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第三章 我が唯一は
23.優しい毒(SIDE セスラン)*
**ご注意**
ヒロイン以外との行為シーンが入ります。
NGの方は自衛をお願いいたします。
********
白虎の里から戻ったパウラは、深刻な顔をしていた。
もう一度里に行くと言う。
理由を聞けば、白虎の女の衰弱がひどく放っておけないからと答えた。
「白虎の女? 争いの原因になった、王族の女のことか? ゲルラが何かしたのか? それとも里の者がなにか」
咄嗟に母を思い出す。
セスランを身ごもって、その後追われるように里から出された母を。
ゲルラも白虎も互いを忌み嫌っている。
何かされたとしても、不思議ではない。
「した……といえばそうかもしれませんけれど」
パウラは曖昧に答えて言葉を切った。
「どちらかといえば、彼女の問題ですわね。ゲルラの騎士が心配でたまらない。会えないのがつらい。そんな感じに見えましたわ」
食事も水も摂らず、寝台に伏せたままなのだと言う。
大陸の東の端で、ゲルラの騎士と女は捕まった。
二人で他国へ逃げようとしていたらしい。
それを引き裂いたのは、互いの母国の者たちだった。
「彼女は口をきいてくれません。時々ゲルラの騎士の名を呼んで泣いているようですけれど、それ以外は誰が何を話しかけても、まるで聞こえていないように見えますわ」
自分がついていても仕方ないとはわかっているが、せめて何か口にできそうなものを持って行ってやりたいのだとパウラは言った。
「白虎と竜と、遠い昔には婚姻もあったと聞きますのに。見逃してさしあげることが、どうして難しいのでしょうね」
ほう……と重い溜息をついて、パウラは布袋を取り出した。
赤や緑のリンゴ、ヴェストリー産の高価なオレンジがいっぱいに入っている。
「では私も行こう」
そんなことになっているのなら、里は殺気だっていることだろう。
竜族の姫が一人で出向くなど、危険極まりない。
パウラに危害を加えるなら、里ごとすべて燃やし尽くしてくれる。
セスランが意気込んでいたところに。
「アルヴィド様に、もうお願いいたしました」
ごく自然に、さらりとパウラは口にした。
先ほど護衛を頼んだから、その流れでこれもお願いしたのだと。
『だって今日、パウラは誰と一緒にいるんですか? セスラン様を誘いませんでしたよね?』
エリーヌの声が脳裏を過る。
「そうか……」
どんな感情も出してはいないはずだ。
セスランは気力を集めて、無表情を保った。
アルヴィドを選ぶのか。
セスランでは、なぜダメなのか。
とりすがって聞きたい思いを飲み込んで。
『いずれセスラン様は、はっきり要らないって言われます』
本当の事だ。
そして本当のことは、いつも残酷だった。
「セスラン様、だからわたし、言ったじゃないですか」
パウラたちが出て行った後、セスランの側にはエリーヌがいた。
私室にあてられた天幕に勝手に入ってきた無礼を、この時のセスランは咎めなかった。
エリーヌの小さな手が、セスランの左の膝に添えられる。
「ね、セスラン様。パウラにはアルヴィド様しか見えてないんです。名門の竜同士だもん。気が合うんですよ」
エリーヌは優しげに寄り添いながら、セスランの耳に毒を注いでゆく。
「痛いですよね? 悔しいですよね? とっても悲しいですよね?」
エリーヌの指がセスランの頬にかかる。
優しくそっと撫でながら、大きな緑の瞳でじぃっとセスランを見つめる。
「セスラン様は何も悪くないんです。セスラン様はそのままで素敵なんです。わたしはそのままのセスラン様が、大好きなんですから」
毒薬が心にしみてゆく。
心の奥底にまで染み渡った時、セスランの思考は麻痺していた。
「セスラン様」
エリーヌがその柔らかい唇をセスランのそれに重ねた時。
セスランの理性は、完全に崩れ落ちた。
折り畳み式の簡素な寝台に、セスランはエリーヌを押し倒す。
理性のタガが外れたセスランを、エリーヌは嬉しそうに微笑んで誘った。
「着たままじゃ嫌です。もっともっと、セスラン様と近くなりたい」
脱がせてほしいと甘く強請る声に、セスランはエリーヌのブラウスのボタンに指をかける。
ぶつぶつと外すのももどかしくて、2つ目を外した後は引きちぎって前をはだけさせた。
赤いレースの下着が、案外大きい胸のふくらみをやけに煽情的に見せる。
ざらっとした手触りのレースは目が粗く、派手な見た目だけを重視した安物らしい。
そんなことが、まだ目につくのか。
崩れたはずの理性は、まだかけらほど残っているのだとセスランは苦笑した。
「何を笑っているんですか」
潤んだソーダ水の瞳が、続けろと促す。
細い指を伸ばして、セスランの白いトーガのピンを外した。
白絹がするりと滑り落ちる。
「脱いで……」
エリーヌがさらに促すと、白いシャツをセスランは乱暴に脱ぎ捨てる。
日々鍛錬を怠らない身体は、けして見苦しくはないはずだった。
うっとりと自分を見上げるエリーヌに、自尊心をくすぐられる。
「やっぱりキレイ……。うれしい。わたしのもの」
白く柔らかい腕がセスランの首に回される。
ぐいと引っ張り込まれて、柔らかな胸に抱き寄せられた。
「もう渡さないから。パウラには渡さない」
きらりと光るエリーヌの瞳が、セスランを捕らえてからめとる。
罠にかかった獣は、猟師に導かれるままその胸に顔をうずめた。
安物の香料が鼻につく。
しびれるように甘い人工香料が、セスランの思考をさらに深く眠らせた。
こんもりと優しく盛り上がった胸の頂に、セスランは歯を立てる。
直後、唇で挟みこみ、柔らかく締め付ける。
舌でねっとりと舐れば、嬌声があがる。
舌をそのまま遊ばせて、片方の頂を指で弄り続けた。
桃色に染まってゆく肌、ゆらゆらと揺れる腰。
エリーヌの赤い唇から、言葉にならない声が漏れ続けている。
やがて焦れきったエリーヌが、セスランの右手を掴んで自ら下へと導いてゆく。
「ここを……」
潤んだ瞳が縋りつく。
セスランの背に、嗜虐的な快感が駆け抜けた。
組み敷いて支配している。
セスランが欲しいと懇願させている。
そう思うと、さらに熱がたぎる。
導かれるまま差し入れた指は、入り口近くにあるはずのものを探る。
ここを傷つけるのは仕方ないが、できるだけ痛みのないようにと思いながら。
だが……。
それらしきものの感触はない。
入り口を守る、処女の証があるはずだが……。
くっ……と、喉が鳴った。
あまりにおかしくて。
エリーヌには、最初から聖女の資格などなかった。
それはそうだ。
竜后が聖使のために用意した偽物なのだから、資格を満たしている必要などない。
かえって都合が良い。
それなら手加減は要らないのだから。
半竜の自分と偽物の聖女。
なんとも似合いではないか。
竜后のお気持ち、ありがたくお受けしよう。
汚れた白濁にまみれて、刹那の歓びにセスランは浸った。
その夜、聖女選抜試験は事実上終了した。
ヒロイン以外との行為シーンが入ります。
NGの方は自衛をお願いいたします。
********
白虎の里から戻ったパウラは、深刻な顔をしていた。
もう一度里に行くと言う。
理由を聞けば、白虎の女の衰弱がひどく放っておけないからと答えた。
「白虎の女? 争いの原因になった、王族の女のことか? ゲルラが何かしたのか? それとも里の者がなにか」
咄嗟に母を思い出す。
セスランを身ごもって、その後追われるように里から出された母を。
ゲルラも白虎も互いを忌み嫌っている。
何かされたとしても、不思議ではない。
「した……といえばそうかもしれませんけれど」
パウラは曖昧に答えて言葉を切った。
「どちらかといえば、彼女の問題ですわね。ゲルラの騎士が心配でたまらない。会えないのがつらい。そんな感じに見えましたわ」
食事も水も摂らず、寝台に伏せたままなのだと言う。
大陸の東の端で、ゲルラの騎士と女は捕まった。
二人で他国へ逃げようとしていたらしい。
それを引き裂いたのは、互いの母国の者たちだった。
「彼女は口をきいてくれません。時々ゲルラの騎士の名を呼んで泣いているようですけれど、それ以外は誰が何を話しかけても、まるで聞こえていないように見えますわ」
自分がついていても仕方ないとはわかっているが、せめて何か口にできそうなものを持って行ってやりたいのだとパウラは言った。
「白虎と竜と、遠い昔には婚姻もあったと聞きますのに。見逃してさしあげることが、どうして難しいのでしょうね」
ほう……と重い溜息をついて、パウラは布袋を取り出した。
赤や緑のリンゴ、ヴェストリー産の高価なオレンジがいっぱいに入っている。
「では私も行こう」
そんなことになっているのなら、里は殺気だっていることだろう。
竜族の姫が一人で出向くなど、危険極まりない。
パウラに危害を加えるなら、里ごとすべて燃やし尽くしてくれる。
セスランが意気込んでいたところに。
「アルヴィド様に、もうお願いいたしました」
ごく自然に、さらりとパウラは口にした。
先ほど護衛を頼んだから、その流れでこれもお願いしたのだと。
『だって今日、パウラは誰と一緒にいるんですか? セスラン様を誘いませんでしたよね?』
エリーヌの声が脳裏を過る。
「そうか……」
どんな感情も出してはいないはずだ。
セスランは気力を集めて、無表情を保った。
アルヴィドを選ぶのか。
セスランでは、なぜダメなのか。
とりすがって聞きたい思いを飲み込んで。
『いずれセスラン様は、はっきり要らないって言われます』
本当の事だ。
そして本当のことは、いつも残酷だった。
「セスラン様、だからわたし、言ったじゃないですか」
パウラたちが出て行った後、セスランの側にはエリーヌがいた。
私室にあてられた天幕に勝手に入ってきた無礼を、この時のセスランは咎めなかった。
エリーヌの小さな手が、セスランの左の膝に添えられる。
「ね、セスラン様。パウラにはアルヴィド様しか見えてないんです。名門の竜同士だもん。気が合うんですよ」
エリーヌは優しげに寄り添いながら、セスランの耳に毒を注いでゆく。
「痛いですよね? 悔しいですよね? とっても悲しいですよね?」
エリーヌの指がセスランの頬にかかる。
優しくそっと撫でながら、大きな緑の瞳でじぃっとセスランを見つめる。
「セスラン様は何も悪くないんです。セスラン様はそのままで素敵なんです。わたしはそのままのセスラン様が、大好きなんですから」
毒薬が心にしみてゆく。
心の奥底にまで染み渡った時、セスランの思考は麻痺していた。
「セスラン様」
エリーヌがその柔らかい唇をセスランのそれに重ねた時。
セスランの理性は、完全に崩れ落ちた。
折り畳み式の簡素な寝台に、セスランはエリーヌを押し倒す。
理性のタガが外れたセスランを、エリーヌは嬉しそうに微笑んで誘った。
「着たままじゃ嫌です。もっともっと、セスラン様と近くなりたい」
脱がせてほしいと甘く強請る声に、セスランはエリーヌのブラウスのボタンに指をかける。
ぶつぶつと外すのももどかしくて、2つ目を外した後は引きちぎって前をはだけさせた。
赤いレースの下着が、案外大きい胸のふくらみをやけに煽情的に見せる。
ざらっとした手触りのレースは目が粗く、派手な見た目だけを重視した安物らしい。
そんなことが、まだ目につくのか。
崩れたはずの理性は、まだかけらほど残っているのだとセスランは苦笑した。
「何を笑っているんですか」
潤んだソーダ水の瞳が、続けろと促す。
細い指を伸ばして、セスランの白いトーガのピンを外した。
白絹がするりと滑り落ちる。
「脱いで……」
エリーヌがさらに促すと、白いシャツをセスランは乱暴に脱ぎ捨てる。
日々鍛錬を怠らない身体は、けして見苦しくはないはずだった。
うっとりと自分を見上げるエリーヌに、自尊心をくすぐられる。
「やっぱりキレイ……。うれしい。わたしのもの」
白く柔らかい腕がセスランの首に回される。
ぐいと引っ張り込まれて、柔らかな胸に抱き寄せられた。
「もう渡さないから。パウラには渡さない」
きらりと光るエリーヌの瞳が、セスランを捕らえてからめとる。
罠にかかった獣は、猟師に導かれるままその胸に顔をうずめた。
安物の香料が鼻につく。
しびれるように甘い人工香料が、セスランの思考をさらに深く眠らせた。
こんもりと優しく盛り上がった胸の頂に、セスランは歯を立てる。
直後、唇で挟みこみ、柔らかく締め付ける。
舌でねっとりと舐れば、嬌声があがる。
舌をそのまま遊ばせて、片方の頂を指で弄り続けた。
桃色に染まってゆく肌、ゆらゆらと揺れる腰。
エリーヌの赤い唇から、言葉にならない声が漏れ続けている。
やがて焦れきったエリーヌが、セスランの右手を掴んで自ら下へと導いてゆく。
「ここを……」
潤んだ瞳が縋りつく。
セスランの背に、嗜虐的な快感が駆け抜けた。
組み敷いて支配している。
セスランが欲しいと懇願させている。
そう思うと、さらに熱がたぎる。
導かれるまま差し入れた指は、入り口近くにあるはずのものを探る。
ここを傷つけるのは仕方ないが、できるだけ痛みのないようにと思いながら。
だが……。
それらしきものの感触はない。
入り口を守る、処女の証があるはずだが……。
くっ……と、喉が鳴った。
あまりにおかしくて。
エリーヌには、最初から聖女の資格などなかった。
それはそうだ。
竜后が聖使のために用意した偽物なのだから、資格を満たしている必要などない。
かえって都合が良い。
それなら手加減は要らないのだから。
半竜の自分と偽物の聖女。
なんとも似合いではないか。
竜后のお気持ち、ありがたくお受けしよう。
汚れた白濁にまみれて、刹那の歓びにセスランは浸った。
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