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一、Boy(?) Meets Girl(?)
1ー18、立派に特殊技である。
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『で、何に追いかけられてたんだ』
『・・・鍋?』
「だから、鮟鱇じゃないでござる。よかった。こっちには来なかったみたいで」
壁の向こうで何か巨大なものが動く音がした気がして、お互いに顔を見合わせる。その音が次第に近づいてきて・・・・・・二人と一匹が走り出した直後、壁が崩壊。巨大鮟鱇(少年命名)が現れた。
『何だこりゃ!』
「何でこっちにいるのでござる。向こうに行ったはずでは」
『・・・別個体』
「兎も角逃げるのでござる!」
こうして半骨格半人体模型も加わった少年幽霊と妖虎の子供VSエバの鬼ごっこが再会された。
『へへっ、何か嬉しいな』
「この状況のどこが嬉しいんだ」
『これで俺も学園七不思議、走る人体模型で仲間入りだ』
パチパチパチ
「拍手してないで真面目に逃げるでござるよ」
不思議・怪談バカの人体模型幽霊とどこかずれている少年幽霊を守りながら魔物エバを倒すのはとてつもない重労働に思えてきた。この二人がいなければ強力な魔法を使って即座に決着をつけられるのだが、この能力この学校の人、ではなく、幽霊にまだ見せたくない。それがタイラの本音だった。たとえ自分にとって小技であっても傍から見れば風塵刀も立派に特殊技である。どこから情報が洩れるかわからない。
「げ、タイラ。何でここにいる」
角を曲がったところでタイラたちは孟起と青年幽霊に鉢合わせた。タイラの考えたとおり孟起たちは魔族と遭遇していた。そして逃げ出したのである。孟起も一人なら戦っていただろう。血の気の多さは今のところ漢蜀で一、二位といってもいい。そうしなかったのは青年幽霊がそばにいたからなのは容易に想像できる。
「何やってんだ。魔物ぐらいサッサと片付けろ」
「彼らの安全が最優先でござる」
『よかった。無事でしたか。怪我はありませんね?』
まさか、青年が少年にハグするとは思わなかったタイラは目を丸くした。留学したことがあるのだろうか。行動がアメリカナイズされている。少年幽霊も慣れていないらしく驚いていたが、兄との再会に安心したのか少しだけ表情が弛んだように見えた。
「兄弟か。確かに黒髪黒眼とか似ているな」
『そうだな、確かに昔の私に似ている。いや、それ以上に可愛い』
怪我がないことに安心した青年幽霊は自慢げに少年幽霊の頭を撫でた。この人たちはこの状況でどうしてここまで呑気でいられるのか。タイラは泣きたくなった。
「へぇ、結構可愛いじゃん。男装もなかなかいかすし。おまえ何て名だ」
孟起が目をつけるもの無理はないなとタイラは思った。女には五月蝿いようだったが、もしかしたら、年下趣味なのかもしれない。ただし、男子か女子かの判断は見る人それぞれ異なる。実際、タイラは男子ではと思う前は女子と思ったし、孟起ははなから女子だと思っているようだ。だが、もしも女の子だったとしたら・・・・・・そんなことを考えてしまい、タイラ頭を大きく振って打ち消そうとした。
『・・・彼、武藤殿、申し・・・・・・』
「誰が男の名前なんか聞くか。俺が訊いてんのはおまえの名前だ」
『・・・サード。彼、兄・・・・・・』
「サードか。俺の名は孟起。以後末永くよろしく」
孟起が手を差し出すと、サードは首を傾げた。握手をしたことがないのだろうか。挨拶されたのだとわかると、床に座り、三つ指をついて礼儀正しくお辞儀をした。
『使用方法が違いますよ。第一、こんな男に使う必要などありません』
どうやら青年幽霊は無防備な少年幽霊の保護者的存在のようだ。兄としては少々過保護な気がする。保護者のいつも通りの反応なので孟起は特に気にも留めなかった。
「全員現実戻ってくるのでござる。話は後、今は逃げねば」
タイラが来た方向からはエバの足音が響き、孟起が来た方向からは音一つしないが、非常に嫌な気が迫ってくる。
「面倒だ。強行突破するぞ」
「どっちにいくのでござるか?」
「こっちだ」
孟起は腰のショルダーから銃を抜くとタイラがやってきた方向に駆け出した。角を曲がり、タイラたちを追いかけて来たエバに銃口を向ける。
「走れ、フレイムバレッド!」
銃から炎の弾が飛び出す。着弾すると炎が噴出し、エバを黒コゲにして消滅させた。ここまで威力のある魔導歌を封じた弾を込めていたっけ、と孟起は灰となって消えていくエバの横を抜けながら少しだけ疑問に思った。
すぐにまぁいっか、と考えるのを止めた。
「急げ、おまえらを連れて魔族の相手をするなんてごめんだからな」
孟起の後に武藤君がその後にサードと青年幽霊が続く。全員が角を曲がったのを確認すると場の空気にちょいっと細工を施し、タイラも彼らの後を追おうとした。
だが、突如足の力が抜け、その場に崩れてしまう。
「しまった。瘴気に・・・・・・」
巻かれたと気付いたときにはもう遅い。
続く
『・・・鍋?』
「だから、鮟鱇じゃないでござる。よかった。こっちには来なかったみたいで」
壁の向こうで何か巨大なものが動く音がした気がして、お互いに顔を見合わせる。その音が次第に近づいてきて・・・・・・二人と一匹が走り出した直後、壁が崩壊。巨大鮟鱇(少年命名)が現れた。
『何だこりゃ!』
「何でこっちにいるのでござる。向こうに行ったはずでは」
『・・・別個体』
「兎も角逃げるのでござる!」
こうして半骨格半人体模型も加わった少年幽霊と妖虎の子供VSエバの鬼ごっこが再会された。
『へへっ、何か嬉しいな』
「この状況のどこが嬉しいんだ」
『これで俺も学園七不思議、走る人体模型で仲間入りだ』
パチパチパチ
「拍手してないで真面目に逃げるでござるよ」
不思議・怪談バカの人体模型幽霊とどこかずれている少年幽霊を守りながら魔物エバを倒すのはとてつもない重労働に思えてきた。この二人がいなければ強力な魔法を使って即座に決着をつけられるのだが、この能力この学校の人、ではなく、幽霊にまだ見せたくない。それがタイラの本音だった。たとえ自分にとって小技であっても傍から見れば風塵刀も立派に特殊技である。どこから情報が洩れるかわからない。
「げ、タイラ。何でここにいる」
角を曲がったところでタイラたちは孟起と青年幽霊に鉢合わせた。タイラの考えたとおり孟起たちは魔族と遭遇していた。そして逃げ出したのである。孟起も一人なら戦っていただろう。血の気の多さは今のところ漢蜀で一、二位といってもいい。そうしなかったのは青年幽霊がそばにいたからなのは容易に想像できる。
「何やってんだ。魔物ぐらいサッサと片付けろ」
「彼らの安全が最優先でござる」
『よかった。無事でしたか。怪我はありませんね?』
まさか、青年が少年にハグするとは思わなかったタイラは目を丸くした。留学したことがあるのだろうか。行動がアメリカナイズされている。少年幽霊も慣れていないらしく驚いていたが、兄との再会に安心したのか少しだけ表情が弛んだように見えた。
「兄弟か。確かに黒髪黒眼とか似ているな」
『そうだな、確かに昔の私に似ている。いや、それ以上に可愛い』
怪我がないことに安心した青年幽霊は自慢げに少年幽霊の頭を撫でた。この人たちはこの状況でどうしてここまで呑気でいられるのか。タイラは泣きたくなった。
「へぇ、結構可愛いじゃん。男装もなかなかいかすし。おまえ何て名だ」
孟起が目をつけるもの無理はないなとタイラは思った。女には五月蝿いようだったが、もしかしたら、年下趣味なのかもしれない。ただし、男子か女子かの判断は見る人それぞれ異なる。実際、タイラは男子ではと思う前は女子と思ったし、孟起ははなから女子だと思っているようだ。だが、もしも女の子だったとしたら・・・・・・そんなことを考えてしまい、タイラ頭を大きく振って打ち消そうとした。
『・・・彼、武藤殿、申し・・・・・・』
「誰が男の名前なんか聞くか。俺が訊いてんのはおまえの名前だ」
『・・・サード。彼、兄・・・・・・』
「サードか。俺の名は孟起。以後末永くよろしく」
孟起が手を差し出すと、サードは首を傾げた。握手をしたことがないのだろうか。挨拶されたのだとわかると、床に座り、三つ指をついて礼儀正しくお辞儀をした。
『使用方法が違いますよ。第一、こんな男に使う必要などありません』
どうやら青年幽霊は無防備な少年幽霊の保護者的存在のようだ。兄としては少々過保護な気がする。保護者のいつも通りの反応なので孟起は特に気にも留めなかった。
「全員現実戻ってくるのでござる。話は後、今は逃げねば」
タイラが来た方向からはエバの足音が響き、孟起が来た方向からは音一つしないが、非常に嫌な気が迫ってくる。
「面倒だ。強行突破するぞ」
「どっちにいくのでござるか?」
「こっちだ」
孟起は腰のショルダーから銃を抜くとタイラがやってきた方向に駆け出した。角を曲がり、タイラたちを追いかけて来たエバに銃口を向ける。
「走れ、フレイムバレッド!」
銃から炎の弾が飛び出す。着弾すると炎が噴出し、エバを黒コゲにして消滅させた。ここまで威力のある魔導歌を封じた弾を込めていたっけ、と孟起は灰となって消えていくエバの横を抜けながら少しだけ疑問に思った。
すぐにまぁいっか、と考えるのを止めた。
「急げ、おまえらを連れて魔族の相手をするなんてごめんだからな」
孟起の後に武藤君がその後にサードと青年幽霊が続く。全員が角を曲がったのを確認すると場の空気にちょいっと細工を施し、タイラも彼らの後を追おうとした。
だが、突如足の力が抜け、その場に崩れてしまう。
「しまった。瘴気に・・・・・・」
巻かれたと気付いたときにはもう遅い。
続く
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