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第一章
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「それで、二人の馴れ初めはどんなだったの?」
おばあちゃんからいきなり核心が投げかけられた。
伊織はおばあちゃんに会った時に聞かれるかもしれない質問をリスト化していて、僕はそれをすべて暗記せねばならなかった。今の質問は想定内である。
「僕も生徒会役員なんです。僕は庶務長という役職をしているのですが、主に伊織さんのサポートをしたり、広報だったりその他の雑用をしています」
もちろん僕は生徒会に入れるような器じゃないし、ましてや部活や委員会にも入っていない。これは伊織が考えた僕らの嘘の出会いである。
「彼の真面目な仕事ぶりに惹かれたの。彼のおかげで生徒会は成り立っているようなものなのよ」
「そんなことないよ。君が僕ら生徒会だけじゃなくて、学校全体をけん引してくれているから、そのひた向きな姿にみんなが感化されて全力で働いているだけだよ。今の生徒会があるのは君が先陣に立ってくれているからさ」
「もう、歩ったら」
僕らは見つめ合い、さもお互いを尊敬しあっているといった演技を披露した。
客観的に見たら僕らのやり取りには多少のリアリティがあったのか、おばあちゃんは訝しんでいる様子もなく、どうやら僕はこれから先、おばあちゃんの前では仕事のできる生徒会役員の一人として認識されることになるようだった。
昼食を食べ終えると伊織に目線で合図されたので、僕は自ら率先して片づけを行うという意志があるような声かけをした。
おばあちゃんは後で片付けるからそのままにしておいていいと言ってくれたが、伊織も便乗するように、私も手伝う、ともしも僕と二人だったら絶対言わないであろう台詞を言い、僕らは食器を持って台所へ移動した。
「あなた、顔が引きつっていたわよ。ばれたらどうするのよ!」
僕らは皿を洗いながら、おばあちゃんに聞こえないように反省会をした。完璧だと思っていた僕の演技に、彼女は不満があるらしい。
「僕は君みたいに演技派じゃないから、そんなにうまくできないよ。それに、一夜漬けにしてはよくできた方だと思うけど――これ、まだ汚れがある」
僕は彼女が洗った皿を返した。皿の縁にサラダのドレッシングがこびりついていた。
「台詞を覚えることに必死過ぎるのよ。自然な表情で言えるように練習しなさいよ」
「これでも鏡の前で練習したり、お風呂でイメージトレーニングしたんだ。あんなに長いセリフを覚えたんだから上々だろう。――これもまだ汚れてる」
今度はそうめんが盛ってあった器を返した。まだそうめんのぬめりが残っていた。
「本来の目的を忘れてない? あなたは私の彼氏を演じないといけないのよ。だから役に入り込まないといけないの。台詞を覚えりゃいいって問題じゃないの。想像力がないのよ、想像力が」
「じゃあ、もっと演じやすいシチュエーションにしてほしかったよ。図書室でよく会ったから話すようになったとか、重い荷物を持ってあげたとかさ。それより、洗うの変わろうか?」
泡の流し切れていない皿を渡されて、僕はいよいよ我慢できなくなったので係りを交代することにした。
おばあちゃんからいきなり核心が投げかけられた。
伊織はおばあちゃんに会った時に聞かれるかもしれない質問をリスト化していて、僕はそれをすべて暗記せねばならなかった。今の質問は想定内である。
「僕も生徒会役員なんです。僕は庶務長という役職をしているのですが、主に伊織さんのサポートをしたり、広報だったりその他の雑用をしています」
もちろん僕は生徒会に入れるような器じゃないし、ましてや部活や委員会にも入っていない。これは伊織が考えた僕らの嘘の出会いである。
「彼の真面目な仕事ぶりに惹かれたの。彼のおかげで生徒会は成り立っているようなものなのよ」
「そんなことないよ。君が僕ら生徒会だけじゃなくて、学校全体をけん引してくれているから、そのひた向きな姿にみんなが感化されて全力で働いているだけだよ。今の生徒会があるのは君が先陣に立ってくれているからさ」
「もう、歩ったら」
僕らは見つめ合い、さもお互いを尊敬しあっているといった演技を披露した。
客観的に見たら僕らのやり取りには多少のリアリティがあったのか、おばあちゃんは訝しんでいる様子もなく、どうやら僕はこれから先、おばあちゃんの前では仕事のできる生徒会役員の一人として認識されることになるようだった。
昼食を食べ終えると伊織に目線で合図されたので、僕は自ら率先して片づけを行うという意志があるような声かけをした。
おばあちゃんは後で片付けるからそのままにしておいていいと言ってくれたが、伊織も便乗するように、私も手伝う、ともしも僕と二人だったら絶対言わないであろう台詞を言い、僕らは食器を持って台所へ移動した。
「あなた、顔が引きつっていたわよ。ばれたらどうするのよ!」
僕らは皿を洗いながら、おばあちゃんに聞こえないように反省会をした。完璧だと思っていた僕の演技に、彼女は不満があるらしい。
「僕は君みたいに演技派じゃないから、そんなにうまくできないよ。それに、一夜漬けにしてはよくできた方だと思うけど――これ、まだ汚れがある」
僕は彼女が洗った皿を返した。皿の縁にサラダのドレッシングがこびりついていた。
「台詞を覚えることに必死過ぎるのよ。自然な表情で言えるように練習しなさいよ」
「これでも鏡の前で練習したり、お風呂でイメージトレーニングしたんだ。あんなに長いセリフを覚えたんだから上々だろう。――これもまだ汚れてる」
今度はそうめんが盛ってあった器を返した。まだそうめんのぬめりが残っていた。
「本来の目的を忘れてない? あなたは私の彼氏を演じないといけないのよ。だから役に入り込まないといけないの。台詞を覚えりゃいいって問題じゃないの。想像力がないのよ、想像力が」
「じゃあ、もっと演じやすいシチュエーションにしてほしかったよ。図書室でよく会ったから話すようになったとか、重い荷物を持ってあげたとかさ。それより、洗うの変わろうか?」
泡の流し切れていない皿を渡されて、僕はいよいよ我慢できなくなったので係りを交代することにした。
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