財閥のご令嬢の専属執事なんだが、その家系が異能者軍団な件について

水無月彩椰

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異戦雪原

~異戦雪原、会談―後日談~

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「―異戦雪原の、姫。会談の前に......鷹宮の長より、言伝を預かっております」

「へぇ、何て?」

「只今より代読させて頂きます」


『伊勢美雪、異戦雪原の―姫。単刀直入に言わせてもらう。今回の一連の騒動について、我々鷹宮は何も言わない。賠償金も、最高責任者による謝罪も、処分も。そんな事をするつもりは無い。

 だが、その代わりに1つ。提案といこう。我々鷹宮に協力する気はないかな?あぁ、勿論強制はしない。そこは己の判断に任せよう。だが、断った場合......上には我々が居るのをお忘れなく。

いくらその存在が廃れしモノだとしても、わざわざ名を改め、最古の起を否定し続けるのなら。当然、無視は出来まい?その存在を無視したとなれば、己の拠り所たるそれさえも無意味となるのだからね。

さて、2度目の問いかけだ。......どうする?
 言っておくが、我々は併合しようなどという考えは一切持ち合わせていない。ただ、こちらに手を貸してほしいだけだ』


「......以上となります。如何致しましょう?」


                                        *


「あー......もうムリ」

「まさか志津二がその言葉を言う事になるとはねー」

万年筆を胸ポケットに仕舞い、机に突っ伏して呟けば―正面から聞こえてくるは呑気なお嬢様の声。

隠蔽班と協力して現場の後片付けをし、異戦雪原との会談に出かける結衣さんを見送り、部屋に帰ってからも書類仕事に追われる始末。おかげで夜の6時を回ってしまった。 

「ホンットにもうムリ。動きたくないです。学校も行きたくない」

「じゃあアタシもそろそろ校長辞退しようかしら。秘書と校長の2足のわらじなんてやってられないわ」

「それは止めて!?」

「え、辞めて?ありがとうございます、長」

「そんな事一言も言ってねぇから!」

......はぁ。
 何でツッコむ元気だけはあるのだろうか。我ながら不思議だ。

そうこうしていると、ガチャっ......という扉の開閉音が長の部屋に響く。そして現れるは、お盆の上に湯呑みと急須を載せた和風ロリ。

「お疲れ、だから。......抹茶」

「ありがとね、彩。今ほど側近の素晴らしさを思い改めた事はなかったよ」

「......どう、も?」
 
背伸びをしつつ湯呑みを渡してくる彩に微笑でお礼を言いつつ、椅子に深く腰掛けて湯呑みの縁を口へと持っていく。
 いつものように芳醇な香りがし、程よい苦味が口の中に広がる―ハズ、だった。

「......ぶっ!?」

「「「うわっ!?」」」

やべぇ、冗談抜きで吹いた。
 即座に彩が『開かずの小部屋』で防御してくれたから本人に火傷もなく、床も濡れることがなかったが......。

「彩、ゲホッ......!ゲホッ、何を......入れ、た......!?」

「センブリ、茶......ですが」

「「「............」」」

咳き込みつつ問う俺に彩は1つの答えを出したのだが、今度は彩を除いた全ての人が凍り付いた。
 え、何。センブリ茶?そんなモノ食堂にあったっけ?

「長が疲労困憊で、可哀想......と言ったら。コック長が笑顔で、くれた......の」

「あの野郎......完全に嫌がらせだろうが!」

「ご、ご主人様。落ち着いて下さい!」

「うん、リサ。大丈夫。落ち着いてるからね」

机を叩いて立ち上がる俺を、リサが咄嗟に手で制す。......何かこの子いつも同じ事言ってね?

まぁいい。彩のその気遣いは嬉しい。凄く嬉しい。
 だが問題は、そこでセンブリ茶を渡すコック長だ。普通センブリ茶渡す?渡さないよね? ちょっと解雇も考えるかなー。

「あー、皆少し待っててくれる?厨房行ってくるから」

「「「コック長逃げて!超逃げてー!!」」」

怒気を微塵も隠さず部屋を出ていく様は、まるで鬼。そんな鬼を抑えるべく、我らが側近は必死に厨房へと駆けるのだった。


~Prease to the next time!
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