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鷹宮家―その、真相
~矛盾~
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「手がかりは―殆ど無かったわ」
「......」
ファイルを机に置き、結衣さんは参った、というような顔で告げた。まさかの宣言に、俺も言葉が出ない。
「でも一応、分かった事だけは報告しておく」
結衣さんはそういうと、分厚いファイルを手に取り、開く。
「アンタから依頼を受けていた、例の男の詳細について」
「......何か分かったのか?」
「いんや。手がかりがないだけに、男の情報も少ないのよ。流石の『鷹宮』でも背格好と顔だけで探せるかっての。......だから少しでも関係ありそうな人物を辿っていくと、これだけの量になる」
それもそうか。
手がかりがない故に、『鷹宮』関係者かも分からない。ただの通り魔、という可能性も否めないワケだ。
「国内外の請け負い人は洗ってるのか?」
「もちろん。でも、中々に強力な裏がいるみたいでね。出てこないわ」
そして。はい、2つ目ね。と結衣さんは次のファイルを手に取った。
「アンタがどうして裏がいるって考えたのかは分からないけど......こっちは人数が多い分、ある程度の概要は掴めてきた」
裏がいる。そう考えたのには根拠があって。
『お嬢様が本家筋の人間だから』だ。
「本部でも調査は進めているわ。その中でも数人、怪しいヤツらがいるから―それがあの暗殺者を囲ってるんでしょう」
「面倒なものだな。......なら、一人残らず挙げて構わないだろう?」
「そのつもりよ」
結衣さんはそう言うと、その2つのファイルを俺に渡してきた。
「ざっと目を通しておきなさい。その資料はあげるから」
だそうだ。
「......分かった。ありがとう」
「うん―あ、もう11時なの?じゃあ、私はもう帰るわね。バイバイ」
結衣さんは腕時計を見ると、ファイルと俺を置いて応接間を出ていってしまった。
......いっつも俺、置いてかれてるんだけど?
「うん、良いお出かけ日和ですねぇ」
「そうね」
さて、昼下がり。人の行き交う第3区。......と言っても、まだ路地だが。
そんな所を歩きながら、俺たちはオープンしたオムライス専門店に行くところだ。
「かなりの評判でしたね。事前に調べたところ」
「そうなの?そりゃ、期待出来そうだね」
「ですね」
角を曲がって、大通りに出るための近道になる公園を通っていく。その時だった。あの時みたいに、声がかかってきたのは。
「......少年。お前は何者だ」
「っ!?」
遊具の影。そこにひっそりと佇んでいた例の男。
あの時と全く同じシチュエーション。
逃げようにも......ダメだ。入り口からはかなり離れてしまったし、左右は川。落下防止のフェンスがある。
「俺か?普通の高校生だけど」
こうなれば何とか話を引き延ばして、コイツの情報を少しでも多く手に入れるしかない。
「普通の学生が、本家筋の人間と行動を共にしているハズがない。故に、貴様は本家筋と何らかの関わりがある」
......墓穴を掘ったな。
『本家筋』などという単語、真っ当な人間が口にするハズがない。コイツは、こっち側の人間だ。
「調べたところ、貴様は数十年前、鷹宮家に養子に取られた。表向きは一般人と名乗っているが、貴様が本家筋の一員だという事が記載されていた―」
「だから何だ。本家筋の人間です、って認めれば良いのか?」
「―個々の異能すらも記されている、『鷹宮の記憶に』
......なるほど。そう言う、ことか。
そこまで調べていたか。
「志津二、どう言う事?」
「一般人と名乗っていますが、『鷹宮の記憶』には俺が本家筋の一員って書かれているって事です」
ならば―その矛盾を設立させている俺は、何なのか。ヤツはそれを知りたいと。
......『鷹宮の記憶』と言うのは。
鷹宮家に関する人間―本家筋はもちろん、分家筋に至るまで。個人情報・異能・総てが記載されているデータだ。
そして、それを改変する事は極めて困難だ。
いくら本部の人間だろうが出来ないことは、本家筋が1番知っている。だからこそ、流出してはマズいモノである。
ヤツは遊具の影から身を出し、こちらに身体を晒してくる。......終わったな。それがお前の運の尽きだ。
―パパパンッ!!!
クイックドローしたガバメント(3点バースト。装備科の改造)を、相手の胴体・眉間にそれぞれ2発、1発で撃ち込む。
銃弾は軌道通りに進んでいった―のだが。
また、ヤツが虚空を指さす。それと同時に、「負けた」と悟った。何故なら―
「物体の、消失......!?」
―銃弾が、空中から消え去っていたから。
「こりゃ......ヤバいな」
~Prease to the next time!
「......」
ファイルを机に置き、結衣さんは参った、というような顔で告げた。まさかの宣言に、俺も言葉が出ない。
「でも一応、分かった事だけは報告しておく」
結衣さんはそういうと、分厚いファイルを手に取り、開く。
「アンタから依頼を受けていた、例の男の詳細について」
「......何か分かったのか?」
「いんや。手がかりがないだけに、男の情報も少ないのよ。流石の『鷹宮』でも背格好と顔だけで探せるかっての。......だから少しでも関係ありそうな人物を辿っていくと、これだけの量になる」
それもそうか。
手がかりがない故に、『鷹宮』関係者かも分からない。ただの通り魔、という可能性も否めないワケだ。
「国内外の請け負い人は洗ってるのか?」
「もちろん。でも、中々に強力な裏がいるみたいでね。出てこないわ」
そして。はい、2つ目ね。と結衣さんは次のファイルを手に取った。
「アンタがどうして裏がいるって考えたのかは分からないけど......こっちは人数が多い分、ある程度の概要は掴めてきた」
裏がいる。そう考えたのには根拠があって。
『お嬢様が本家筋の人間だから』だ。
「本部でも調査は進めているわ。その中でも数人、怪しいヤツらがいるから―それがあの暗殺者を囲ってるんでしょう」
「面倒なものだな。......なら、一人残らず挙げて構わないだろう?」
「そのつもりよ」
結衣さんはそう言うと、その2つのファイルを俺に渡してきた。
「ざっと目を通しておきなさい。その資料はあげるから」
だそうだ。
「......分かった。ありがとう」
「うん―あ、もう11時なの?じゃあ、私はもう帰るわね。バイバイ」
結衣さんは腕時計を見ると、ファイルと俺を置いて応接間を出ていってしまった。
......いっつも俺、置いてかれてるんだけど?
「うん、良いお出かけ日和ですねぇ」
「そうね」
さて、昼下がり。人の行き交う第3区。......と言っても、まだ路地だが。
そんな所を歩きながら、俺たちはオープンしたオムライス専門店に行くところだ。
「かなりの評判でしたね。事前に調べたところ」
「そうなの?そりゃ、期待出来そうだね」
「ですね」
角を曲がって、大通りに出るための近道になる公園を通っていく。その時だった。あの時みたいに、声がかかってきたのは。
「......少年。お前は何者だ」
「っ!?」
遊具の影。そこにひっそりと佇んでいた例の男。
あの時と全く同じシチュエーション。
逃げようにも......ダメだ。入り口からはかなり離れてしまったし、左右は川。落下防止のフェンスがある。
「俺か?普通の高校生だけど」
こうなれば何とか話を引き延ばして、コイツの情報を少しでも多く手に入れるしかない。
「普通の学生が、本家筋の人間と行動を共にしているハズがない。故に、貴様は本家筋と何らかの関わりがある」
......墓穴を掘ったな。
『本家筋』などという単語、真っ当な人間が口にするハズがない。コイツは、こっち側の人間だ。
「調べたところ、貴様は数十年前、鷹宮家に養子に取られた。表向きは一般人と名乗っているが、貴様が本家筋の一員だという事が記載されていた―」
「だから何だ。本家筋の人間です、って認めれば良いのか?」
「―個々の異能すらも記されている、『鷹宮の記憶に』
......なるほど。そう言う、ことか。
そこまで調べていたか。
「志津二、どう言う事?」
「一般人と名乗っていますが、『鷹宮の記憶』には俺が本家筋の一員って書かれているって事です」
ならば―その矛盾を設立させている俺は、何なのか。ヤツはそれを知りたいと。
......『鷹宮の記憶』と言うのは。
鷹宮家に関する人間―本家筋はもちろん、分家筋に至るまで。個人情報・異能・総てが記載されているデータだ。
そして、それを改変する事は極めて困難だ。
いくら本部の人間だろうが出来ないことは、本家筋が1番知っている。だからこそ、流出してはマズいモノである。
ヤツは遊具の影から身を出し、こちらに身体を晒してくる。......終わったな。それがお前の運の尽きだ。
―パパパンッ!!!
クイックドローしたガバメント(3点バースト。装備科の改造)を、相手の胴体・眉間にそれぞれ2発、1発で撃ち込む。
銃弾は軌道通りに進んでいった―のだが。
また、ヤツが虚空を指さす。それと同時に、「負けた」と悟った。何故なら―
「物体の、消失......!?」
―銃弾が、空中から消え去っていたから。
「こりゃ......ヤバいな」
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