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日常
第六百九十二話 回鍋肉
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いつもの時間に起きて、カーテンを開ける。うっすらと雲が見える、いい天気だ。寒さも少し和らいできたことだし、そろそろ夏服でもいいかもしれない。昼間は、暑くなりそうだ。
「おはよう、うめず」
「わうっ」
部屋の前には、すでに起きていたうめずがお座りをして待っていた。
「早起きだなあ」
「わふぅ」
「はは、大きなあくびだな。まだ寝ててもいいんだぞ」
身支度を整え、朝飯の準備をする……
あ、昼飯どうすっかな。うーん、よし、弁当にしよう。弁当箱にご飯を詰め、おかずは……冷凍をいくつか。ソースカツとコロッケ。レンジで温めて、詰める。それと卵焼きと、野菜は……プチトマトにしよう。
卵は三個割って、塩と砂糖と醤油を入れてよく混ぜる。丸いフライパンと卵焼き用のフライパン、どっちを使おうか。よし、今日は卵焼き用で。
油を広げ、温める。適量の卵液を注ぎ入れ、焼けた端の方から巻いていく。おっ、今日はうまく焼けそうだ。うまくいかないときは、とことんうまくいかないんだよなあ。
卵焼きがきれいに焼けると、いい気分だ。弁当に入れない分は、朝飯にしよう。
朝飯はあと、みそ汁だな。それと……何にしよう。冷蔵庫をのぞき込む。豚肉……は、とっておこう。朝飯にするなら、めかぶか、納豆か。よし、納豆にしよう。ねぎを入れて。
「いただきます」
炊き立てご飯に納豆。定番のようで、俺はなかなかやらない。納豆って、たまに食うとうまいんだよな。この匂いと食感。苦手だという人が多いのも分からなくもない。実際、俺もそこまで得意じゃなかった。でも、無性に食いたい時がある。
白米と納豆、合う。ねぎのさわやかさと少し濃い目の醤油がいい。キムチがあれば混ぜてもいい。
卵焼きの甘さが、朝の寝ぼけた頭に染みる。うん、うまく焼けた。
みそ汁は巻き麩とわかめ。ジュワッとした麩とわかめのつるっとした口当たり、好きだなあ。
「ごちそうさまでした」
朝飯食ってすぐだが、晩飯はどうしよう。久々に、のんびりと飯のことを考えられる。最近忙しかったからなあ。大変だけど、幸せだ。
昼休みの教室は、いつも通り騒がしい。後ろの席の山崎は授業の途中からうとうとしていて、サクッと野菜や何やらを食べたら寝てしまった。あれで足りるのかな。
「おっ、相変わらず今日もうまそうな弁当だなあ」
咲良は、食堂に行った勇樹の席に座り、買ってきたらしいカツ弁当をほおばりながら言った。
「また俺にも作ってきてくれよ」
「何でだよ」
弁当に入れたソースカツは、思ったよりも柔らかい。ソースがたっぷりで、うまいんだよなあ。コロッケも、冷めてもうまい。
今日は図書館の当番の日なので、少し急いで食べた。
カウンターの中は、何となく落ち着く。利用者も少ないから、のんびりしていられるし。
「返却お願いします」
「はい」
受け取った本を確認する。あ、市立図書館の分が混ざってる。年に何回かある、市立図書館からの出張貸出の分だ。
「それは、もらおうか」
「あ、先生。お願いします」
「はいはい」
これはバーコードで管理できないから、手書きの貸出帳がある。よそから借りている分だから、返却期限はきっちり守らないといけない。学校の図書館から貸し出す分とは少し扱いが違うのだ。
ちょうど今日は、出張貸出本の返却期限だったようで、次々と返却本がたまっていった。
久しぶりに、町の図書館にも行きたいなあ。
放課後の業務もスムーズに終わり、いつもより早めに帰りついた。
「さて……」
晩飯は何にしよう。冷蔵庫を開け、中身を確認する。豚肉……塩こしょうで焼くかあ。んー、でもせっかく時間あるし、なんか、違うようにしたいなあ。野菜室になんかあったかな。
そうそう、キャベツ。一玉買ったから使いきれていないんだった。サラダや蒸し野菜にもしたが、今日は別の食べ方をしたい。
豚肉とキャベツとくれば、回鍋肉だな。
確か調味料は買っておいたはず……あったあった。中華のレトルト調味料は、買い置きしてると何かと便利だ。
まずはキャベツをザクザク切る。肉はそのまんまでいい大きさだから、それで。
油を薄く敷いたフライパンで、最初にキャベツを炒める。少ししんなりしたら、別の皿に移す。そして、豚肉を炒める。
うわー、結構油出てるなあ。キッチンペーパーで吸い取ろう。豚バラは油っ気があるのがいい、ともいえるが、適度だな、適度。
火が通ったらいったん火を止め、調味料を入れてなじませ、キャベツを入れて再び火をつける。あとはまんべんなく味がいきわたるように炒めるだけだ。
なんか、久々にこうやって料理をしている気がする。ただ単に飯が食いたくて、飯を作る。最近忙しくて、忘れてたなあ。
うん、いいにおい。しかも山盛り。いいねえ。それとご飯。これで十分だ。
「いただきます」
回鍋肉のメインは肉かもしれない、が、俺はどうしてもまずキャベツから食べたくなる。火が通ってしんなりしつつも、程よく食感の残るキャベツ。みずみずしくて、歯触りがいい。そして濃い味付けが合う。
回鍋肉のキャベツって、めっちゃうまいんだよなあ。野菜炒めに使ってもいいかもしれないな、この調味料。玉ねぎとかも合いそうだ。でも、回鍋肉のキャベツ、っていうのがいいのかもしれないし。今度やってみよう。
肉はこってりと、食べ応えがある。脂っこさはないが程よくジューシーで、噛み応えがある。脂身のところはほんのり甘さが強めだ。
そして、キャベツと肉を一緒に。。
これこれ、これぞ回鍋肉。ジャクッとしたキャベツとギュッとした肉、みずみずしさと油、濃い味とさわやかな口当たり。うまい。
鼻に抜ける調味料の風味がいい。
そして、濃い味は白米に合うのだ。最後は残った汁にご飯を混ぜて食おう。余すことなく、食べきりたい。
あー、やっぱ食うことって、楽しいなあ。
満腹って、幸せだ。
「ごちそうさまでした」
「おはよう、うめず」
「わうっ」
部屋の前には、すでに起きていたうめずがお座りをして待っていた。
「早起きだなあ」
「わふぅ」
「はは、大きなあくびだな。まだ寝ててもいいんだぞ」
身支度を整え、朝飯の準備をする……
あ、昼飯どうすっかな。うーん、よし、弁当にしよう。弁当箱にご飯を詰め、おかずは……冷凍をいくつか。ソースカツとコロッケ。レンジで温めて、詰める。それと卵焼きと、野菜は……プチトマトにしよう。
卵は三個割って、塩と砂糖と醤油を入れてよく混ぜる。丸いフライパンと卵焼き用のフライパン、どっちを使おうか。よし、今日は卵焼き用で。
油を広げ、温める。適量の卵液を注ぎ入れ、焼けた端の方から巻いていく。おっ、今日はうまく焼けそうだ。うまくいかないときは、とことんうまくいかないんだよなあ。
卵焼きがきれいに焼けると、いい気分だ。弁当に入れない分は、朝飯にしよう。
朝飯はあと、みそ汁だな。それと……何にしよう。冷蔵庫をのぞき込む。豚肉……は、とっておこう。朝飯にするなら、めかぶか、納豆か。よし、納豆にしよう。ねぎを入れて。
「いただきます」
炊き立てご飯に納豆。定番のようで、俺はなかなかやらない。納豆って、たまに食うとうまいんだよな。この匂いと食感。苦手だという人が多いのも分からなくもない。実際、俺もそこまで得意じゃなかった。でも、無性に食いたい時がある。
白米と納豆、合う。ねぎのさわやかさと少し濃い目の醤油がいい。キムチがあれば混ぜてもいい。
卵焼きの甘さが、朝の寝ぼけた頭に染みる。うん、うまく焼けた。
みそ汁は巻き麩とわかめ。ジュワッとした麩とわかめのつるっとした口当たり、好きだなあ。
「ごちそうさまでした」
朝飯食ってすぐだが、晩飯はどうしよう。久々に、のんびりと飯のことを考えられる。最近忙しかったからなあ。大変だけど、幸せだ。
昼休みの教室は、いつも通り騒がしい。後ろの席の山崎は授業の途中からうとうとしていて、サクッと野菜や何やらを食べたら寝てしまった。あれで足りるのかな。
「おっ、相変わらず今日もうまそうな弁当だなあ」
咲良は、食堂に行った勇樹の席に座り、買ってきたらしいカツ弁当をほおばりながら言った。
「また俺にも作ってきてくれよ」
「何でだよ」
弁当に入れたソースカツは、思ったよりも柔らかい。ソースがたっぷりで、うまいんだよなあ。コロッケも、冷めてもうまい。
今日は図書館の当番の日なので、少し急いで食べた。
カウンターの中は、何となく落ち着く。利用者も少ないから、のんびりしていられるし。
「返却お願いします」
「はい」
受け取った本を確認する。あ、市立図書館の分が混ざってる。年に何回かある、市立図書館からの出張貸出の分だ。
「それは、もらおうか」
「あ、先生。お願いします」
「はいはい」
これはバーコードで管理できないから、手書きの貸出帳がある。よそから借りている分だから、返却期限はきっちり守らないといけない。学校の図書館から貸し出す分とは少し扱いが違うのだ。
ちょうど今日は、出張貸出本の返却期限だったようで、次々と返却本がたまっていった。
久しぶりに、町の図書館にも行きたいなあ。
放課後の業務もスムーズに終わり、いつもより早めに帰りついた。
「さて……」
晩飯は何にしよう。冷蔵庫を開け、中身を確認する。豚肉……塩こしょうで焼くかあ。んー、でもせっかく時間あるし、なんか、違うようにしたいなあ。野菜室になんかあったかな。
そうそう、キャベツ。一玉買ったから使いきれていないんだった。サラダや蒸し野菜にもしたが、今日は別の食べ方をしたい。
豚肉とキャベツとくれば、回鍋肉だな。
確か調味料は買っておいたはず……あったあった。中華のレトルト調味料は、買い置きしてると何かと便利だ。
まずはキャベツをザクザク切る。肉はそのまんまでいい大きさだから、それで。
油を薄く敷いたフライパンで、最初にキャベツを炒める。少ししんなりしたら、別の皿に移す。そして、豚肉を炒める。
うわー、結構油出てるなあ。キッチンペーパーで吸い取ろう。豚バラは油っ気があるのがいい、ともいえるが、適度だな、適度。
火が通ったらいったん火を止め、調味料を入れてなじませ、キャベツを入れて再び火をつける。あとはまんべんなく味がいきわたるように炒めるだけだ。
なんか、久々にこうやって料理をしている気がする。ただ単に飯が食いたくて、飯を作る。最近忙しくて、忘れてたなあ。
うん、いいにおい。しかも山盛り。いいねえ。それとご飯。これで十分だ。
「いただきます」
回鍋肉のメインは肉かもしれない、が、俺はどうしてもまずキャベツから食べたくなる。火が通ってしんなりしつつも、程よく食感の残るキャベツ。みずみずしくて、歯触りがいい。そして濃い味付けが合う。
回鍋肉のキャベツって、めっちゃうまいんだよなあ。野菜炒めに使ってもいいかもしれないな、この調味料。玉ねぎとかも合いそうだ。でも、回鍋肉のキャベツ、っていうのがいいのかもしれないし。今度やってみよう。
肉はこってりと、食べ応えがある。脂っこさはないが程よくジューシーで、噛み応えがある。脂身のところはほんのり甘さが強めだ。
そして、キャベツと肉を一緒に。。
これこれ、これぞ回鍋肉。ジャクッとしたキャベツとギュッとした肉、みずみずしさと油、濃い味とさわやかな口当たり。うまい。
鼻に抜ける調味料の風味がいい。
そして、濃い味は白米に合うのだ。最後は残った汁にご飯を混ぜて食おう。余すことなく、食べきりたい。
あー、やっぱ食うことって、楽しいなあ。
満腹って、幸せだ。
「ごちそうさまでした」
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