田舎女子、初の合コンで他人の恋愛に巻き込まれる

ハル

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4話

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 席替えのクジ引きは想定外だったようで準備がなく、美香さんがルーズリーフを一枚出して、男子は男子用、女子は女子用のあみだくじを作る。そして、選ぶ際は私は”余り物には福がある”精神なので最後に選ぶ。
 そうして、みんながあみだくじを次々にしていくと、私の席はまたしても誠也君の前になる。

 ??

 他の全員は席が変わっている。私も位置はさっきより1つずれた美香さんが座っていた席に移動になったのだが、相手が同じ人だ。誠也君は戸惑う私ににっこりと笑いかけ、「また一緒だね。よろしく。」なんて言っている。その言葉がなんともわざと臭く思えてしまうのは疑いすぎだろうか。
 そのうえ、美香さんは2つずれて端の席になってしまい、誠也君からますます離れることになりどんどん不機嫌な顔を隠せなくなっている。しかし、彼女はそういう状況に陥るが初めてではないのか、私がそれを見るのは決まって全員の視線が別に向いているときだけだ。それ以外は、チラチラと横目に彼女の方を見て確認したのだが、そういう素振りは一切ない。

 怖い。

 それを見た瞬間、悪寒が走る。
 それほどに他人に対して執着しているようだ。
 私は本格的に身の危険を感じたのだが、まだ、デザートがやってこないので帰れない。
 簡単に言えば、身の危険より食欲をとったのだ。
 生物としては最悪の選択のような気がしないでもないが、私はもう危険を紛らわすためにデザートのことしか考えていない。

「ラスト1時間だから、何かゲームでもしない?」

 進行役の女子が提案する。それに周囲は同調し”王様ゲーム”をするようになる。

 王様ゲーム??

 私には全くわからない。田舎で育ち家が道場をしていたこともあり、物心ついたころから剣道しかしてこなかったためにそういった友人とする遊びなんてしたことがない。しかし、この場で私は発言を許されていない。唯一、許されているのは誠也君が尋ねたときだけだ。

 クジは用意されていなかったけど、王様ゲームに使う棒くじは用意されているらしい。

 変なの。

 疑問に思いつつも最後の1本を引く。

 やっぱり私は最後なんだ。まあ、いいけど。

 私は気にせずに引いた棒を見ると数字が書かれている。8人いるから数字の3があるのは不思議ではない。一体何が王様なのかがピンとこないが全員が確認するのを見守る。

「確認した?」

 進行役の女子が言うと、私も合わせて全員が首を縦に振る。なぜか全員緊張した面持ちだ。
 そんなに命かけるまではいかないが、それに近いところまで覚悟しないといけないのかと私は戸惑いながら進行役の言葉の続きを聞く。

「王様だーれだ?」
「はい!!」

 彼女の言葉に勢いよく手を挙げたのは美香さんだ。すっごくいい笑顔で真剣だ。ものすごく。

「美香、やっぱりくじ運いいね。」
「えへへ。今回は偶々だよ。」

 拍手で進行役が褒めると美香さんは嬉しそうに照れた笑いを見せる。

「じゃあ、美香の命令をお願いします。」
「じゃあ、3番と5番が握手をする。」

 急に番号を呼ばれて私は体をビクつかせる。すると、美香さんはこちらを見てニタリと笑う。まるで、狙ったかのように見えるが、偶然だと思い込む。彼女も先ほど王様を引いたのは“偶々”だと言うのだから。これで、やっと”王様ゲーム”の意味と方法がわかり、私はくだらないと思うがノルしかない。

「3番です。」
「5番です。」

 しかし、予想外にも5番を引いたのは誠也君だ。ここで、私が当たるなら確実に誠也君以外の男子か、美香さん以外の女子だと考えていたからだ。そして、これは美香さんにとってもそうだったようで彼女は驚いた顔をする。「本当なの!?」と言って誠也君が持っている番号を確認していたぐらいだ。
 そして、確認が取れたところで、誠也君が手を出してくる。私はそれをとって固く握手を交わす。その際、彼の指がわずかに私の手の甲をなでる感触があり、ぞわぞわと背筋に何かが走って反射的に離す。それをまだ出している手をゆっくりしまう彼はニヤリと笑う。本当にガキ大将のようだ。
 握手の後、間があいたのだが、それを払うように進行役の女子がまたもや明るい声を出してそれを吹き飛ばす。

 アナウンサー向いているんじゃないの?

 そんな風に思うぐらい、彼女の声は室内で少し狭いからかもしれないがよく通る。
 
「うん、これで王様の願いは叶えられたね。じゃあ、2回戦するよ。」

 彼女の合図で棒くじをもとの器に戻して、また引く。次は私が最初のようだ。先ほどの順番は私をわざと最後にしたわけではないようで、今度は私から順にさっきの順番の逆に引いていく。今度も数字なので後はただ誰が王様になってもいいから、自分への被害がないことを祈るのみだ。先ほどは簡単なお願いだったからいい。この時たった8人にくじを配っているだけなのに、その時間がいように長く感じる。

「さあ、行くよ。王様だれだ?」
「はーい、俺だ!」

 今度手を挙げたのは竜也君だ。

「じゃあ2番と7番が寸劇をする。」

 ・・・・・・・・・・・・・・・はい??

 私の頭の中は真っ白。だが、とりあえず呼ばれることがなければいいのだからと私は気を取り直して再度番号を見ると、まさかの7番だ。

 全然ラッキーじゃない!!ラッキーセブンなんて大嘘だっ

 心の中で叫ぶ。寸劇なんてしたこともないし、見たことがないからやりようがわからない。だが、彼女はこうなってはやらない選択肢はない。
 彼女は正直に手をあげると、同タイミングで誠也君が手をあげる。同じ組み合わせに誰もが驚く。

 いや、そんな顔をされても私も困っているんだから。

 私は困惑しつつも寸劇をするのは決定事項なので彼に手招かれるままに空いたスペースで少しだけ打ち合わせをするために移動する。

 
「暁ちゃんは直立しているだけでいいから。」
「・・うん、わかった。」

 彼は冷静だ。いや、冷静すぎて逆に怪しく見える。

「あの、もしかして何か細工でもしているんですか?」
「そんなのする隙も無かっただろう?」
「確かに。それはそうなんですけど。」

 どうにも納得できないが、あのクジに細工ができるとしたら作った本人たちだろう。それに番号を指定するのは彼らであって誠也君ではない。だが、こんなに2回連続で当たることがあるのかと言われれば、それは確率的に低い。その方法の種がわからないと私は何度も彼と組まされる危険がある。

「じゃあ、やるよ。」

 考えている間に誠也君が私の肩を押して寸劇を始める。彼に言われた通りに直立していることにする。眉一つ動かさずに岩になった気分だ。彼は1人芝居を始めており、30秒が私の限界でだんだん気が遠くなったところで急に抱きしめられ体がよろめきそうになるのを彼1人が支える。で、そこで終わるのだが、何がどんないきさつなのか、私にはわからない。どうやら、私はアンドロイドだったようで、彼は捨てられた私を拾う役割だったようだ。
 最初から頭は寝ていたのかと思うほどに全く話の内容がわからない。

 とりあえず、学生にありがちのキスとかポッキーゲームとかがお題ではなかったので私は安堵する。
 そして、幸運なことになんと席に戻ったときに最後のデザートが運ばれてきて、私は一番にそれに手を伸ばす。待ちきれない瞬間に私は頬を緩ませる。その顔を誠也君に見られていて、美香さんには睨まれていることなど知らなかった。私はただただその味わったことがないチョコレートムースを味わう。
 これだけで今日会った今までの1時間半の苦労が報われた気がした。

「じゃあ、私はこれで。」

 と言ってさっさとこんな場所から去ろうとしたのだが、ここで進行役の男女が引き留める。それも必死だ。

「もう少しだけ残って。あの20分で終わるから。あと1回だけ王様ゲームしたら終わりだから。」
「そうそう。これまで2回やって当たっていて悔しくない?あと1回したら王様になれるかもしれない。」

 なんて引き留めに応じるわけがないのだろうが、視界の端に映るのはニヤリと笑っている誠也君だ。彼には一泡吹かせたいと思うので、王様ゲームだけ応じることにする。
 棒くじを配り終わり、進行役の女子が

「王様だーれだ!!」

 と言う。いや、もう、声を張り上げている。何か怨念でも含まれていそうで耳を閉じてしまう。

「俺だよ。」

 誠也君が手を挙げた瞬間、進行役の2人と私は絶望、美香さんは進行役に視線を向けており、他5人は残念がっている。美香さんはすでに負のオーラを隠そうともしない。私から少しだけ距離があるのであまり感じないが、彼女の隣の女子と前の男子は体を常時震わせている。最初の盛り上がりムードは完全に消えている。

「じゃあ」

 彼はいったんそこで止める。考えるように顎に手を当てているが、目は完全に笑っているのでもう演技としか思えない。

 俳優にはなれないな。

 私はそれを見てのんきに思ってしまった。やっぱり、演技力でいえば、確実に美香さんの方が上だ。
 いやいや、そんなことを考えている場合ではないだろうと自分を奮起させて、私は彼を見てその間で何回もつばを飲み込む。

「1番はこれが終わったら俺と散歩して遊んでディナーだね。」

 ・・・・・・・・・・ええ??

 急にこれからの予定を決められたらしく、女子たちは盛り上がりせっせと棒を見て、男子たちは呆れながらもそれを見る。

「なんで私が2番なの!?」

 と、美香さんが悲鳴を上げる。それに耳がキーンとなる。

「誠也が選ぶのは私でしょ!?いつも、そうしてくれていたじゃない。帰りは必ず家まで送ってくれていた。」

 彼女は彼の元まで来て詰め寄る。

「それはお前が強請ってきたからだろう。無理に車の中に入ってくれば追い出したりしない。それにこれは王様ゲームで誰に何番が配られるかなんて俺が知ったことじゃないからな。お前のわがままに付き合うのは疲れるんだ。今日は自分で帰れ。もう、大学生なんだから。」

 と言って彼は疲れたようにため息を吐く。それに美香さんは急に押しとどめたものが決壊したようにわんわんと泣き出す。美人でもここまで泣かれると全員が引くし、そのうえ、言っていることがわがままな幼稚園児と同レベルなので援護のしようもない。

「さて、1番誰?」

 誠也君は泣いている美香さんをそのままに周囲に問いかける。
 誰も手を挙げないので、私はまさか、と思って棒くじを見て絶望する。
 それをスッと取り上げられた先には誠也君がにっこりとほほ笑んでいる。

「やっぱり、僕は運が良いよ。」

 そう言った彼は完全に悪魔にしか見えない。

「じゃあ、行こうか?」

 彼に手を取られ立たされてドアの前に行かされる。すぐには出ていかずに何か思い出したような声をあげた彼は振り返って会場全員に向かう。

「そのわがまま女のことは頼んだよ。あと、今後俺にはこういったことは仕掛けることは遠慮することを勧めておくよ。俺、君たちには負ける気はしないから。」

 彼はアデューというようにさっそうと私を連れて部屋を出る。

 こうして初の合コンは終わったのだが、彼の言葉でこれがただの合コンではなく、本当に仕組まれた舞台であることがわかる。彼らはそれぞれの役割を担って進めていただけなのだ。わがままな張りぼて姫を王子とくっつけるために。
 その王子は魔王と気づくのに時間がかかった、成り立たずに崩壊した劇になった要因があるとすれば、ただ、それだけの事。
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