異世界ディレクターの俺、女神のミスで生まれた全ステ999の転生者にシナリオを滅茶苦茶にされている件

こうタロス

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2話「予想外な1日」

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———神代颯真パート

「さてと、今度はもっと派手に行こうか…!」

そう言い、俺はいつも通り端末を操作した。

「今回の転生者は…こいつだな…」

転生者名簿という名簿に目を通す。

如月 隼人きさらぎ はやと 、22歳。死因はナイフによる刺殺。原因は、知らない子供を庇ったため…
正義感強めかぁ…いい主役になりそうじゃん!!」

転生者の情報を頭に入れ、物語を想像する。
主人公に与える試練、イベントが次々と頭から湧いてくる。

俺の頭の中であらすじは決まった。
俺の予想通りに動いてくれよ…隼人くん…

——おっ、どうやら転生者が来たみたいだな。

「おーい!カメラスタートしてくれ!」

撮影を開始した。

物語は最初が大切だからな…上手くやってくれよセレスティアさん…

画面の中で天使役のセレスティアと転生者の隼人の会話が始まった。

おい!セレスティアさんめっちゃテンパってるじゃん!
今日が天使役初だっけか…?

———え、もう転生?尺足らなくね?
本当に転生させちゃったよ…

プルルルル…プルルルル…

電話が鳴る。

ミカエラさん…?どうしたんだろう。

「もしもし、神代です。どうされました?」

「あ、もしもし。ミカエラです。神代さん今いいですか…?」

「は、はい…大丈夫ですけど…」

「あ、ありがとうございます!ちょっと申し上げにくいのですが…」

「は、はぁ…どうされました?」

「先ほどの転生者ですが…能力値配分間違えて強くしすぎたみたいで…」

「んー、まぁ多少能力値が高くてもこちら側でなんとかなりますけど…」

「"負けイベ"ボタンを押しちゃって……
能力値がオール999になってます」

「まぁ、多少の……ん?"負けイベ"ボタン…オール999…!?え、えぇ!!」

「すみません!セレスティアはこちらでキツく叱っておきますので大丈夫です!あとは神代さん任せました!まぁ、"黄金のディレクター"なので余裕ですよね!そうですよね!また何かありましたらご連絡ください!それでは!——」

「え、ちょちょっ!」

ブチッ、プー…プー…プー

オール999…え、最強じゃね…!?
え、なに?やばくない?
ま、まぁまぁまぁ…
俺は毎度毎度トップ視聴率を叩き出している"黄金のディレクター"だぞ!
こんなのはハンデだ!一種の縛りプレイてやつよ…!

「先輩、どうかしましたか?」

「い、いやっ!なんでもない!今回も絶対高視聴率維持してトップ視聴率取るぞ!」

「は、はい!!今回の先輩いつにも増してやる気ありますね!生まれてくる赤ちゃんのためにも頑張りましょう!!」

「あ、ああ!任せろ!」

そうだ…俺には、家庭を守る使命がある。
何がなんでも今回も高視聴率を叩き出してやる!

———如月隼人パート

「おぎゃ…おぎゃ…おぎゃ…」

「あなた、ハヤトが泣いてるわよ」

「おっと、すぐ抱っこしてやる。ほらほら、泣くな。お前は元気だなぁ」

「きっと立派な男の子になるわね。あの子の目…不思議と、強い意志を感じるの」

「はは、まだ生まれたばかりなのに大げさだな。でも…そうだな、俺もそう思う」

「この子には…きっと大きな使命があるんじゃないかしら」

「使命?それよりまずは、元気に育つことだ」

「ふふ…そうね。でも、ハヤト。あなたは必ず幸せになってね」

俺は如月 隼人《きさらぎ はやと》22歳…だった。知らない子供を庇いナイフで刺され気づけば転生していた。
どうやら俺はこの世界に生まれてすぐの0歳らしい。
転生って記憶は持ったままなんだな…
さてと、お腹が減ったな…まずは腹ごしらえっと…

「あー、あー、おー、お腹減った」

「……!?」

俺の声を聞いた両親は目を見開いている。
まるで、怪奇現象に出会したかのように。

え、喋れた…
な、なんで?

———神代颯真パート

「え、今喋らなかったか…?」

「…確かに、今喋ったような…」

まるで怪奇現象を目の当たりにしたように画面の中の赤子をまじまじと見る。

「ま、まさか、能力値オール999てことは筋力もカンスト…喉の筋力がもう出来上がっているんだ…」

「な、なるほど…え…?オール999…?」

「あ、あぁ、お前に言ってなかったな…この転生者能力値オール999なんだよ…絶対に倒されない…」

「え、それかなりやばくないですか…?この機械で能力値変更できたりしないんですか?」

「いや、無理だ…能力値配分は全て天使達に委託している。この機械を使ってできるのはNPCの配置と能力値配分、カメラ移動とイベント発生くらいだ…」

「じゃあもう彼は、絶対に死なないということですか…?」

「実質そうなるな…さて、どうしたものか…」

俺は頭を抱えながら隼人が写っている画面を観察する。
赤子の隼人を抱き抱え頬にキスをする母、それを優しい目で見守る父。
順風満帆な家族…

これの何が面白い?
どうしても死ねない主人公。
そうだ…両親を襲わせよう
両親はなんの変哲もないただのNPCだ。
能力値はモブにすぎない。
順風満帆な家族が一夜にして悲惨な死を迎える。そこから子供の復讐劇…
なんて天才なんだ俺は!
よし!じゃあまず村の外にゴブリンを配置してとっ…

———如月隼人パート

俺は0歳にも関わらず首は座り、まさかの二足歩行までできる。
そんな、0歳らしからぬ行動を両親は椅子に腰掛けただ眺めている。

異世界転生ってこんなのだっけ?

異様な空気を0歳ながらに察し、会話を作ろうと口を開く。

「……あの僕の名前は…?」
普通の赤ん坊では絶対に出ない言葉に、両親はぽかんと口を開けた。

「あ、あなた……」

「……あぁ、この子は……」

目を合わせた二人の口元がゆっくりと吊り上がり、声をそろえる。

「勇者だ!」

勇者? いや、俺、まだ0歳なんですけど。
けど父の説明によれば――
300年前、勇者は生まれながらに剣を振るい、常人離れした筋力と知力を持っていたという。

「最近、魔王が復活したらしいが…まさかこの村から勇者が生まれるとはな…」

なるほど、魔王復活と勇者誕生。ベタだが王道展開だな――

ドタドタバタバタ

「なんだ外が騒がしいな…何かあったのか?」

父はそう言うと窓から外を眺める。
するとそこには無数の火の灯りがウヨウヨと浮いている。
その火の光は確実にこちらに向かってきていた。

父が戸口を開けた瞬間、ゴブリンたちが押し寄せてくる。
一体が松明を振り上げ、父に飛びかかる。

おいおい…父ちゃん、あの動きじゃ避けられねぇぞ…

「く、くそぉー!」

父がゴブリンに押し倒される。

「あ、あなた!!」

母は僕を抱き抱える。

ゴブリンが父にトドメを刺そうと腕を振り上げる。
その瞬間、俺は母の腕から抜け出し、テーブルの上の木皿に手を伸ばす。

「そぉい!」

パシュッ!!

木皿はフリスビーのように回転し、ゴブリンのこめかみを直撃。
さらに軌道を変えながら他のゴブリンの顔面や後頭部に命中していく。

「ぎゃっ!?」「ぐぼっ!」「ごふっ!」

次の瞬間――村中の全ゴブリンが同時に崩れ落ちた。

クルクルと回転を続けた木皿は、俺の手元にスッと戻ってくる。
……ブーメラン?いや、ただの木皿だ。

最終的に全員地面に転がり、松明は湿った土に落ちて火が消えた。

「……は?」

「……え?」

「……」

あまりの出来事に、全員が固まる。
そんな静寂をもろともせず俺は父に尋ねる。

「……父ちゃん、大丈夫か?」

「え…? あ、ああ……いやお前、赤ん坊だよな?」

「やっぱり…本物の勇者だわ!」

母は驚きと嬉しさが混じった笑顔を見せ、俺を抱きしめる。

———神代颯真パート

「おいおいおいおい!ひと投げで全滅ってどういうことだよ!」

「……あれ、木皿でしたよね? ブーメランじゃないですよね?」

「くそぉ…“運999”のせいで、全部急所ヒットかよ…! もうホラーだろこれ!」

ふと、リアルタイムのコメント欄を見る。

 「赤ちゃんがゴブリン瞬殺www」
 「木皿が最強武器説」
 「勇者っていうか…殺戮ベビー」
 「運999の暴力www」
 「今期アニメ化待ったなし」
 「この展開…クセになる」

お、おおお…? なんか…盛り上がってるぞ?」
俺は慌ててスクロールを止め、コメントの熱量を確認する。

視聴者数、右肩上がり。コメント欄、炎上寸前の勢い。
正直、計画はグチャグチャだ。
でも…この勢いなら――

「……ふっ、いいじゃねぇか。こういうのもアリだな」

俺は口角を上げ、カメラをゴブリンの死体からハヤトへとゆっくりズームさせた。

こうして、“黄金のディレクター”神代の、前代未聞の転生実況は――
予想外の方向に走り出した。
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