っておい

シロ

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一、Boy(?) Meets Girl(?)

1ー4、自分の魅せ方をよく知っている。

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 六時間目のチャイムが鳴り終え、授業が全て終わると生徒がいかに有意義な自由活動が行えるかが問われる時間、放課後が始まる。ある生徒はようやく終わったはずなのにまた再び勉学に精を出し、またある生徒は部活動で青春を満喫する。孟起はどちらにも興味が無かったため、実につまらない中学生時代をすごしていた。
その心境は今でも変わらず、部活に関わるつもりは全く無い。第一、調査で来ているのにそんな面倒なことにかまっている暇はない。そういったところでの聞き込みは最初からタイラに任せるつもりだった。もっとも、そんなことに首を突っ込むのは部活に何らかのヒントがあると思える事態に成ってからだ。
孟起は授業終了と共に自分の周りに集まってきた女子学生とささやかな会話を楽しんでいた。まだまだガキだが、女に変わりはない。こう見えて孟起はフェミニストなのだ。
依頼に来た女子高校生の姿はまだ見ていない。てっきり向こうの方から会いに来ると思っていた孟起は頭を捻った。そのために、昼休みは人の多い食堂を避けて裏庭で食事を取ったのだ。自分がいることを示すため、裏庭に行く前に校内を隈なく歩いたのだが、結局一人で侘しく焼き蕎麦パンを食べることとなった。色々な意味で懐かしい味だった。
「では行きましょうか」
いつの間にか孟起の前には三つ編みで眼鏡をかけたいかにも優等生といった風の女子高生が立っていた。孟起が苦手なタイプで普段なら積極的に話そうとしない。てか、無視する。こういうタイプは校則とかにうるさく、何かと文句をつけてくる。第一、価値観が違い過ぎて話が続かない。
「どこにだ?」
運臭そうに聞き返すと向こうのほうも何を言ってるんだこいつという目で見返してきた。
「学校を案内してほしいのではなかったのですか」
眼鏡を上げながら言うその姿はまさしくガリ勉娘である。途端に周りの女子がズルイとか抜け駆け禁止よとか不満気に騒ぎ出した。
「だったらおまえらにも頼むわ。面白い話もつけてくれよ」
ウインク一つ贈ると女子たちが黄色い歓声が沸く。孟起は自分の魅せ方をよく知っている。どんな格好が自分を一番魅力的に見せるかも。だから、着る物を他人に事細かに指定されるのは大嫌いである。指定されたのが好みに合っていた場合を除けばだが、校則がどうとか言う奴が強制するのは堅苦しくって大抵孟起の嫌いなものばかりだった。先に面倒といったが、女子高生にキャーキャー言われるのは別に悪い気はしない。
結果、タイラが委員長に頼んだ学校案内は予想以上に人数が増えに賑やかになった。
「今いる校舎が教室塔で一年から三年の教室があるの。一階が一年で二階が二年、三階が三年よ」
教室塔の案内はこの一言で終わった。どこの教室も作りは一緒なのだから案内しなくてもいいよねと言われ、孟起もタイラも同意したからだ。生徒も先生も毎日使用しているのだから何か変化があると誰かに気付かれる確率が高くなる。そんなところに何かを隠すもしくは行うことはまず無いだろう。それに教室塔内ぐらいだと授業中に気配を探るぐらい簡単にできるのでわざわざ調べる必要はない。これが、二人が出した意見だった。
もちろん、授業中に調べることは調べる。それに同じだと言われたのにわざわざ案内を頼むなんて変に思われる。情報収集はいかに相手に自分を信頼させるかから始まるとタイラは思っている。できるだけ喋らす事だと孟起は思っている。余計なことは効率が悪くなるだけだ。
「渡り廊下の向こう側に見えるのが実習塔。理科室やコンピューター室、音楽室などがあるの」
「職員室とか保健室は実習塔の一階にあるんだ。近づかないけど」
「図書室はあっちの渡り廊下を行った先に別館としてあるけど」
「私たち利用しないもんね」
「怪談もあるし」
「騒々しい先生がいるし」
「静かにしろって毎回五月蝿いし」
確かに、今の音量で話されたらうるさくって本に集中できない。
「なぁ、その怪談ってどんなんがあるんだ?」
「え、興味あるの」
「意外か」
こういうことに興味を持つのは女子が多い。怖い怖いと言いながら楽しそうに話すのも女子である。男子が話題に使う時は女子との会話のときだけだ。
「前の学校の友達の趣味でな。今度言った学校でもあるんならぜひ教えてくれ、だと。俺もちとだが興味あるしな」
もちろん、嘘である。学校の怪談に興味があることは嘘ではない。除霊もやっている漢蜀にとってこの手の話はいい稼ぎ口なのだ。それに今回の依頼の一つが怪談に関係している可能性がある。
「え~、でも」
あの表情だと怖いけど話したいといった感じだ。女子はこう言った怖い噂話が何だかんだ言って好きである。
「わかってるだけでいいぜ」
「いいけど、ポピュラーなものばかりだよ」
「別にかまわねーぜ。美空ちゃん」
途端に感嘆の声とどよめきが湧く。
「う、うそ、一度だけで覚えてくれたの」
「ショートカットで活動的なのが瑞樹ちゃん。赤メッシュがポイントの咲ちゃん。桜のピンを着けてるのが五十鈴ちゃん。ウェーブがきまっているのが美空ちゃん。白のカチューシャがキュートなのが梨佳ちゃん、だろ」
「すっごーい。全員正解」
「よくいっぺんに名前言ったのに覚えられたよね」
そのくらいできないと漢蜀の仕事などできやしない。依頼のほとんどが探偵業に頼めそうなものである。つまり、メンバーは全員得意不得意はあれど、探偵と同じことができなければならないのだ。孟起の場合は専ら車要因だが、人名の把握も結構早い。
「ん、案内してもらってんだからそのくらいはしないとな」
孟起が営業用の笑みをうかべると女子が騒ぐ。自分に利益があることのためなら孟起は惜しみなく行動する。そう今のように。いきなりちゃん付けで馴れ馴れしいのではと思った人はその場に一人、タイラだけだから美形の威力を改めて思い知る。


                             続く
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