っておい

シロ

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一、Boy(?) Meets Girl(?)

1ー15、煙の上がる方をじっと見ている。

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 雷撃を防げたのはいいが、あの巨体を倒す術があるかというと首を捻るしかない。タイラの攻撃方法は風を操る方法だが、対象の大きさが一定以上だとダメージを当てられなくなることがたまに起こってしまう。今回の相手のサイズはギリギリで不安が取り除けないタイラだが、幽霊の少年がいるため逃げ出すわけにもいかない。セヴァーニブルの魔物は人肉を好む。実力も身分もさらに上である魔族は人の魂、そして人の負の感情が大好物である。しかも性質の悪いことにお互いの利益が一致している。
この世界に来襲するためには世界の狭間を流れる時流の穴、時空の裂け目を通らなくてはならないのだが、魔物にはそれの出現を感知することはできないので偶然に頼るしかない。探知能力を持つのは魔族だが、こちらに来たからといってすぐにご馳走にありつける訳でない。捕食対象が幸せだと食せないのだ。
つまり、連れてきた魔物に人を襲わせることで魂価値を高め、自分好みに味付けする訳だ。タイラが警戒しているのはこの鮟鱇魔物の飼い主である魔族の出現だった。体力だけの魔物だけと魔法も体術も特殊なものが多い魔族が共にいるのでは状況が天と地の差が出てしまい、倒すのもより難しくなる。魔物だけ野放しにする魔族も少なくないが、この学校に魔族が出入りしていることは昼休みの間に調査済みだ。角の方に残っていた瘴気が証拠だ。留守にしていなければどこからか現れる可能性も捨てきれない。
「そなたは拙者の後ろに」
少年幽霊を庇うようにタイラは前に出た。爪をむき出して飛び出し、数度エバに攻撃を浴びせていると空気が黒く霞み、場の温度が下がり始めた。場の温度の低下は幽霊の出る予兆だが、場の気に黒い濁りが生じるのは魔族出現の兆しである。それを少年幽霊も感じ取ったのか表情が曇った。
「心配しなくとも魔族の出現場所はもう一つの実習棟のほう。ここにいれば安全ではないが、魔族とのバトルは避けられるでござるよ」
『・・・・・・』
「大丈夫でござる。向こうには孟起がいる。きっと・・・・・・」
爆音と共に建物が大きく揺れた。窓の外を見ると実習棟の方で煙が見える。
「やっぱり、遭遇したよう・・・・・・どうしたのでござるか?」
タイラの隣で少年幽霊は不安げに破壊された壁を見上げている。
「もしかして連れがいるのでござるか」
小さく首を縦に振ったように見えた。
『・・・兄上』
どうやら、兄も来ているらしい。一緒にいないということはタイラたちと同じように別行動をとっているのだろう。
「兄もやはり」
『・・・霊体』
黒曜の瞳は煙の上がる方をじっと見ている。
「あっちの実習棟にいるのでござるな」
こくりと頷く少年幽霊を尻目にタイラは再びエバと対峙した。孟起が負けるとは思えないが、魔族が手強いのもまた事実である。
「急ぐべきでござるな」
風を尾に集め、タイラはエバの巨体に向かって大きく跳躍した。


                            続く
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