異世界ディレクターの俺、女神のミスで生まれた全ステ999の転生者にシナリオを滅茶苦茶にされている件

こうタロス

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1話「最強転生者誕生」

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パチパチパチ……

会議室いっぱいに、割れんばかりの拍手と歓声が響く。

「いやぁ~、神代かみしろくん!今期も視聴率トップだったよぉ!」

上司の言葉に俺はニヤリと口角を上げた。

「当たり前ですよ!僕が作ったんですから」

壁一面のモニターには、昨日の配信映像――魔王討伐のクライマックスが映し出されている。

俺の名前は、神代 颯真かみしろ そうま
ここ数年、俺が手がけた異世界放送は全部が高視聴率。会社内では“黄金のディレクター”と呼ばれてる。

「いやぁ~、本当にすごいよぉ!次回作も頼むね!黄金ディレクター!」

「はい!任せてください!次回も視聴率トップをお約束しますよ!」

社内のみんなに褒めちぎられ、ウキウキで退勤した俺は、いつも通り自宅に帰る。
玄関を開けると、自宅の中から天使のお迎えが響いた。

そうくん!お帰りなさい!」

その天使の正体は俺の妻、神代 結衣かみしろ ゆい

「ただいま!結衣ゆい!」

俺は、自宅に入ると荷物を置き早々に結衣に報告した。

「今日は、嬉しいお知らせがある。俺の放送が…また視聴率トップだぜ!もう俺ってば、天才っ!」

結衣は顔の前で拍手をして讃える。

「颯くんすごーい!!さすが"黄金のディレクター"!」

「まぁねぇ~!」

「私からも嬉しいお知らせが…」

そういうと、一枚の写真を胸の前に掲げる。

「まさか…」

「そう、私たち赤ちゃん出来たの…」

「まじ……?まじで!!俺たちに赤ちゃん!!」

「そうだよ!私たち親になるの…!」

俺は、嬉しさのあまり目から涙が溢れた。
ついに、父に…
今日の俺、なんて幸せなんだ…

この家庭を守るため、何が何でも次回も高視聴率を叩き出すと決意した。

翌日、俺はいつも以上に気を張り出勤した。

「神代先輩!なんか今日機嫌いいですね!何かいいことありました?」

「おい、後輩よ。聞いて驚くな…俺、父になる。」

後輩は一瞬ポカンとしたが意味がわかったのか笑顔が溢れ、手を叩く。

「おめでとうございます!!どうりで機嫌がいいわけだ。」

「今日の俺、なんでもできる気がする。」

「今日は、新しい異世界放送第1話!いつも通り高視聴率叩き出しちゃってください!」

「おう!まかせろ!」

俺の仕事は"異世界放送局"ディレクター。
別の世界からの転生者に、ありとあらゆるイベントを発生させ、笑いあり、涙ありの"リアリティー異世界転生ショー"通称"リアル転生"を放送している。

「さてと、今度はもっと派手に行こうか…!」

そう言い、俺はいつも通り端末を操作した。

「今回の転生者は…こいつだな…」

———

夜の路地に、男の怒号と子供の泣き声が響いた。

俺は考えるより先に走り出していた。
ナイフを振りかざした男の前に飛び出し、子供を突き飛ばす。
胸に熱い衝撃、徐々に胸の熱さは身体に広がり、ついには身体自体の感覚が無くなる。
息が詰まり、足元が崩れ落ちていく。

…俺、死んだのか。

俺の名前は如月 隼人きさらぎ はやと
22歳、大学4年生。専攻は法学だ。
口数は少ないが、正義感には自信がある。
学生生活は真面目そのもので、将来は公務員を目指している。
アルバイトは夜間のコンビニスタッフ。
今日も帰り道、助けを求める子供の声に反応し、躊躇なく飛び出した。
その結果が、これだ。

後悔はしていない。
あの子が無事なら、それでいい。

「……もしもーし! おーい、聞こえますかー!」

……ん?通行人?
いや、なんかやたら声が響いてるな。
聴覚って最後まで残るって言うし…。

「え、これ起きないパターン? どうしよ、マニュアルどこだっけ…」

ぼんやりと目を開けると、目の前に白銀の翼を持つ女性。
衣はシワひとつなく、光そのものをまとっているようだった。

「あのー、すみません。ここって…どこです?」

「うわっ!!起きた!? え、ちょ、えええ!?」

「いや、落ち着いて。場所を聞いてるだけですから」

「おっ…おほん。ようこそ! 私の名前はセレスティア。亡くなった魂を新しい世界へお送りするのが仕事です。」

「はい」

「あなたは……えっと……」

 彼女は自分の手のひらに浮かぶ文字をじっと読む。

「――あなた、たった今死にました!」

「あぁ、やっぱり。じゃあここはあの世であなたが俺を異世界転生させてくれるのか?」

「そ、そうです! まさに!」

「なるほど…じゃあ“スキル”とかもらえるんですよね?」

「はい! こちらで設定いたします!」

「おお、それなら話が早い。もう転生お願いします」

「は、はい!ちょ、ちょっと待ってください!えっと…マニュアルと違う…ここからどうするんだっけ…?」

「能力値とかも最初から割り振られているのか?」

「は、はい!はい!スキルも能力値も私で調整しますからっ!ちょ、ちょっと待っててください!!」

「お、おう」

「えーっと、ここをこうして、こうやって、このレバーを引いて…」

「属性とかあるのか?水とか火とか土とか…」

「あ、あります!…あぁー!!ちょっと分からなくなってきた!!もういいやっ!」

天使は俺が喋ったからなのか、あきらかにテンパっていた。

「えいっ!異世界転生いってらっしゃーい!!」

セレスティアがボタンを押すと俺の身体は光に包まれる。
身体の手足の感覚が無くなり、次第に別の身体のような感覚を感じる。

これが、異世界転生てやつか…
俺は、目の前が真っ暗になり、意識を失った。

———

「セレス!大丈夫だった?初めてのお仕事」

「は、はい!先輩!!転生者にめちゃくちゃ急かされてちょっとテンパっちゃいました…」

「まぁ、始めはそんな感じよね…能力値設定とスキル付与は上手くいった?」

「それが…」

「ん…?え…えぇ!!」

「能力値を全て999にしてしまいました…これってヤバいですか…」

「ヤバいってどころじゃないわよ!これじゃ最強よ!前回の転生者が魔王を倒した時で平均300とかよ…」

「す、すみません…!!」

「セレス…あなた、このボタン押したわね…」

「は、はい!"負けイベ"ボタンですね!押しました!」

「押しました!…じゃないわよ!これ、負けイベントボタンよ。普通は敵NPCに使うのに、転生者に押しちゃうなんて」」

「そ、そうだったんですか!?てことは…今の転生者は…」

「そう、どうしても勝ってしまう…勝ちイベ主人公になってしまった…
と、とりあえず神代ディレクターに連絡するわ」

「す、すみません…
私、かなりヤバいことしちゃったかも……」
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