織田戦国伝

ソータ

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上洛へ向けて

第弐拾陸章 重臣の謀反

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織田家は大義名分を得て近江六角を匿った、三好家を攻め立てた。
そしてまずは山城国を攻めた。

「申し上げます!」
「ん」
「龍王山城、十市遠勝、御館様にお目通り願いたいと!」
「通せ」
「はっ!」

「お目通りお許し頂きありがたき幸せに存じます」
「で、あるか」
「して、用向きは」
「我が主松永久秀は織田様に御味方致したいと申し、この十市遠勝が使者として参りましてございます」
「松永久秀が我に味方すると?」
「はっ」
「御館様、ここはお跳ね除け下さりませ」
柴田勝家が信長に言上する。
「何故にござる!」
「松永は先の公方様、足利義輝公をお討ち取りあそばされた。我らは此度第十五代公方様となられる足利義昭公を奉り上洛に及んでおる、味方になることを許さば松永久秀を許すことになり申す」
「権六」
「はっ、」
「お主の言う通りじゃ、松永久秀、信用するに値せず」
「織田様!」
「くどい!」
利家が立ち上がり太刀を抜きかける。
「又左!」
「やめろ又左!」
丹羽長秀、佐々成政が止めに入る
「止めるな五郎左!内蔵助!」
「又左」
「はっ!」
「構わん切れ」
「はっ!」
「御館様!」
「黙れ猿!」
「ははぁっ!しかしながら言上仕る!ここでこの十市と申す者打首にいたさば殿のお名前を汚すものと心得まする!」
「猿」
「はっ!」
「不快じゃ下がれ、他の者もじゃ」
「「はっ」」
「又左、権六はここに残れ」

「又左」
「はっ、」
「良き芝居であったぞ」
「はっ」
「権六、松永弾正、如何に心得える」
「やはり信用には値しないと存じます」
「であるか、又左は」
「松永弾正は良いとしてもその嫡男、久通が信用できませぬ」
「やはりお主らよのぉ、儂はその両方が信じられぬ」
「では」
「十市遠勝は又左に任せる」
「御意」

前田利家はそのまま十市遠勝のいる部屋に向かった。
襖を開けるとそこには十市遠勝と親しそうに話す羽柴秀吉と佐久間信盛がいた
「御館様のお達しをお伝え申す」
「はっ!」
「松永弾正久秀との和睦、信用に値せぬ故罷りならぬ!」
すると利家は太刀を抜き十市遠勝目掛けて振り下ろそうとする。
しかし意外な人物がこれを止める。
「何をする秀吉!」
「殺してはならぬ!」
「御館様のご命令なるぞ!」
「又左!頭を冷やせ!」
「ほぅ、ご両人は御館様のご命令に従わぬと申されるのだな」
「そうではない!今のお主は頭に血が上っておる!」
「羽柴筑前守秀吉並びに佐久間右衛門尉信盛!」
「な、なんじゃ!」
「謀叛人としてこの場にて打首に致す!」
「う、打首じゃと!?」
「たわけ!」
利家の声を聞きつけて信長の近習、近くにいた重臣が集まってくる。
「は、話を聞け!」
「聞く必要無し!この2名は御館様のご命令に背き、十市遠勝を切ろうとした儂の太刀を止め命を救うた!羽柴秀吉の抜いた刀がその証!」
「どけぇ!」
「御館様...」
「御館様!ただの喧騒にござる!ここは我らにおまかせを!」
「.....秀貞...どけと申したのが聞こえなんだか」
「御館様!」
「黙れぇ!」
信長が林秀貞の右肩を蹴り飛ばし林秀貞は後ろに少し飛ばされた。
「又左」
「ははぁ!」
「もう一度詳しく申せこの2名は...どうした?」
「はっ!羽柴筑前守秀吉、佐久間右衛門尉信盛は御館様のご命令に背き、この十市遠勝が命、自ら命を捨て守ってございます」
「猿、信盛」
「は、はぁ!」
「なぜ儂に背く」
「そ、背くなど...」
「ならばうぬが切れ」
信長が否定した秀吉に命令する
「そ、それは...」
「織田様!何卒我が主のお願い、お聞き届けくだされませ!」
「くどいと申すに!御館様、再度皆の前でご命令を頂戴したく存じます!」
「で、あるか....前田又左衛門利家」
「ははぁ!」
「足利義輝公斬殺の実行犯が1人、松永久秀の家臣、十市遠勝の処分を命ずる」
「御館様!」
「織田様!」
「畏まって候!皆聞いたな!」
「待て!又左!」
秀吉が再度止めるそして信盛も間に立ち塞がり大の字で遠勝を守る
「邪魔をするな!」
先程の広間では止めた佐々成政であったが命令を聞いたからにはと秀吉を蹴り飛ばす。
利家は目の前の信盛と顔を合わせながら動けずにいる。
迷っているのだ。命令を聞いても尚立ち塞がっているからにはそれ相応の覚悟があるのだろうが、ここまで共に戦い抜いてきた同じ織田家の家臣である。
「又左、この際信盛ごと切ってしまえ」
「権六....お主...」
「佐久間、命令を受けた又左の前に立ち塞がったのだ、列記とした謀叛であろう、それに切られる覚悟ぐらいできておろう?」
「見捨てるのか....」
「又左、許す」
信長はみなをかき分け下がっていく。
「御館様!お待ちを!」
「織田様!何卒!何卒!」
「又左ぁ!切るのか!味方を!信盛様を!」
「黙れ!御館様への忠義を忘れた成り上がり猿が!」
「離せぇ!内蔵助!信盛様ぁ!」
「....内蔵助」
「はっ!」
「猿の首取ってしまえ」
「権六様ぁ!」
「又左、全てはお前に託されたぞ、皆下がれ」
「儂は残ります」
「勝三郎...よく見届けておけ」
「畏まって候」
「佐久間様」
「なんじゃ」
「覚悟は出来ておりましょうな」
「お主に儂は切れん」
「この又左衛門、御館様のご命令とあればたとえ親父と仰ぐ権六様でも切りますぞ」
「.....」
「ご覚悟召されよ」
「又左ぁ!」
「ええい黙らぬか!本当に首を取るぞ!」
十市遠勝は佐久間信盛と前田利家の睨み合いに腰を抜かしている。
既に利家は太刀を構え、1歩でも踏み出せば佐久間信盛を切り落とすことが出来る。
それに対し太刀を抜き自分を守ってくれた羽柴秀吉は佐々成政に組み伏せられ脇差を首元に突きつけられ身動きが取れずにおり、佐久間信盛は太刀すら持っておらず、未だ床に転がっている。
「丸腰の相手を切り捨てるのか」
「太刀も持たず飛び出してきたのはそちらであろう」
「.....」
「佐久間殿....」
「退くのか!退かないのか!」
「退かぬ!」
その瞬間利家は太刀を振り下ろした。
「信盛様ぁ!」
「十市遠勝!覚悟!」
「前田ど.....」
「又左....内蔵助!又左が!」
「お主もだ....」
織田家重臣・尾張鳴海城主佐久間右衛門尉信盛
織田家重臣・美濃墨俣城主羽柴筑前守秀吉
松永家家臣・山城国龍王山城主十市兵部少輔遠勝
近江国観音寺城にて死去。
羽柴秀吉、佐久間信盛は謀叛人として処分された。

「木下秀長」
「ははっ....」
「木下秀長、これよりは羽柴筑前守秀長と名乗るが良い」
「ありがたき幸せに存じ上げまする。」
「秀長」
「はっ、」
「うぬの兄は儂に背き敵を庇い立て、友であるはずの前田又左衛門に対し刃を向けた。よって処分した、存念があるならば申せ」
「兄の不徳、お許し頂けるなど毛頭思ってはおりませぬが、何卒一族郎党だけはお助け頂けますようお願い申し上げます。」
「秀長、お主が羽柴の頭領となったのだ、羽柴の一族に何かあることは無い、安心致せ」
「恐悦至極に存じます....」
「秀長を墨俣城主とし、前田利家が家臣佐脇良之を近江国浅井家へつかわす。」
「「はっ!」」
「鳴海城は佐久間信栄に預ける。この旨佐脇良之に伝令を任せる。親戚に挨拶でもして参れそのついでじゃ」
「お心遣い痛み入りまする。」
「で、あるか、利家、次じゃ」
「ははっ林佐渡守秀貞!」
「...はっ」
「謀叛人を庇い立て致した義、これ心の乱れと心得る。しばらく美濃大垣にて池田勝三郎恒興が監視下にて養生、謹慎いたすべし」
「かしこまりましてございます。」

佐脇良之は1度岐阜城に立ち寄り信長の妻である濃姫、吉乃へ挨拶、伝言を申し伝え、尾張へ立ち戻った。
「ただいま帰りました。」
「良く戻りました...」
「犬千代は元気か?」
「はい、御館様の側近としてお役目を果たしております」
「そうですか、ならば良かった、ねぇ?まつ?」
「えぇ、佐々様や羽柴様は?」
「内蔵助様はお元気です」
「羽柴秀吉様はどこか悪いのか?」
「羽柴秀吉は敵方の十市遠勝を御館様の命令を受けた兄上から守ったことで謀叛となりその場で内蔵助様に討ち取られました」
「な.....なんと...」
「羽柴秀吉と協調した佐久間信盛も兄上に切り捨てられてございます」
「佐久間様も羽柴様も織田家の重臣ではありませんか!」
「母上...謀叛は謀叛でござる」
「墨俣城は...」
「近江に入っていた羽柴秀吉の弟である羽柴秀長様がお継ぎになり、代わりに近江には私が参ります」
「そうですか....」
「姉上」
「はい?」
「兄上より伝言を預かっております」
「伝言?」
「はい、羽柴秀吉謀叛とは言え羽柴は残る、ねね様のことは案ずるな、と」
「あの人は本当に....」
「申し上げます....良之様!戻っておられたのか!」
「私のことはいい用はなんだ」
「あぁ、岐阜城より使者が参り、奥方様がまつ様をお呼びだと」
「直ぐに向かいます支度を」
まつが立ち上がると良之も太刀を掴み立ち上がる
「お供つかまつる」
「頼みます」


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