EGOIST

崎矢梨斗

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 俊から与えられる深い口吻けに、譲は次第に溺れていく。
 甘い吐息を洩らし戦慄く唇を、俊は幾度もキスで塞いだ。
 優しく、激しく、熱情のままに貪る。
 飽くことなく繰り返されるキスに心地好さを覚えて、譲はすっかり俊へと身体を預けてしまう。
 俊の手がバスタオルにかかると、譲は唐突に我に返った。
「ダ……メ……ダメだよ、俊ニイ」
「どうして?」
「俺……汚いから……、見たらきっと……気持ち悪くなっちゃうよ」
 自分の身を守るかのように、譲はかたくなに肌を隠すバスタオルを握りしめ、キュッと唇を噛む。
 俊はその肩をそっと抱き寄せた。
「汚いなんて……そんな風に思わせたのは俺なんだな」
 強張りを解こうと宥めるキスが、譲の髪に触れ唇を掠める。
 上向いた譲の眸許にことさら優しく口吻けて、ヒクンと震える咽喉に俊は唇を押し当てた。
「俊……ニイ……」
 反射的に押し退けようとする譲の手を、俊は上手く押さえ込んでしまう。
「この肌に触れたいと願ってた」
 切なく告げる俊の囁きに、譲は動けなくなった。
「俊ニ……?」
「お前に触れるのが俺だけならいいのにって、ずっと思ってたよ」
「ズルイよ俊ニイ、……そんなの、俺の方がずっと……ッ」
 ずっと触れたいって思っていたのに。
 泣き出しそうに眸を潤ませた譲の背を、宥めようと柔らかく擦る俊の手は幼い頃と変わらない。どんな我が侭もきいてくれる、暖かな兄の手だ。
「…………俊ニイ」
 思わず甘えて擦り寄ってしまう。
 こめかみに触れたキスが首筋へと伝い降りても、譲は抗うことを忘れていた。
 気づいた時には遅くて、俊の器用な手にバスタオルは剥ぎ取られてしまっている。しかしそうと意識する間もなく、譲は別の感覚に捕らわれた。
「んん……、あ……あ……」
 噛み締め損ねた唇がほどけて、艶めいた喘ぎが洩れる。
 胸元に俊が舌を這わせた。
 こみあげた疼きが下腹からせり上がってくる。うずうずともどかしい快感の波が、譲を激流へと飲み込んでいく。
「あ……ん…………」
 胸の突起が俊の口に含まれる。歯が軽く突起を擦り、舌先で何度も押し潰すようにされる。
「ん……ん……」
 曖昧でいながらポイントを捕らえた刺激に譲は翻弄された。
 膝が震え立っていることが辛くなる。
 まだ触れられてもいないのに、譲の半身は反応を見せ育ち始めていた。気づいて譲は、羞恥に全身を真っ赤に染める。
 はだけられたバスタオルは床に落ちて、身を隠すものはなにもない。
 こんなみっともない姿を余すことなく俊の眸に晒しているのかと思うと、恥ずかしさよりも情けなくて涙が零れた。
「俊ニ…………、―――あうッ」
 舌先で突起を擽られ、強すぎる刺激に譲は耐えられないと首を振る。
「……ニイ……、俊ニイ……」
 泣き声が甘く掠れるほど感じてしまう。
 膝がガクガクして、これ以上立っているのは無理だった。
 情けなさも、羞恥も、快感も、そのどれもが入り混じって泣きじゃくる譲は、けれど決してやめて欲しいとは言わない。
 膝が砕け崩れ落ちる身体を、俊が素早く抱きとめた。
「―――キツかったか?」
「……平気」
 涙に潤む眸を向け強がる譲に、俊は柔らかく笑んでみせる。
「もっと酷いことをしても許してくれるか?」
「いいよ……俊ニイなら……」
 小さく頷く譲に俊は苦笑した。
「譲……悪いな。もう止めてやれない」
 俊の眸の奥に明らかな欲望の色を見つけて、譲はピクンと肩を揺らす。
 譲の身体を抱き上げた俊は、壊れ物を扱うようにゆっくりとソファにその細い身体を横たえた。
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