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第四章 相愛の竜
31.パウラ、大物の正体を知る
ヘルムダールの小娘?
人形?
何を勝手なことをと、猛然と腹が立った。
パウラに言わせれば、仕事もしないグータラ竜后。
おまえこそ「何を勝手なことを」だ。
何からなにまで腹が立つ。
前世の恨みも合わせれば、悪態のひとつやふたつじゃとても足りない。
くわっ。
擬音をつければそんな感じで、声の方向を睨みつける。
「気の強い。そんなところもあの女に似ていること」
ぼんやり靄のように空間が歪んで、にじみ出るようにじわじわと女が姿を現した。
銀色の髪、緑の瞳の美女。
ひと目でヘルムダールの血筋だとわかる。
「頭を下げぬか。無礼者」
抑えつけるような、厳しい口調だった。
けれどパウラは少しもひるまない。
「はりぼてのぐうたらに、下げる頭はありません」
「それは……わたくしの正体を知った上でのことか?」
「はりぼてに正体があるとも思えませんが? いったいどなたでしょう?」
銀色の髪をした女が、高い声で叫んだ。
「エリーヌ! どうせ側で見ているのであろう? 隠れてないで出てくるがいい」
がさりと木陰が揺れる。
なるほど銀の髪の女のいうとおりだ。
気まずそうにうつむいたエリーヌが姿を現した。
「何をしていた?」
「パウラとセスラン様が一緒に行ったから、心配で~」
「心配で~ではない! どうして二人で行かせた! おまえのとりえは、べたべた甘えて男を誑かすことくらいだろうに」
きめつけるように詰られて、エリーヌは憤然と言い返す。
「なによ! あんたこそ約束守んなさいよ~。ここへ来ればエルドラのヒロインにしてくれるって言ったじゃない。でも全然違うじゃない。みんなパウラばかり気にして。どうしてくれんのよ!」
「黙れ、無能が。本来ならここへ在ることも許されぬ下賤の身。わたくしの恩情で聖女候補にまでなったのを忘れたか。己の務めも果たせずに、文句ばかり言うでない」
なるほど……。
エリーヌを呼び寄せたのは、竜后だったのか。
見苦しく互いをののしり合う様を見て、パウラはげんなりしている。
「あの女を聖使の誰かと一緒にしてはならん。パウラはヘルムダール、あの女、わたくしの姑と同じ顔をしておる。パウラはわたくしに使い潰される人形だ。いい思いをさせるわけにはゆかぬ。そう言い聞かせておったであろうよ、エリーヌ。策まで与えたというのに、なぜこんなことになっておる。愚か者は異世界でもこちらでも同じか? 使えぬクズじゃの」
「なによ~。あんたの姑のことなんてしらないわよ。わたしにあたらないでほしいわ。わたしにかんけーないでしょ」
ヘルムダールだから?
聖使の誰かと一緒にしてはならない?
(どういうことなの?)
口ぎたない争いの中で、そこだけがパウラの耳に残る。
「それはよ、おまえがヘルムダールの直系姫、竜后になれる姫だからだ」
ヴィートの静かな声が頭上から降る。
驚いて顔を上げると、ヴィートのサファイヤの瞳があった。
とても厳しい色をして。
「よう、久しぶりだな。二代目のかみさんよ」
「そ……なたはっ!」
竜后の顔色が変わった。
信じられないものを見た、いや怯えているという方が近い。
「なぜここにいる? 山から出られぬはず……」
「出てんだろ? おまえの目は飾りもんか?」
白いシャツの腕を後頭部にやって、やれやれとヴィートは首を振った。
「つーかさ、おまえも一応竜后なんだろ? なら気づけよ。出られねーはずの俺が、どうして動けるか」
「どうして……だと?」
「バカか。おまえの亭主の力がねーからに決まってんだろが」
ヴィートの口の悪さには、相変わらずだ。
亭主ときたか。
そこらへんのオヤジを呼ぶみたいな言い方だ。
でもオヤジじゃない。
黄金竜オーディのことだ。
(黄金竜の力がない?)
すぐにはとても信じられないことだ。
けれどヴィートは白虎の始祖だ。
ならば初代黄金竜によって封印されたはず。
(封印がとけたということよね?)
それならヴィートの言うことが正しい?
「かみさんを好き勝手させよーと、自分の力を削ってんだろーなー。うるわしき夫の愛じゃねーかよ」
「な……っ! 何もしらぬくせに、知った風な口をきくでないわ!」
「あ~。な~。おまえら夫婦の内輪の話なんざ、きょーみもねーし、しりたくねーよ。けど礼はいっとくぜ? 俺を動けるようにしてくれたのは、おまえだからな」
竜后の緑の瞳が、大きく見開かれている。
なにを言われたのか、理解できないようだ。
「わかんねーか? おまえ、亭主を好きじゃねーんだもんな。かんけーねーよな、あいつが弱ろうと力がなくなろうとよ」
ヴィートの声は、ひどく意地悪く聞こえた。
サファイヤの瞳には威圧を込めた、侮りがある。
「パウラには手を出すんじゃねー。俺がもらってくぜ? あー、やめとけ。今のおまえじゃ俺にはかなわねー。俺は白虎の始祖だ。おまえとじゃ格が違う」
身体中から神の気を立ち上らせた竜后に、ヴィートは薄ら笑いを浮かべていた。
軽く右手をひらひらと振ってみせる。
「どーしてもやりてーっつんなら、つきあってやるけどよ?」
ヴィートの身体から白く輝く神の気が立ち上る。
ゆらゆらと揺れる白い粒子の輝きは、竜后のものよりはるかに強い。
「まあ、待ってろや。じきにてめーのバカさ加減を思い知る。そんときまで、少しはわが身を省みるんだな」
ヴィートの腕がパウラを抱き寄せる。
麝香の甘い香りが鼻先をかすめた瞬間、白い神の気がパウラを包んで辺りの景色を一気に消した。
(え?)
この感覚には憶えがあった。
前世の終わり、もうこれでなにもかも済んだと思った瞬間のことだ。
(あの時と同じだわ)
そう気づいたら、ほっとした。
多分悪いことにはならない。
そしてそのとおりになる。
「ついたぜ?」
ヴィートの声で目を開ける。
眩しいくらいに白い、どっしりと立派な建物の中だった。
「パウラ!」
先に送られてきたらしいセスランが、血相を変えて駆け寄って来る。
ぎゅうっと抱きしめられた。
「なにもされてはいないな?」
「はい。竜后はヴィートが追い払ってくれましたから」
「そうか」
なぜかセスランの声が暗い。
翡翠の瞳はじいっと、ヴィートに向けられているようだ。
「んな顔すんなよ。こえーな」
少しも怖いなどと思っていないことが、その軽い口調でわかる。
「しょーがねーだろ? 今のおまえじゃ、あのヤベー女には勝てないんだからよ。わかってんだろ?」
「は……い」
渋々、ほんとうに渋々がありありとわかるセスランの返事。
「なら、やることはわかってんな? さっさと済ませろ。それでおまえは黄金竜を凌ぐ竜になれんだろ?」
知ってんだろと、ヴィートは笑って続ける。
「ヘルムダールの、それも聖紋を持つ姫に愛された竜が、真の黄金竜だ。つまりよ、今の黄金竜は偽物だな。かみさんに愛されちゃいねーからな」
ヘルムダールの姫パウラに愛された竜が次の黄金竜になる。
そんなことは初めて聞いた。
ヘルムダールでも聞いたことはない。
信じられない思いでセスランを見上げると、複雑な微笑を浮かべて頷いてくれた。
目の前の景色が変わる。
緞帳が上げられたように急に開けた視界に、水晶の床と天井が映る。
広間と言って良いその部屋の奥に、大きな天蓋付きの寝台がどんと据えられていた。
「あのヤベー女はいろいろやり過ぎた。そろそろ退場してもらわねーとな」
ヴィートの意見に、パウラは大賛成だ。
本来の竜后の仕事を放り出して、好き放題やっている女だ。
歴代のヘルムダールの女子を使い潰しただけでも許しがたいのに、パウラやエリーヌの人生もおもちゃにしてくれた。
(ほんと、さっさと退場させないと)
「ご厚情、まことにありがたく……」
セスランの口上を、あーと声にだしてヴィートは遮る。
「これは俺のためでもあるんだよ。セスランとパウラが次代の竜を束ねてくれたら、白虎の暮らしもマシになるだろ? その思惑もあるんだからよ」
さっさと済ませてしまえと、笑って姿を消した。
水晶の間に残されたセスランとパウラは、頭を垂れた姿勢のまま固まっている。
少なくともパウラはそうだった。
「済ませてしまえ」と言われて、「はい、わかりました」とできるものか。
やはり始祖の感覚は、人とは違う。
「済ませるか……」
けれどセスランは違うようで。
こぼした言葉には、しっとりとした情感が込められている。
「始祖様の思惑がどうであれ、この瞬間を与えてくれた。何を引き換えにしてもかまわぬ」
おそるおそる顔を上げると、跪いた姿勢はそのまま顔だけをこちらに向けたセスランの、翡翠の瞳に絡めとられる。
息をすることを、パウラは忘れた。
レースの新しい下着のことも頭から吹っ飛んで、ただじっとパウラをみつめる翡翠の瞳から目が離せない。
「我が本懐を遂げさせてもらう」
その声を、パウラはセスランの腕の中で聞いた。
これまでにない強い力で抱きしめてくる腕は、震えも迷いもない。
ふわりと、パウラの身体を抱き上げる。
僅かな振動で、セスランが移動しているのだとわかった。
大切にそっと下ろされたのは、真っ白いシーツの上で。
見開いたパウラの目の前には、優しさと愛しさと焦りとがないまぜになった翡翠の瞳があった。
人形?
何を勝手なことをと、猛然と腹が立った。
パウラに言わせれば、仕事もしないグータラ竜后。
おまえこそ「何を勝手なことを」だ。
何からなにまで腹が立つ。
前世の恨みも合わせれば、悪態のひとつやふたつじゃとても足りない。
くわっ。
擬音をつければそんな感じで、声の方向を睨みつける。
「気の強い。そんなところもあの女に似ていること」
ぼんやり靄のように空間が歪んで、にじみ出るようにじわじわと女が姿を現した。
銀色の髪、緑の瞳の美女。
ひと目でヘルムダールの血筋だとわかる。
「頭を下げぬか。無礼者」
抑えつけるような、厳しい口調だった。
けれどパウラは少しもひるまない。
「はりぼてのぐうたらに、下げる頭はありません」
「それは……わたくしの正体を知った上でのことか?」
「はりぼてに正体があるとも思えませんが? いったいどなたでしょう?」
銀色の髪をした女が、高い声で叫んだ。
「エリーヌ! どうせ側で見ているのであろう? 隠れてないで出てくるがいい」
がさりと木陰が揺れる。
なるほど銀の髪の女のいうとおりだ。
気まずそうにうつむいたエリーヌが姿を現した。
「何をしていた?」
「パウラとセスラン様が一緒に行ったから、心配で~」
「心配で~ではない! どうして二人で行かせた! おまえのとりえは、べたべた甘えて男を誑かすことくらいだろうに」
きめつけるように詰られて、エリーヌは憤然と言い返す。
「なによ! あんたこそ約束守んなさいよ~。ここへ来ればエルドラのヒロインにしてくれるって言ったじゃない。でも全然違うじゃない。みんなパウラばかり気にして。どうしてくれんのよ!」
「黙れ、無能が。本来ならここへ在ることも許されぬ下賤の身。わたくしの恩情で聖女候補にまでなったのを忘れたか。己の務めも果たせずに、文句ばかり言うでない」
なるほど……。
エリーヌを呼び寄せたのは、竜后だったのか。
見苦しく互いをののしり合う様を見て、パウラはげんなりしている。
「あの女を聖使の誰かと一緒にしてはならん。パウラはヘルムダール、あの女、わたくしの姑と同じ顔をしておる。パウラはわたくしに使い潰される人形だ。いい思いをさせるわけにはゆかぬ。そう言い聞かせておったであろうよ、エリーヌ。策まで与えたというのに、なぜこんなことになっておる。愚か者は異世界でもこちらでも同じか? 使えぬクズじゃの」
「なによ~。あんたの姑のことなんてしらないわよ。わたしにあたらないでほしいわ。わたしにかんけーないでしょ」
ヘルムダールだから?
聖使の誰かと一緒にしてはならない?
(どういうことなの?)
口ぎたない争いの中で、そこだけがパウラの耳に残る。
「それはよ、おまえがヘルムダールの直系姫、竜后になれる姫だからだ」
ヴィートの静かな声が頭上から降る。
驚いて顔を上げると、ヴィートのサファイヤの瞳があった。
とても厳しい色をして。
「よう、久しぶりだな。二代目のかみさんよ」
「そ……なたはっ!」
竜后の顔色が変わった。
信じられないものを見た、いや怯えているという方が近い。
「なぜここにいる? 山から出られぬはず……」
「出てんだろ? おまえの目は飾りもんか?」
白いシャツの腕を後頭部にやって、やれやれとヴィートは首を振った。
「つーかさ、おまえも一応竜后なんだろ? なら気づけよ。出られねーはずの俺が、どうして動けるか」
「どうして……だと?」
「バカか。おまえの亭主の力がねーからに決まってんだろが」
ヴィートの口の悪さには、相変わらずだ。
亭主ときたか。
そこらへんのオヤジを呼ぶみたいな言い方だ。
でもオヤジじゃない。
黄金竜オーディのことだ。
(黄金竜の力がない?)
すぐにはとても信じられないことだ。
けれどヴィートは白虎の始祖だ。
ならば初代黄金竜によって封印されたはず。
(封印がとけたということよね?)
それならヴィートの言うことが正しい?
「かみさんを好き勝手させよーと、自分の力を削ってんだろーなー。うるわしき夫の愛じゃねーかよ」
「な……っ! 何もしらぬくせに、知った風な口をきくでないわ!」
「あ~。な~。おまえら夫婦の内輪の話なんざ、きょーみもねーし、しりたくねーよ。けど礼はいっとくぜ? 俺を動けるようにしてくれたのは、おまえだからな」
竜后の緑の瞳が、大きく見開かれている。
なにを言われたのか、理解できないようだ。
「わかんねーか? おまえ、亭主を好きじゃねーんだもんな。かんけーねーよな、あいつが弱ろうと力がなくなろうとよ」
ヴィートの声は、ひどく意地悪く聞こえた。
サファイヤの瞳には威圧を込めた、侮りがある。
「パウラには手を出すんじゃねー。俺がもらってくぜ? あー、やめとけ。今のおまえじゃ俺にはかなわねー。俺は白虎の始祖だ。おまえとじゃ格が違う」
身体中から神の気を立ち上らせた竜后に、ヴィートは薄ら笑いを浮かべていた。
軽く右手をひらひらと振ってみせる。
「どーしてもやりてーっつんなら、つきあってやるけどよ?」
ヴィートの身体から白く輝く神の気が立ち上る。
ゆらゆらと揺れる白い粒子の輝きは、竜后のものよりはるかに強い。
「まあ、待ってろや。じきにてめーのバカさ加減を思い知る。そんときまで、少しはわが身を省みるんだな」
ヴィートの腕がパウラを抱き寄せる。
麝香の甘い香りが鼻先をかすめた瞬間、白い神の気がパウラを包んで辺りの景色を一気に消した。
(え?)
この感覚には憶えがあった。
前世の終わり、もうこれでなにもかも済んだと思った瞬間のことだ。
(あの時と同じだわ)
そう気づいたら、ほっとした。
多分悪いことにはならない。
そしてそのとおりになる。
「ついたぜ?」
ヴィートの声で目を開ける。
眩しいくらいに白い、どっしりと立派な建物の中だった。
「パウラ!」
先に送られてきたらしいセスランが、血相を変えて駆け寄って来る。
ぎゅうっと抱きしめられた。
「なにもされてはいないな?」
「はい。竜后はヴィートが追い払ってくれましたから」
「そうか」
なぜかセスランの声が暗い。
翡翠の瞳はじいっと、ヴィートに向けられているようだ。
「んな顔すんなよ。こえーな」
少しも怖いなどと思っていないことが、その軽い口調でわかる。
「しょーがねーだろ? 今のおまえじゃ、あのヤベー女には勝てないんだからよ。わかってんだろ?」
「は……い」
渋々、ほんとうに渋々がありありとわかるセスランの返事。
「なら、やることはわかってんな? さっさと済ませろ。それでおまえは黄金竜を凌ぐ竜になれんだろ?」
知ってんだろと、ヴィートは笑って続ける。
「ヘルムダールの、それも聖紋を持つ姫に愛された竜が、真の黄金竜だ。つまりよ、今の黄金竜は偽物だな。かみさんに愛されちゃいねーからな」
ヘルムダールの姫パウラに愛された竜が次の黄金竜になる。
そんなことは初めて聞いた。
ヘルムダールでも聞いたことはない。
信じられない思いでセスランを見上げると、複雑な微笑を浮かべて頷いてくれた。
目の前の景色が変わる。
緞帳が上げられたように急に開けた視界に、水晶の床と天井が映る。
広間と言って良いその部屋の奥に、大きな天蓋付きの寝台がどんと据えられていた。
「あのヤベー女はいろいろやり過ぎた。そろそろ退場してもらわねーとな」
ヴィートの意見に、パウラは大賛成だ。
本来の竜后の仕事を放り出して、好き放題やっている女だ。
歴代のヘルムダールの女子を使い潰しただけでも許しがたいのに、パウラやエリーヌの人生もおもちゃにしてくれた。
(ほんと、さっさと退場させないと)
「ご厚情、まことにありがたく……」
セスランの口上を、あーと声にだしてヴィートは遮る。
「これは俺のためでもあるんだよ。セスランとパウラが次代の竜を束ねてくれたら、白虎の暮らしもマシになるだろ? その思惑もあるんだからよ」
さっさと済ませてしまえと、笑って姿を消した。
水晶の間に残されたセスランとパウラは、頭を垂れた姿勢のまま固まっている。
少なくともパウラはそうだった。
「済ませてしまえ」と言われて、「はい、わかりました」とできるものか。
やはり始祖の感覚は、人とは違う。
「済ませるか……」
けれどセスランは違うようで。
こぼした言葉には、しっとりとした情感が込められている。
「始祖様の思惑がどうであれ、この瞬間を与えてくれた。何を引き換えにしてもかまわぬ」
おそるおそる顔を上げると、跪いた姿勢はそのまま顔だけをこちらに向けたセスランの、翡翠の瞳に絡めとられる。
息をすることを、パウラは忘れた。
レースの新しい下着のことも頭から吹っ飛んで、ただじっとパウラをみつめる翡翠の瞳から目が離せない。
「我が本懐を遂げさせてもらう」
その声を、パウラはセスランの腕の中で聞いた。
これまでにない強い力で抱きしめてくる腕は、震えも迷いもない。
ふわりと、パウラの身体を抱き上げる。
僅かな振動で、セスランが移動しているのだとわかった。
大切にそっと下ろされたのは、真っ白いシーツの上で。
見開いたパウラの目の前には、優しさと愛しさと焦りとがないまぜになった翡翠の瞳があった。
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