財閥のご令嬢の専属執事なんだが、その家系が異能者軍団な件について

水無月彩椰

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異戦雪原

~『鷹宮』対『異戦雪原』~

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「......彩。お前が必要だ」

「分かり、ました」

俺の突然の発言にも、彩は微塵も動じない。むしろ、分かっていたかのようだ。ホントに不思議っ子だねぇ。

―さて、次。これで最後のピースだ。俺は視線をその隣に移し、視界に入れる。

「お嬢様。あなたにも協力してもらいます」

「え、私が?」

そのリアクションは彩と真逆だ。お嬢様は突然の出来事に弱い傾向があるね。いつもそう。キョドったりするでしょ?

―これで、埋まった。必要なモノは全て揃った。あとは、実行するだけ。 

おかしな事に、負けるビジョンが想定できない。万能2人......その、力で圧巻させてやる。

「さぁ、そろそろ話そうか。常軌を逸した―この、作戦パズルの詳細をね」

俺は手を組み、前を見据え、呟いた。脳内で、その詳細を反芻しながら。


                                *


「......今更だけど、ホントにやっちゃって良いの?」

「今更も今更ですねー」

カン、カンと金属が鳴る音が響き、俺たちの靴音もそれに合わせて響く。今回の人員は作戦に必要な者だけ。それ以外は待機させておいた。

......さて、お嬢様の問いにあったが、向かっている場所はとあるビルの屋上。何でそんな所に向かっているかは、今回の作戦に影響する。

「さ、着いた。彩、を頼む」

「......はい。お任せ、を」

彩は俺たちから1歩前に出ると、虚空に両手を翳した。

―直後。

「......?」

「お嬢様、気付きましたか?」

どうやら、気付いたらしい。『開かずの小部屋ロックド・ルーム』を。その存在を、肌で感じただろう。

「『開かずの小部屋』は如何なる物質も遮断する。紫外線も、大気も。そして、何より外部からその存在を認識できない。故に、世界から取り残された、切り離された空間。だからここは―」

「―異世界と同等の存在に......値、する」

「故に、ここで作戦会議をしようがアイツらにはバレないってワケ」

空気を通さず、音を通さず。内部には静寂だけが残り、妙な違和感を感じるこの空間。まさに、地球内部の異世界だ。

「......へー。異世界、ねぇ」

お嬢様はテクテクと歩くと、屋上の淵を上り―

「おぉ、立てる!見て、立てる!」

―空中に、浮かんだ。

『開かずの小部屋』は所謂、見えない箱。その内部に俺たちは居て、だからこそ、空中でも立てる。

「お嬢様、ヒヤヒヤするので降りてください。傍目には空中に浮かんでる変人ですよ」

「変人!?」

「そう、変人です。だから早く降りてください」

「むぅ......」

お嬢様に降りるように促し、視線を彩に向ける。彩もそれに気付いたのか、こくり、と頷いた。

「範囲は......この屋上全域。+50cmに指定」

「ありがとう。彩はもう休んでて良いよ。今度は―お嬢様だ」

作戦実行に必要な1つ、『開かずの小部屋』。それとは別にもう1つ、引き金を引くためのパーツが必要となった。そしてそれは、お嬢様によって創られる。

「ったく......設計図を作るのに大分時間がかかったんだからね?」

ボヤきながら創られたそれは―強い日差しを浴びて鈍色に光り、威圧感を感じさせる代物。そして、俺だから扱えたであろう物。銃口はとある方向に向き、銃身を支えるためのパイボッドが立てられ、鎮座されたのは―バレットM82A1。12.7×99mm弾を射出する、対物ライフルだ。あ、もちろんゴム弾だよ?

―これが作戦のピース。最後の要だ。

「......よし。彩、俺が指定した3秒後に『開かずの小部屋』を解除して、その直後。再度包み直せ」

「分かり、ました」

俺はそう言うと狙撃科スナイプで教わった対物ライフルを扱うのに最適な姿勢になり、高倍率スコープを覗く。それに映るは、少し開けた公園。その中央に立っている、伊勢美雪だ。

「これから狙撃されるのにも気付かないで......呑気な女だ」

バレットM82と同時に創られた湿度計・風速計などを確認し、それがどれほどの影響を及ぼすのか計算し、さらに偏差撃ちのためにレティクルを美雪から少しズラす。これも狙撃科で培った技術。本来なら観測手サジットがいるのだが、それは俺には不要。1人で2役をこなせる。

「彩、解除」

そしてその、3秒後。大気の流れが一瞬だけ戻り、風が吹き荒れる。そんな中、俺は呟きつつ引き金に指を掛け―

「誰が直接決闘なんて時代錯誤な事するか。......俺がするのは、自己の絶対半径キリングレンジからの......長距離狙撃、だ」

―引き金を引いた。


                                *


「......遅い」

アタシは鷹宮に指定した場所に、周囲に部下を配置させておいて待っていた。さすがに罠を疑いはするだろうが、いくら待てど鷹宮は来ない。まさか本当に怖気付いたんじゃあるまいか?と思うほどに。

地の利も、アタシの異能に大きく影響する天候すらも、味方している。負ける気はしない。

確認も兼ねて、再度辺りを見回す。
ここはとある地区のグラウンド。周囲には木々で囲まれているが、背丈が高くないため、閉塞感はさほど感じられない。むしろ真上からの日差しが鬱陶しいくらいだ。

さっきから入口付近に目を凝らしているのに、罠を疑うような鷹宮の偵察員すら見当たらない。―卑怯?何とでも言いなさい。これが、鷹宮が承諾した内容なのだから。文句は言えまい。

......約束の時刻まであと数分。本当に遅れてきたら、それを取引材料にでもして―と考えていた、次の瞬間。

「隊長っ!!!」

指示を出すまで動かなかったはずの部下が、いきなり飛び出してアタシの事を地面に押し倒した。突然の出来事に身体がついていかず、見える景色はスローモーションへと変わる。

そんな中。反転した視界に映るは、今まで背後にあった数キロも離れたビル。その、屋上。そこに、誰かが居たような気がしたのだ。目視する事は適わない距離。それなのに、アタシには誰かが居て―笑みをたたえているように見えた。

―まるで、死神の如く。

それを理解した瞬間、その鎌がアタシの眼前を通過した。そして、時間は元の速度に戻り......視界は、暗転した。


~Prease to the next time!
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