大東亜架空戦記

ソータ

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対米決戦

第105話 サンビセンテ岬沖海戦

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日本海軍はアメリカ本土上陸と同時にドイツ海軍からの要請に応え、地中海に第二遊撃艦隊を派遣していた。
それを知ったアメリカ軍は一時混乱に陥るも第53任務部隊による航空攻撃を実施、2度目の地中海での海戦が始まる。(1度目は米英VS独伊)

「敵機直上!急降下ぁ!」
「面舵一杯!」
重巡大船が2度目の襲撃にあっている。
第二遊撃艦隊司令長官は太平洋で水雷戦隊を指揮していた古村啓蔵少将である。
「舵戻せ!」
大船の右舷30メートルに250ポンド爆弾が3発着弾する。
その衝撃で重巡洋艦の中でも大きめな大船の船体が揺さぶられる。
「被害は!」
「戦闘並びに航行に支障なし!」
「よろしい!防空巡洋艦の底力を見せてやれ!」
「右弦40度!敵雷撃機!突っ込んでくる!」
「弾幕を張れ!」
アメリカ軍からの航空攻撃は40分続き、行動を共にしていたドイツ軍の軽巡、ライプツィヒ、駆逐艦リヒャルト・バイツェン、Z23、Z25が沈没した。
日本海軍の艦艇は軽微な損傷を受けるのみに留まり、その操艦技術でドイツ海軍を驚かせた。
「長官」
「ん」
「ドイツ海軍の軽巡1隻、駆逐艦3隻が撃沈されたとのことです」
「そうか、ドイツ旗艦プリンツ・オイゲンに打電、我々ハ之ヨリ、夜間肉薄攻撃ヲ敢行ス、貴艦隊ノ判断ヲ報セラレタシ」

「如何されますか」
ドイツ海軍第一艦隊司令官ヴィルヘルム・マルシャル上級大将は少し悩んだ
「ヤーパンの艦隊に着いて行く、返信は同行するだ」
「了解致しました」

「意外だな、着いてくるのか」
「敢えて肉薄攻撃と伝えたのに、なかなか根性があるようですね」
「そうだな、では、全艦地中海を出るぞ」
「はっ!」
日独混同艦隊は18時26分地中海を出て19時38分、日本軍駆逐艦花月の四号電探が敵艦隊を感知、それとほぼ同時に米国軍軽巡洋艦リトルロックのレーダーも混同艦隊を感知した。

「航空攻撃に致しますか?」
「おそらく昼間の艦隊だ...攻撃隊の3分の1が対空砲火にやられている。夜間では命中率も下がり効果的ではない。」
「しかし太平洋艦隊からの報告を聞いている限り日本軍艦隊は夜戦に長けており魚雷も相当の威力を発揮すると。」
「それに操艦技術もなかなかのものだと聞く、攻撃隊からの知らせでは日本軍艦隊だけは命中弾を出せなかったとの事だ」
「我々の砲弾が当たりますかね。」
「なんだ、やる気じゃないか」
「男にはやらねばならぬときがあります」
「ははは!そうだな!全艦地中海方面へ進路を取れ!」
「アイサー!」

「敵艦隊との距離急速に縮まっているとの事です」
「奴らも来たな」
「現在の彼我の距離およそ二十一海里との事です」
「全艦に魚雷の確認をさせておけ」
「かしこまりました」

「敵艦隊既にジブラルタル海峡を超えているとの事です」
「速いな、さすが巡洋艦部隊か」
「しかしこちらは第八艦隊だけで戦艦4隻です、火力的には有利でしょう」
「主砲火力はな...空母を中心に持ってこさせろ、輪形陣だ」
「輪形陣...ですか?艦隊戦ですよ?」
「いいからやれ」
「ア、アイサー」
アメリカ軍艦隊はサンビセンテ岬沖で空母を中心に輪形陣で停止。
古村少将はこれを聞いて驚いた。
「停止?」
「はい、電探ではその場から動かず停止し動かない...と」
「なんの意図がある...」

「彼我の距離16マイル!」
「主砲用意!レーダーにて射撃を開始する!」
両艦隊はじわじわと近づいており、アメリカ軍艦隊はそのまま停止、ブラッドリー中将の思惑は味方ですら誰も分からなかった。
「なぜ輪形陣で止まるのだ....」
「分かりません。何か意図があるのでしょうが、全く見えません。」
「敵艦隊との距離は」
「既に11マイルを切っています」
「そろそろ見えてくるぞ。」

「距離10海里を切りました」
「ん、そろそろだな。全艦最大戦速、砲雷撃戦用意」
「最大戦速!砲雷撃戦用意!」
ヴィルヘルム上級大将はこの増速に驚いた。
「まさかこのまま突っ込む気か...?」
「ミシマどうなんだ?」
プリンツ・オイゲンには古村少将の意図を伝達する為に三島大佐が乗艦している。
「我が帝国海軍の砲雷撃戦はできるだけ敵艦隊に接近し、酸素魚雷をばら撒くという戦術が主です。このまま突入するのが我々の戦法です」
「本気なのか...狂ったということでは無いのだな?」
「古村長官は優秀な指揮官であります」
「信じるぞ...」

「砲撃開始!」
先に戦火を開いたのは米艦隊であった。
「敵艦発砲!」
大船艦橋に見張り員の声が響き渡る
「衝撃に備えろ!」
「弾着!今!」
第一射目は特段至近弾も命中弾も無かった。
「全弾遠!」
「くそ!続けて撃て!」
「敵艦発砲!」
「駆逐艦より入電!敵艦隊進路、速力そのままです!」
「突っ込んでくる気か!?」
「弾着!ナウ!」
「前衛の多数の駆逐艦に命中弾確認!」
「初弾だぞ!」

「命中弾多数!」
「潜水隊に攻撃命令を出せ」
「はっ!」
 棚橋大佐率いる潜水艦部隊は巡洋艦部隊が正面としたら右方面から襲撃を開始、外郭の駆逐艦により潜望鏡を出していた伊号第三十二潜水艦が発見されるも呂号第五十二潜水艦による雷撃目標であったために打電する前に海の底へと消えることになる。

「左翼の駆逐艦が被雷!」
「なに!?」
「あ!潜望鏡です!潜水艦がいます!」
「駆逐艦に迎撃させろ!」
米海軍駆逐艦が数隻、潜水部隊を迎撃するために動き出す。
しかし19隻の潜水艦を相手にするにはさすがに無理がある。
魚雷を全て撃ち終えた日本軍潜水部隊はすぐさま転進、第二遊撃艦隊との合流地点へ向かった。
そしてその放たれた魚雷は駆逐艦4隻、軽巡2隻、重巡洋艦3隻を道ずれにした。

「潜水部隊転進、合流地点へ向かうそうです」
「わかった」
第二遊撃艦隊は直進を続け、先頭を航行する重巡大船と米艦隊との距離は遂に6キロを切っている。
「魚雷発射用意!」
「主砲撃ち続けろ!」

「奴ら狂ってやがる!なんだあの戦い方は!」
「58任務部隊はこんなヤツらを相手にしていたんですか!?」
「演習の時奴らも狂っているかと思っていたが...これが本物か...」
「魚雷だ!」
「ッ!?」
戦艦ジョージア、アバラマ、イリノイがこの雷撃で大破、夜明けと共にその姿を消して行った。
日独混同艦隊はドイツ駆逐艦テオドール・リーデル、ハンス・ロディ、日本軍駆逐艦薄が沈没。
サンビセンテ岬沖海戦は枢軸国軍の勝利で幕を閉じた。

「戦艦3隻がやられたか。」
「閣下、海軍艦艇は本国に戻しては?」
「戻してどうする。パナマが使えない限り我々は後手に回ることしか出来ないのだぞ。」
「報告致します。ロサンゼルスに新たな上陸部隊と思しき輸送船団が現れたと。」
「本気ですな。」
「ニミッツ君...君はこの戦争どう見る?」
「あまりこのようなことは申し上げたくありませんが...詰みかと....」
「アイゼンハワー君はどうかね。」
「現状日本軍にまともに対峙する体力は既に合衆国には残されていないのでは無いでしょうか...」
「やはり、そう思うか」
「「はっ」」
「ではこれよりは日本との講和の道を模索しようか。」
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