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7-19、カメ、戻る
エターナニル魔法学園特殊クラス
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月だけが光源となっている校庭。プレハブ小屋が壊れ、中に仕舞われていた石灰が濛々と辺りに充満していた。煙の中から一つの影が飛び出してくる。
「けほ、石灰はきつい、かな」
大蛇を蹴り飛ばした先に小さな体育倉庫があり、昨日届いた石灰で埋まっていた。その全てが、大蛇が衝突した衝撃で拡散してしまった。ハンカチで顔の周りの粉を払いながら、リトアは大蛇の心配をしていた。結構いい形で顎に入ってしまった蹴り。昏睡状態になってしまったら・・・・・・それはそれで対処の使用があるのだが、その後が色々と面倒なのだ。頭を冷やしたバジリスクが自ら魔界に帰っていってもらう。これがベストである。ベターは幻獣ギルドに連れて帰ること。
「バジリスク、大丈夫?冷静になったかな?」
蹴られた衝撃でもっと熱くなった可能性が高い。風の魔石の魔力を使って石灰の雲を吹き飛ばそうと集中した時だった。
「妨害せよ!遮るウォール!!」
リトアの目の前に巨大な土の壁が立ちはだかる。唱えた風魔法もそれにぶち当たり、四散した。
「な?!」
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「リトア、無事か?」
後ろから駆け寄ってきた三人の姿を見てリトアはポーチから手を遠ざけた。
「レイカちゃん!?二人ともご迷惑を」
「べ、別に迷惑なんか・・・・・・」
「貴様が気にすることではない」
あ、この二人リトア先輩のこと好きだ。この直感にレイカは自信があった。元々、人間関係を見抜くのは得意である。なので、実はイスカのレイカ宛ての感情にもとっくに気づいていた。それが、ちょっと微妙な感じなのも。
「石灰か。よし、面白い物を見せてやろう」
生徒会長が魔導歌を唱え始める。歌からするに火を出す魔法のようだ。
「ファイヤ!」
「ダメ―!!」
生徒会長の手の平の上に小さな火が生まれたのは一瞬だった。リトアの叫びと共に何かが広がっていく感触がした。生徒会長の炎が消え、番長が作っていた壁も打ち消された。
「な、魔法が消えただと!?」
「な、な、そんなのありかよ!?」
「はわ、うちのも消されるん」
ポンという音と共に小学生まで戻ってしまった。残留魔力は減っていないので体格を形成していた魔力を消滅されたのだろう。
「おーおー、小せぇ小せぇ」
「うぁ~、さらに縮む~どす~」
頭を乱暴に撫でられ、レイカはぷぅっと頬を膨らました。誰がどう見ても成人している人には見えない。
「リトア、我と来い」
「お断りします」
「来いと言っている!」
「丁重に拒否いたします」
「何で即決で断るんだよ、バカァ」
生徒会長、自分を騙し続けるのはきついのではないだろうか。レイカの思った通りあれもこれも全て演技だった。今の言葉は本心からの言葉なのだろう。
「ごめんなさい。でも、僕はどちらに所属するわけにもいかないのです」
「明日だけじゃねーか。そんな硬く考えなくったっていいんだぜ」
「合う方に入る。それだけだ」
「だから僕はグレーにしたんだと思うよ」
リトア先輩、そこは自信持ちましょう・・・・・・。
「リトア~、こっちは決着つきましたよ」
「・・・無理やりだが」
校壁から飛び降りてきたのはカトレアとゴックだった。さっきの大砲がそうだよ、と言われてレイカは首を傾げる。大蛇が倒れた時に外からしていたよとリトアが教えてくれた。全校生徒を眠らせた麻酔弾のことだろう。まだ夜は肌寒い。風邪ひかないか心配である。
「ったく、あんな形で決着するなんて聞いてないってのwww」
「なんか、納得いかない・・・」
その後からカズと会計長が下りてきた。二人とも微妙な表情をしている。そりゃそうだろう。第三者の介入に武器使用。怒りたいが、それどころではない、と言ったところだろう。
「バジリスクさん、頭冷えましたか?」
シャゲェェェェェエエエエーーーーー!
「はわわ、何か怒ってはる?」
「「「「いきなり蹴飛ばされれば誰だって怒る!」」」」
「住処も爆破したからかな。ちょっとやり過ぎたかも」
ポーチから四つの魔石を取り出すとリトアはそれを四方に投げた。暴れる大蛇を取り囲むと、平面化し、一枚のカードとなった。
「また、想定外の魔法を使いよって」
「いいな、それ」
興味津々に覗き込む面々に、
「そうでもないよ」
とリトアは微笑み返した。足元にあるカードに魔法をかける。重力制御魔法だ。質量保存の法則で重さが変化していないのだ。さすがの幻獣ハンターも片手で大蛇を抱える腕力はない。リトアのような華奢な腕ではなおさらである。
「それどうすんの?」
「処分ならこっちで引き受けよう」
「魔界に返す、かな。ギルドの処遇次第になるけど、大した被害は出ていないから大丈夫だと思うよ」
「何だ。貴様がするのではないのか」
「次元転送は無理だよ。神子さんに頼むの」
エターナニルの導きの神子と言えばリング先生、守りの神子と言えばリルク先生となる。これは魔法界隈で有名な話だ。学校に持って帰った方が確実に魔界返ししてくれると思ったが、部外者がいるこの場でレイカは言いだせなかった。帰り道で忘れてなければ言おう。
「お前ならできそうな気がするぜ」
「カズ、無茶言わないでほしいかな」
「この残場はどうするか、だが」
「皆を起こして片付けさせるか」
「いや、明日のことを考えれば真実を知る者は少ない方がいい」
「なら、話は簡単だ」
ハルニーガの言いたいことは全員分かった。わかった途端、やる気がなくなった。
「おぃ、リトア。せめてこの壁くらい何とかならんのか」
二階まであるポッカリと開いた穴を生徒会長が指差す。
「う~ん、何とかなる・・・かな・・・・・」
「はっきりしねーな」
「できることはできるけど・・・えっと・・・・うん、何とかするよ」
そう言って、リトアはポーチから大き目の魔石を取り出した。先程のとは違って無色に近いそれは月明かりを反射してキラキラと光っている。
「無属性の魔石か」
「へー、そんなんもあんだな」
「・・・・二人ともあっち行っててほしいかな」
「何を今更」
「明日大人数の前で歌うんだろ」
「それもそうだね」
大きく息を吸い込んで、一泊置いてリトアは歌い出した。ボーイズソプラノには届かないが、それでも澄んだ声が辺りに響く。作業をしていたカズと会計長も手を止めた。
しばらくして変化が起こったのは周りに転がっていた石だった。振動で震え、個々で共鳴し合い、小刻みに震える。ふわりと持ち上がると、次々と壁を形成していき、リトアが歌い終わって倒れた頃には校舎の壁という壁から傷がすっかりなくなっていた。
「お疲れさん」
「よくぞ頑張ったな」
「何が起こらはったの?」
「「それは分からん」」
「リトアが壁を直してくれた。その事実だけで十分だ」
「そうだな」
2人は納得しているようだが、一魔法使いとして勉強している身としては、今目の前で起こった出来事はそうかで済まされるものではない。おそらくだが、リトアは校舎事態の時間を巻き戻したのだ。新築だった頃まで。どう考えたって普通じゃない。それともレイカにとっての常識外でこっちでは当たり前のことなのだろうか。
「お兄ちゃん大丈夫どすか?」
「気絶しただけだ。問題ない」
「問題あったら、こっちが困るっての」
「メインボーカルやしな~」
レイカのちょっとした失言は四人からの取り調べという大惨事(笑)に発展した。2時間に及ぶ取り調べの結果、レイカは無罪放免となった。目覚めたリトアが自分が話したというオチなのだが。
「ほら、これやるから。泣き止め。友達とでも楽しんで来い」
やり過ぎたと思ったのかハルニーガからチケットを貰ったレイカだった。これでレイカは3枚のチケットを持っていることとなる。そしてホテルに戻り、イスカに電話を掛けた。
『よかった。無事なのね』
「はい、平気どす」
先程まで泣きじゃくっていた人の言葉ではない。
「・・・で、先輩からチケット貰ったんどす。イスカはんも一緒に行こ」
『うん、・・・・って言いたいんだけど。あたしまだスタートウにいるのよね』
「学園やなかったん?」
『何らかんらあって結局行っちゃった』
「なら、こっち戻ってくる時座標変えてもらえないやろか」
『ナイスアイデアね。チヤさん優しいし、頼んでみるわ』
「せやな、チヤさん優しいし。学校の裏手なら人目あらへんからそこで待ち合わせしよ」
『学校裏手ね。先輩どうしてる?』
「会って見てのお楽しみどす」
『ふーん、楽しみにしておくわ』
女性だと思っていた先輩から男性発言されたとは言えない。それも明日までだ。あの露出度の高い衣装ではさすがのリトア先輩でも隠しきらないだろう。レイカは今でもリトアが女性だと信じて疑っていなかった。
「あと、4人。誰呼びましょ」
と、言ってはみたものの、こちらにいるレイカの知り合いなど片手に数えるくらいしかない。不便なスライド式に振り回されながらレイカは彼の番号を選択した。
『ヨ、元気ニヤッテンカ?』
「元気どすぇ。ロイズはんはどうどすか?ロンはんも」
『元気ダゼ。ドウシタ?任務デ何カアッタカ?』
「文化祭のチケットを貰ったんどす。一緒にどうどすか?」
『気晴ラシクライニハナルカ。行クゼ。ドコデヤルンダ?』
「マガツ学校どす」
『首都カ。瞬間移動ガナイト無理、アッテモ早クテ一週間・・・・・・イヤ、何トカシテミヨウ』
「何とかならはるんどすか?」
『マァ、ろんイルシ。ジャア、明日ナ』
通話切れの音に合わせてクエスチョンマークがレイカの頭上に点滅する。ロン、じゃなくてサードはこっちにいる。ひょっとしてロンとサードは別人なのだろうか。あそこまでよく似ているのだから一卵性双生児かもしれない。
「ロンはん、何も語ってくれんし」
ベッドに身を投げ出し、携帯を充電器に繫ぐ。ロイズのことだからどうにかして来るのだろう。ロンだって話題に出せばその内答えてくれるかもしれない。
「・・・またリトア先輩の歌が生で聞ける」
あの一件以来、レイカはすっかりリトアの歌声の虜となっていた。MDにもイスカに頼んで録音してもらった。イスカもファンだと言っていたので文化祭で聞いたら驚くだろう。何にしても、明日が楽しみである。
続く
「けほ、石灰はきつい、かな」
大蛇を蹴り飛ばした先に小さな体育倉庫があり、昨日届いた石灰で埋まっていた。その全てが、大蛇が衝突した衝撃で拡散してしまった。ハンカチで顔の周りの粉を払いながら、リトアは大蛇の心配をしていた。結構いい形で顎に入ってしまった蹴り。昏睡状態になってしまったら・・・・・・それはそれで対処の使用があるのだが、その後が色々と面倒なのだ。頭を冷やしたバジリスクが自ら魔界に帰っていってもらう。これがベストである。ベターは幻獣ギルドに連れて帰ること。
「バジリスク、大丈夫?冷静になったかな?」
蹴られた衝撃でもっと熱くなった可能性が高い。風の魔石の魔力を使って石灰の雲を吹き飛ばそうと集中した時だった。
「妨害せよ!遮るウォール!!」
リトアの目の前に巨大な土の壁が立ちはだかる。唱えた風魔法もそれにぶち当たり、四散した。
「な?!」
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「リトア、無事か?」
後ろから駆け寄ってきた三人の姿を見てリトアはポーチから手を遠ざけた。
「レイカちゃん!?二人ともご迷惑を」
「べ、別に迷惑なんか・・・・・・」
「貴様が気にすることではない」
あ、この二人リトア先輩のこと好きだ。この直感にレイカは自信があった。元々、人間関係を見抜くのは得意である。なので、実はイスカのレイカ宛ての感情にもとっくに気づいていた。それが、ちょっと微妙な感じなのも。
「石灰か。よし、面白い物を見せてやろう」
生徒会長が魔導歌を唱え始める。歌からするに火を出す魔法のようだ。
「ファイヤ!」
「ダメ―!!」
生徒会長の手の平の上に小さな火が生まれたのは一瞬だった。リトアの叫びと共に何かが広がっていく感触がした。生徒会長の炎が消え、番長が作っていた壁も打ち消された。
「な、魔法が消えただと!?」
「な、な、そんなのありかよ!?」
「はわ、うちのも消されるん」
ポンという音と共に小学生まで戻ってしまった。残留魔力は減っていないので体格を形成していた魔力を消滅されたのだろう。
「おーおー、小せぇ小せぇ」
「うぁ~、さらに縮む~どす~」
頭を乱暴に撫でられ、レイカはぷぅっと頬を膨らました。誰がどう見ても成人している人には見えない。
「リトア、我と来い」
「お断りします」
「来いと言っている!」
「丁重に拒否いたします」
「何で即決で断るんだよ、バカァ」
生徒会長、自分を騙し続けるのはきついのではないだろうか。レイカの思った通りあれもこれも全て演技だった。今の言葉は本心からの言葉なのだろう。
「ごめんなさい。でも、僕はどちらに所属するわけにもいかないのです」
「明日だけじゃねーか。そんな硬く考えなくったっていいんだぜ」
「合う方に入る。それだけだ」
「だから僕はグレーにしたんだと思うよ」
リトア先輩、そこは自信持ちましょう・・・・・・。
「リトア~、こっちは決着つきましたよ」
「・・・無理やりだが」
校壁から飛び降りてきたのはカトレアとゴックだった。さっきの大砲がそうだよ、と言われてレイカは首を傾げる。大蛇が倒れた時に外からしていたよとリトアが教えてくれた。全校生徒を眠らせた麻酔弾のことだろう。まだ夜は肌寒い。風邪ひかないか心配である。
「ったく、あんな形で決着するなんて聞いてないってのwww」
「なんか、納得いかない・・・」
その後からカズと会計長が下りてきた。二人とも微妙な表情をしている。そりゃそうだろう。第三者の介入に武器使用。怒りたいが、それどころではない、と言ったところだろう。
「バジリスクさん、頭冷えましたか?」
シャゲェェェェェエエエエーーーーー!
「はわわ、何か怒ってはる?」
「「「「いきなり蹴飛ばされれば誰だって怒る!」」」」
「住処も爆破したからかな。ちょっとやり過ぎたかも」
ポーチから四つの魔石を取り出すとリトアはそれを四方に投げた。暴れる大蛇を取り囲むと、平面化し、一枚のカードとなった。
「また、想定外の魔法を使いよって」
「いいな、それ」
興味津々に覗き込む面々に、
「そうでもないよ」
とリトアは微笑み返した。足元にあるカードに魔法をかける。重力制御魔法だ。質量保存の法則で重さが変化していないのだ。さすがの幻獣ハンターも片手で大蛇を抱える腕力はない。リトアのような華奢な腕ではなおさらである。
「それどうすんの?」
「処分ならこっちで引き受けよう」
「魔界に返す、かな。ギルドの処遇次第になるけど、大した被害は出ていないから大丈夫だと思うよ」
「何だ。貴様がするのではないのか」
「次元転送は無理だよ。神子さんに頼むの」
エターナニルの導きの神子と言えばリング先生、守りの神子と言えばリルク先生となる。これは魔法界隈で有名な話だ。学校に持って帰った方が確実に魔界返ししてくれると思ったが、部外者がいるこの場でレイカは言いだせなかった。帰り道で忘れてなければ言おう。
「お前ならできそうな気がするぜ」
「カズ、無茶言わないでほしいかな」
「この残場はどうするか、だが」
「皆を起こして片付けさせるか」
「いや、明日のことを考えれば真実を知る者は少ない方がいい」
「なら、話は簡単だ」
ハルニーガの言いたいことは全員分かった。わかった途端、やる気がなくなった。
「おぃ、リトア。せめてこの壁くらい何とかならんのか」
二階まであるポッカリと開いた穴を生徒会長が指差す。
「う~ん、何とかなる・・・かな・・・・・」
「はっきりしねーな」
「できることはできるけど・・・えっと・・・・うん、何とかするよ」
そう言って、リトアはポーチから大き目の魔石を取り出した。先程のとは違って無色に近いそれは月明かりを反射してキラキラと光っている。
「無属性の魔石か」
「へー、そんなんもあんだな」
「・・・・二人ともあっち行っててほしいかな」
「何を今更」
「明日大人数の前で歌うんだろ」
「それもそうだね」
大きく息を吸い込んで、一泊置いてリトアは歌い出した。ボーイズソプラノには届かないが、それでも澄んだ声が辺りに響く。作業をしていたカズと会計長も手を止めた。
しばらくして変化が起こったのは周りに転がっていた石だった。振動で震え、個々で共鳴し合い、小刻みに震える。ふわりと持ち上がると、次々と壁を形成していき、リトアが歌い終わって倒れた頃には校舎の壁という壁から傷がすっかりなくなっていた。
「お疲れさん」
「よくぞ頑張ったな」
「何が起こらはったの?」
「「それは分からん」」
「リトアが壁を直してくれた。その事実だけで十分だ」
「そうだな」
2人は納得しているようだが、一魔法使いとして勉強している身としては、今目の前で起こった出来事はそうかで済まされるものではない。おそらくだが、リトアは校舎事態の時間を巻き戻したのだ。新築だった頃まで。どう考えたって普通じゃない。それともレイカにとっての常識外でこっちでは当たり前のことなのだろうか。
「お兄ちゃん大丈夫どすか?」
「気絶しただけだ。問題ない」
「問題あったら、こっちが困るっての」
「メインボーカルやしな~」
レイカのちょっとした失言は四人からの取り調べという大惨事(笑)に発展した。2時間に及ぶ取り調べの結果、レイカは無罪放免となった。目覚めたリトアが自分が話したというオチなのだが。
「ほら、これやるから。泣き止め。友達とでも楽しんで来い」
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「はい、平気どす」
先程まで泣きじゃくっていた人の言葉ではない。
「・・・で、先輩からチケット貰ったんどす。イスカはんも一緒に行こ」
『うん、・・・・って言いたいんだけど。あたしまだスタートウにいるのよね』
「学園やなかったん?」
『何らかんらあって結局行っちゃった』
「なら、こっち戻ってくる時座標変えてもらえないやろか」
『ナイスアイデアね。チヤさん優しいし、頼んでみるわ』
「せやな、チヤさん優しいし。学校の裏手なら人目あらへんからそこで待ち合わせしよ」
『学校裏手ね。先輩どうしてる?』
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女性だと思っていた先輩から男性発言されたとは言えない。それも明日までだ。あの露出度の高い衣装ではさすがのリトア先輩でも隠しきらないだろう。レイカは今でもリトアが女性だと信じて疑っていなかった。
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と、言ってはみたものの、こちらにいるレイカの知り合いなど片手に数えるくらいしかない。不便なスライド式に振り回されながらレイカは彼の番号を選択した。
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「マガツ学校どす」
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通話切れの音に合わせてクエスチョンマークがレイカの頭上に点滅する。ロン、じゃなくてサードはこっちにいる。ひょっとしてロンとサードは別人なのだろうか。あそこまでよく似ているのだから一卵性双生児かもしれない。
「ロンはん、何も語ってくれんし」
ベッドに身を投げ出し、携帯を充電器に繫ぐ。ロイズのことだからどうにかして来るのだろう。ロンだって話題に出せばその内答えてくれるかもしれない。
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あの一件以来、レイカはすっかりリトアの歌声の虜となっていた。MDにもイスカに頼んで録音してもらった。イスカもファンだと言っていたので文化祭で聞いたら驚くだろう。何にしても、明日が楽しみである。
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