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三、調査は進行して・・・いない!?
3ー14、文句一つ言えない。
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潮風が鬚をくすぐる感触を感じつつ、タイラはひたすら走った。目的はただ一つ、小龍そっくりの井上 久美子が住んでいるマンションだ。前に立つとそこがどれだけ大きく立派な建物かがわかる。そして、物凄く高そうだ。
「本当に豪華なところでござるな」
自分の家の何倍くらいするのだろうか。三ヶ月の部屋代で家の一軒くらい軽く建ちそうだ。人型に戻ろうとして止めた。侵入するなら獣型の方が都合がいい。なんせ、不法侵入が成り立たないのだから。その代償として暴力を受けて死に掛けても文句一つ言えない。尻尾を振り、風を捕まえると一気に舞い上がる。彼女の部屋は十六階で、上から三階目だった。ベランダに下りると窓から中を覗いたが、カーテンがかかっていて中の様子は見えない。
「やっぱり不法侵入するしかないでござるか」
ヒョイッと尻尾を振り、風に鍵を開けさせる。どうやらタイラにとって魔法は人型よりも獣型のほうが使い易いらしい。前足でガラス戸を開けて部屋に入る。
「ず、随分と殺風景な部屋・・・・・・というか見事に何もないでござるな」
部屋には小さな木の机に置かれたノートパソコン以外に何もない部屋だった。テレビも本棚もソファーもカーペットもベッドすらない。豪華な空き部屋がそこにあった。
「本当にここに住んでいるのでござるか」
人の生活跡がどこにもない。本当に井上 久美子はここに住んでいるのだろうか。オープンキッチンの上に飛び乗る。どの棚にも皿も鍋もフライパンもまな板も包丁もない。よく見れば、備え付けのICコンロがあるだけで他に何もない、冷蔵庫すらない。彼女はどうやって生活しているのだろうか。
事実は意外なところで判明した。
「この匂い、確かに井上?でも、サードの香りとも似ていたような気が」
それはクローゼットにかけられていた二組の制服だった。綺麗に洗濯されてきちんとアイロンかけされた制服からよく目的の匂いを嗅ぎ分けた。猫のくせに。いや、猫だからこそできるのだ。本当は犬の方がいいのだが。奥からは教科書の入った革鞄と明日必要ない教科書を入れた小箱を発見した。裏ページに書かれた名前も確認した。
「ここに住んでいることは確かだが、何でここまでものがないでござるか?冷蔵庫無しで食生活はどうなっているでござる?ん?」
「私達の食生活よりも自分の身の心配をすべきだと思うね」
目標物を見つけると少しの隙が生まれる。生まれた小さな隙の間にタイラは後ろに現れた者に首根っこを摑まれてしまった。そのままどこかに連れて行かれるかと思ったらノートパソコンの乗った小さなテーブルの上に乗せられた。
「昨晩以来だな、名前はたしかタイラだったか?」
「シリュウ隊員!何故ここに?!」
続く
「本当に豪華なところでござるな」
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「やっぱり不法侵入するしかないでござるか」
ヒョイッと尻尾を振り、風に鍵を開けさせる。どうやらタイラにとって魔法は人型よりも獣型のほうが使い易いらしい。前足でガラス戸を開けて部屋に入る。
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