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第一章 たった一人の家族
―春彦―②
しおりを挟むその後は、なされるがままに車に乗り、黙ったまま死んだように揺れる車内の中で座っていた。自分がこれからどこへ向かうのか、そんなことさえ考えられなくて。空っぽになった心のままで、ただ流れる車窓を見ていた。
「あの、メイの父親の兄夫婦だっていう加藤さん。外見をそのまま表したような人たちだったわ。最後の最後まで、メイと春彦、両方うちで引き取れって言って」
叔母がずっと喚きたてている。
「見るからに柄の悪そうな人だったじゃないか。論理立てて話せない人間はすぐに力で人をねじ伏せようとする。そういうレベルの低い人間だって晒しているようなものなのに」
運転している叔父の言葉が耳に引っかかった。確かに、人相が悪くて、お世辞にもいい人そうには見えなかった。ますます、メイのことが心配になる。
「私たちにとっても、春彦だけを引き取るのだってどれだけ大きな決断だったか。うちには怜奈がいるのよ。男の子と一緒にこの先暮らしていくなんて、なんだか心配」
「まったくだよ。それも、もう物心もついている小学校高学年の子だ。不安しかないね。生活が一変することになる。僕たちの人生が変わるって言ったっていいくらいだ」
「あちらなんて、どう見たって子供たちに行き届いた教育をしているような家庭じゃなさそうだし、子供二人も四人も一緒じゃない。春彦も引き取ってくれればよかったのよ。あなたにもっと強く出てほしかった」
「そもそも、お前の親族のことじゃないか。こっちは迷惑をかけられている方なんだ!」
「また、同じことを言うのね。もううんざりよ」
気付けば、二人はまた言い争いをしていた。あの見るからに野蛮そうな男のもとでメイが暮らす。
もう、傍で見守ってやれることが出来ない――。
「でもまあ、女の子の父親の親族を探し出せただけでも助かったな。あれだけ見境ない関係を持っていたお前の姉だ。誰が父親か分からなくても不思議じゃない。現に、春彦の父親は分からなかった。でも、メイの父親だけはちゃんと記録が残っていたんだからな」
メイの笑う顔ばかりが浮かぶ。
『お兄ちゃん』
舌足らずの声が、ずっと鳴り響いている――。
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