財閥のご令嬢の専属執事なんだが、その家系が異能者軍団な件について

水無月彩椰

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異戦雪原

~常軌を逸した―パズル~

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「―長、どう言う事か説明を」

「文字通り、だ。そのままの意味だよ」

本部の『長』の部屋。その机に俺は腰かけ、結衣さんからの問いに返答する。向かいにあるソファーにはお嬢様とリサ。そして、側近の彩と結衣さんが座っている。

「そもそもよ。あの条件じゃ、アタシや彩乃ちゃんが手助け出来ないじゃないの!あの小娘の能力は不明......なのに、やろうっていうの?アンタはただの人間よ?」

「ただの人間とは酷いねぇ。だいたいお前らも人間だろうに」

「ご主人様は立派なお方ですよ。ですから、どうか気を鎮めて下さいませ」

「大丈夫だよ、リサ。落ち着いてるから」

結衣さんは頭に血が上ったか。テーブルを叩き、ただ俺に向かって怒鳴るだけ。

お嬢様はそれに危険を感じたのか。自身の異能でテーブルを創造して、自分ごと結衣さんから少し離した。そして、

「志津二。承諾したって事は......勝算はあるの?」 

と言ってきた。

「......ふむ」

勝算、ねぇ。てっきり、

『今夜のご飯何かしら?』

かと思ってたんだけど。意外だね。

「私ってそこまで食い意地ないからね!?」

「心読めるんですか。凄いですねー、お嬢様」

さすがは万能と呼ばれる本家筋。......っと、話がズレた。

「勝算なんて、手段を選ばなければ―無限にありますよ」

「......無限?ご主人様、それは―」

「さぁ、ルール確認を兼ねて条件を復唱。リサ、何だったっけ?」

小首を傾げるリサに、異雪から出された『条件』を復唱させる。これは作戦会議のためであり、ルール確認のためでもある。

「『時間と場所は異戦雪原側が指定する』『その他一切の縛りは設けない』『失神するか、降参するかで敗北』」

「うん。諸君、これに気付くことはあるかな?」

俺のこの言葉に、部屋にいる全員が頭上にはてなマークを浮かべた。なら、ヒント。

―手段を選ばなければ、無限にある。

つまり、だ。

「その他一切の縛りは設けない......。これね?」

「結衣さん、正解。改めて聞いてみれば―穴だらけだろう?このルールは」

縛りはない。故に、

「俺が戦車で乗り込もうが、空爆をしようが、あの時見たく武器林を創ろうが―全て、構わない」

「え、戦車なんか持ってたの?」

「昔、はですね。戦時中は自家用車並に戦車とか戦闘機とか保有してましたし。そう考えれば、今の鷹宮は平和だなー」

今は火器の規制が厳しくなってるからキツいけどね。 昔はバンバン生産してました。主に財閥面の力で。

「怖っ......!」

自分で食いついといて。何ですかその反応は。

「恐らく、異雪側は自分たちに有利な条件を突き付けて―事前に連絡してくる。『受け入れられないなら、この話はなかった事に』ってね」

さぁ、やっと本題に入ったぞ。ここからだ。

「でも......どうするの、志津二。また武器林無双?」

「それはダメね。相手の異能が分からない分、闇雲に行動に移すのは危険よ。それに、相手が用意したフィールドに行く事自体間違いよ」

「......そう。もしも相手が自身が用意したフィールドに来るとしたら、どうする?」

まぁ、まず。

「......罠、ですか」

そう。周囲に部下を配置するなり、それこそ武器林で奇襲を掛けるなり。

「なら、時間もそうなの?」

「古典的ですが、地の利。太陽を背に、とか。真夜中に、とか」

「影を作ってその中を移動したり、ステルス系の異能なんて十分有り得るわね」

「さすが、2人とも専門家ねぇ。本家筋の私より志津二の方が知ってるっていうのがムカつくけど」

それはあなたの姿勢しだいですよ。
知りたいのなら、詳しくみっちり教えてあげます。

「やっぱり最初に不利な条件を飲んだ時点で負けだったのでしょうか......」

うーん、と思案するリサとお二方。彩は我関せずといった感じで、ポーカーフェイス。

―地の利、時の利を美雪に与え、罠があるから近付けない。それを異能なしの俺がどうやって対抗しようか―。

「『』......か」

「......志津二?」

アンタとアタシの闘い―なるほど。本当に日本語ってのは難しいね。そのニュアンス1つで、全く違う意味に思わせられる。

こんな簡単なロジックに嵌るとは―。これを狙ってやったのなら、美雪は相当な策士だらうな。ウチに欲しいくらいだ。

幸か不幸か、対抗案は浮かんだ。
常識という固定概念......それを、ぶち壊すほどの。

「......ご主人様、楽しそうですが―案が浮かびましたか?」

「あぁ。伊勢美雪もあっと言うほどの、素晴らしいアイディアが浮かんだよ」

だがそれには、あと1つ。あと1つだけ、ピースが足りない。決行というパズルを完成させるだけの、ピースが。

そしてそれは、既に俺の手中にある。

「......彩。お前が必要だ」


~Prease to the next time!
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