っておい

シロ

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一、Boy(?) Meets Girl(?)

1ー3、誤解されやすいのだ

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 二時間目も続けて寝ていたが、さすがに三時間目には目が覚めてしまい、かといって授業を聞く気にもなれず孟起は退屈していた。彼は興味がないことには全く見向きもしない性格で、勉強は興味を引き付けない物の代表格だった。どうでもいいところまで厳しく縛りつける校則にもウンザリした。
なので、基礎を身に着けると直ぐに辞めて、孟起は即働きだした。実際、そっちの方があっていた。
なのに、また窮屈なところに入る羽目になるとはあの頃は思いつきもしなかっただろう。
もちろん、孟起が反対しなかったはずがない。だが、仕事は二人一組でやる漢蜀の方針に従うと可能なのが十六、七才の少年であるタイラと高校生に一番年が近い孟起しかいなかった。雲長も人になれるのだが、彼の人型は当に滅んだ武人風の男性で、立派な髭が生えた顔も身長二メートルもある筋肉質な体格も学生とは程遠い姿だった。どう見ても三十代。そんじょそこらの用心棒でさえ持っていないほどの気迫を纏う高校生・・・・・・誰の目で見ても無理がありすぎる。
そもそも、彼ら獣人の人型は化けているのではないので姿を色々と変化できるわけでない。成人した獣人族なら誰でも持っている天性のもので、年齢と共に成長していく姿一つのみである。つまり、狐などが化けるのとは異なり魔力も妖力も消費しない利点があるものの、なれる人と獣の姿は一種類だけ。つまり、年相応の姿だ。
もちろん、実年齢以上に見られてしまう玄劉は真っ先に選択外となる。そもそも同盟からの勧告でやりたくてもやれない状態だ。
他に可能だったのが、孟起の弟で今は別居中の岱と彼と同居している文香ぐらいだが、岱はその学校のOBでしかも生徒会役員だったので職員に顔が知られている恐れがある。もしそうだとしたら内密調査はできない。超人見知りの激しい文香は論外だ。話しかけられなければ聞き込みの成果が得られるはずがない。
そうなると残る漢蜀のメンバーは孟起とタイラしかいない。人員不足極まれり。そもそも、除霊ができるのはメンバーの中で孟起だけなので嫌でも参加させられる。
よって、孟起の言い分「放課後行ってチョチョイと除霊してくるだけ」は尽く却下され、彼女達の依頼を引き受けたのは誰だったかな、と玄劉に言いくるめられ、最終的に今月の給料二倍で孟起が折れて今の状態に至る。
最初の仕事は、この学校の怪しいところを徹底的に調べて異物を排除する。特に喧嘩が起こった場所と起こした者がよく利用している場所を重点的に。薬物が混入されている可能性もあるが、犯罪性が高いため、とりあえず保留しておくことになった。喧嘩した生徒や周りで見ていた奴らの話も聞く必要がある。
別件の幽霊はもっと単純だ。ぶらりと校舎を回って見つけ次第除霊して終了。
単体だとどちらも簡単だが、二つの依頼を一度に調べなければならないため、結構厄介な仕事となった。唯一救いなのは仕事さえ終わればとっととサヨナラできる事。こうして孟起の西華学園高等部一年生生活が始まった。年齢詐欺、その差八年。中年のオヤジが担任で本当によかった。でなければ早期にばれていただろう。二十代の先生だと下手したら先生のほうが年下になる。
「サッサと終わらせるか」
筆箱の中から白い紙鶴を取り出すと暇つぶしに落書きしていたのとは別のページを開いた。授業中のほうが誰にも精神集中の邪魔をされないから今から孟起が使う術にとって余計に都合よい。ゆっくりと気を練る。
「我が魔力を得しもの。この場に宿る形状を写し出せ。遊画所書」
声を潜めて魔導歌を唱えると折鶴に淡い光が宿ると宙に浮いた。紙の上を飛び回り、何も付けていないはずの嘴で紙に何かを描いていく。一枚描いたら次のページへ。折鶴がフワリと机の上に降り、光が消えたとき、授業終了のチャイムが鳴った。途切れ途切れだった図はきちんと地図になっていた。一ページが一階で計三ページ。ただし、これはこの建物が三階建てであることを示すのではなく孟起が三階建てと考えたのでその分の階数しか折鶴が描かなかったのである。実際、この校舎の窓は上に三つまでしかない。
「まあ、こんなもんだろうな」
起立と号令がかかったとき孟起はノートを閉じてから立ち上がった。誰かに見られでもしたら・・・・・・転校したてだからと誤魔化してもいいが、そうすると校舎の案内を頼みづらくなる。この地図は面倒なことに、他の人に描かれてある部屋の半分以上を案内してもらわないと細部が記されないのだ。条件がありすぎて非常に使いにくい術なのだが、成功したときの効果は凄く、行かなかった部屋、表面に見えなかった部分も詳細に描かれる。今回の場合、設定の転校生の部分を利用したら結構役立つ術なのだ。
「あとは誰かに案内させるだけだが・・・・・・」
どこの誰とも知らない奴の頼みを聞いてくれるようなお人よしがはたしているだろうか。
しかも、孟起は見た目がワイルドであるが故にどこか生徒を寄せ付けない雰囲気をもっている。不良と誤認されやすいタイプだ。実際、孟起は中学のときにとある不良集団のリーダーをやっていたし、今でも電話一つで集合をかけることができる。つまり、元不良頭。
逆にタイラはどこからどう見ても健全なスポーツ少年タイプにしか見えないので、頼めば誰かが喜んで案内するだろうが、こればかりは術者が案内されなければ意味が無い。渡してよろしくはできないのだ。
「しゃねー、面倒だが女子に案内頼むか」
孟起は初対面でも女にはもてる。さすがに三十以上は無理だが、二十代以下では声をかければ一発だ。男は不良仲間なら兄貴と慕われているが、それ以外の特に優等生や中年との相性は最悪である。
なのに、孟起が渋っているのは、女子学生相手のちゃちな恋愛ごっこに付き合わされるのは面倒だからだ。現役バリバリの男子学生が聞けば文句が殺到するだろうが、言葉に出さなければ誰にもわからない。よって、孟起の思考は誰にもばれることはなかった。
いやそれよりも今回はいい方法がある。孟起の口元が少し上がった。
『探索術を発動させた。タイラ、誰かに案内頼む時、俺も同行させろ』
耳につけたピアス型密話機のスイッチを入れればこの学校内のなら同機を所有している人にテレパシーを送ることができる。複数人での会話も可能だ。
『自分で頼むでござる』
『女子高生に評判がいいのはおまえの方だ。俺は後が面倒なガキに関わる気は無い。何のために二人で行動すると思ってるんだ』
『・・・・・・わかった。だが、選り好みしないでほしいでござる』
適材適所という言葉がある。人に何か頼んだり、質問したりするのは二人のうちではタイラの方に分がある。孟起がやったら恐喝とか脅しになる。本人は普通に頼んでいるつもりなのだが・・・・・・誤解されやすいのだ・・・・・・たぶん。

                           続く
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