火の国と雪の姫

さくらもっちん

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25 優先順位

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燈麗《ひれい》が、一度、攻撃の手をゆるめた。
ほむらに、書状を渡している。

「コレは……?」

「三日月と戦っても、平行線だからね。
私の優先順位は、白雪と闘夜《とうや》を、守ることだ。
こちらが、ある程度、譲歩しないと、相手も退かないからね」

戦意を無くした燈麗が、眠りに落ちた白雪を、拾い上げて、華貴《かき》を差し出した。

身を強張《こわば》らせた華貴が、不安になりながらも、燈麗の意図を汲《く》んだ。
燈麗は、非情だ。それも、白雪を思うがこそだった。

「分かりました。私が元の場所に戻れば、白雪さんに、迷惑はかからないですよね。
……ごめんなさい、白雪。傷付けたこと、許してね」

名残惜しそうに、白雪の姿を、目に焼き付けると、華貴が、ほむらの元へ行った。
静かに、唐紅山《からくれない》を去って行った。

「燈麗さん。このまま華貴さんを、見捨てるんですか?」

納得出来ない星亡《せいぼう》が、燈麗を、責めている。

「私も悔しいよ。だが今は、王族を敵にまわすのは、不利だ。
これ以上、敵を増やしても、私達に、勝ち目は無い。戦力の差が大きいんだ」

徐々に日が暮れてきた。
苺が、燈麗達をうながして、山小屋に入った。

部屋で燈麗が、白雪の右肩に、包帯を巻いた。
燈麗も、自分の右足の手当てをしている。

「これから、どうするんですか?
白雪はきっと、華貴を助けに、行きますよ?」

立て続けに、質問する苺。
苺の視線は、畳に横たわる、白雪に、注がれている。

「それについては、闘夜に、指示をあおぐつもりだ」

ここで出た、闘夜の名前に、星亡と苺が、首を傾《かし》げている。

「闘夜は、複雑な事情があってな。
……二人には話すが、火の国の、第三王子だ」

白雪を取り囲む様に、座っていた三人。

燈麗が、仕方なく、機密事項を告げると、残りの二人が、固まっている。
ここだけの話だ。
外部に漏れたら、三人は、国に、処罰を受ける。もっと言うなら、王直々に。

「成程。素性を隠して居たんですね……。道理で気品がありますね」

急にお世辞を言い始めた、星亡。

「母親が、元……奴隷上がりでしたね。今では、一番の寵姫《ちょうき》。
皇紀妃のくらいでしたね」

苺は、物凄く、感銘を受けていた。

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