃんと仲が良かったものね」
そりゃ良いけども。
何で今その確認したの?
アルティは黙っちゃうし、大人たちの視線は生ぬるいし。
「じゃ、じゃあ…学園を卒業したら、私もリコちゃんと旅に出る!いっぱい勉強して、いっぱい魔法使えるようになるから!だから…」
私が断ると思ったのだろうか、アルティは顔を伏せた。
ヨシュアさんに目配せすると、肩を上下させて言っても止められないみたいなジェスチャーをしたので、一応了承と解釈した。
「待ってる」
私はアルティを抱きしめてそう言った。
アルティはまた泣いて、力いっぱい抱きつかれて首の骨がへし折られそうになったけど。
まったく…無茶した甲斐はあったかなと、そっと頭を撫でたのであった。
数日後、倒した魔物の素材の査定が終了した。
爪や牙、肉に毛皮、それに装備と魔石。
折れたナイフの代わりが欲しくて、牙を数本、街の鍛冶屋でナイフに仕上げてもらい、あとは肉と毛皮だけ引き取ることにした。
それ以外はほとんど使い道が無くて、欲しいもの以外は全て買い取ってもらい、総額金貨3枚と大銀貨4枚になった。
ちなみに時代時期にもよるけど日本円レートだと、
白金貨1枚=1000万円。
大金貨1枚=100万円。
金貨1枚=10万円。
大銀貨1枚=1万円。
銀貨1枚=1000円。
大銅貨1枚=100円。
銅貨1枚=10円。
鉄貨1枚=1円。
くらい。
金貨3枚だと、タルト村なら税を引いても一年は家族三人で余裕のある生活が出来る。
とはいえヨシュアさんたちの方が被害が大きいわけで、満額そのまま受け取るのはどうにも気が引け、4割程を損害に当ててもらうよう嘆願した。
当然ギルドからは、これだけのドロップアイテムを持ち込んだ人物についての言及があったらしいけど、ヨシュアさんが口添えして何とかしてくれたっぽい。
貴族様々である。
冒険者ギルドか…旅に出るならいつかは登録が必要になるのかな。
あとは魔物の対応。
街道にまでモンスターが出現するのは、べつに珍しいことではないとヨシュアさんの談。
今回の何が異常ってその数。
人を襲いたくてウズウズしてたのか、シンプルに食糧難で人里まで降りてこないといけなかったのか。
魔物の報告は変わらずあるが、あのときほどの数の目撃情報は上がっていない。
お父さんの言ってた迷宮ってのが気になったけど、とりあえずは安心ということにしておこう。
で、私はというと。
とりあえずお母さんからしばらくは従魔を増やすのを禁止された。
スキルは無闇やたらに増やせばいいというものじゃない、だってさ。
たぶんうちの家計的な部分も含まれてるんだと思う。
その考えには同意なので、ひとまずは今覚えてるスキルを伸ばしてみようと思う。
それに剣も使えるようになりたいし、魔法もいっぱい試してみたい。
将来旅に出るのに先立つものも必要だし、やることは山積みだ。
でもまあとりあえず、無事に生き残れたことを報告でもしてみようじゃないか。
誰にって?
そりゃあ……
「リコリスちゃーーーーん♡♡♡」
私のことが好きすぎるこの神様に。
「見てたよぉ♡魔物の群れに立ち向かっていくリコリスちゃんカッコよかったぁ♡」
「見てたんなら助けてよ。死にかけたんだが」
「ダメなのよぉ…これでも神だから、下界に直接干渉は出来ないの…。一応、たまに神託は出してるんだけどね♡」
「たまにて…教会で祈っただけで話せてる私っていったい。ていうか私を転生させてる時点で干渉はしてるんじゃ」
「だってリコリスちゃんは私の特別なんだもん♡」
特別で片付けられる私とは。
「あ!でもあんまり無茶しちゃダメよ。死にかけたときは私すっごい焦ったんだから」
「さーせん」
「素直でよろしい♡」
「今日はさ、お礼を言いに来たんだ。【百合の姫】をもらったときは、女の子特化のスキルかーとか、ふざけてるなぁ神様とか思ってたんだけど…いや正直今も思ってるけど、この力のおかげで大事なものを守れたから。だからありがとう。守らせてくれてありがとう」
言うと、神様は何も言わずにそっと頭を撫でた。
あったかい…
優しいぬくもりが伝わってくる。
やがて神様は時間だと手を離した。
「またいつでもお話に来てね♡」
「今なんかした?」
「ちょっと加護あげちゃった♡私の加護持ちはリコリスちゃんが初めてだよ♡」
「光栄…でいいのかな」
「フフフ♡それじゃあね♡」
「あ、待って待って」
「どうかした?」
「いや、今更なんだけど神様の名前訊いてなかったなって。あるんでしょ、名前?」
神様は嬉しそうに顔を綻ばせると、後ろ手を組んで踊るように告げた。
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気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。 この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。 俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。 オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。 腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。 俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。 こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。
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つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
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・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
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乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。
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初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。
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ベテランオッサン冒険者が、美少女パーティーにオヤジ狩りの標的にされてしまった。生死の境をさまよっていたら、Sランクモンスターに懐かれて……。
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