FGO【フリーゲームオンライン】

シロ

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エピソード8、後輩と種族

FGO【フリーゲームオンライン】プレイ中

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  ピッポン
洞窟を彷徨って何時間たっただろうか。リアル時間では一時間が経過した。隠密のスキルが大分上がったところで、私は頭を抱えた。このイベントのシステムなのか、ダンジョンの効果なのかログアウトボタンが全く反応してくれない。カーソルを合わせてクリックしているのだが、Errorが出る。そのたびに響く音でゴブリンが出現するのだから質が悪い。
「もう、本当にどうしようかしら・・・・・」
ログインする前にお風呂とトイレにいってきた。だが、いつアラームが鳴ってもおかしくない。そろそろ寝る時間になりそうだ。明日も用事がある。このままでは不味い。そう思った矢先に、危険感知が働いた。複数人の足音が聞こえる。ざっと5人はいるだろうか。さすがに分が悪いので、近くの窪みに身を隠す。暗視があっても薄暗いこの洞窟では少し避けるだけでも発見するのは困難になる。やってきたのはゴブリンリーダーについていたゴブリンシャーマンの一人だった。中間管理職くらいの情報は持っているだろう。一定の距離を保ちながら尾行する。そして、牢屋まで戻ってきた。
『いないゴブ、ガハ』
驚いた時にできた隙を待っていた。隠密のまますぐそばまで接近すると薙ぎ払いを宣言し、一気に蹴り飛ばした。5体なので全部を巻き込むことができた。ゴブリンは一撃で倒せたが、ゴブリンシャーマンは上位種なだけはある。血反吐を吐いて苦しんでいるので瀕死にはなっている。ウォルがいれば話ができるくらいにまで回復してもらうのだが、いないのなら仕方がない。
「こっちの言葉、わかる?」
気絶時に出るボーナスで汎用蛮族語は習得済みだが、確認は大切である。ゴブリンシャーマンは首を縦に振った・・・・・・念のために確認しておこう。
「出入口わかるなら首を横に振って、わからないなら頷いて」
ゴブリンシャーマンは少し考えたあと首を横に振った。動作理解の誤解はないと考えてよさそうだ。
「出口は右に行けば辿り着ける?」
あーうーっと唸っているばかりだった。地下なのか?と訊くと頷いた。
「町を襲うって発想誰が思いついたのかしら?」
またしても唸り声が出た。YesかNoしか答えられない質問しかできないのは結構手間だ。
「最後に一ついいかしら?」
『あー』
「命令したの人間?」
コクリと頷いたゴブリンシャーマンの頭に踵を叩きこんだ。データの嵐となって消えたあとに何か残っていた。花の金細工の中央に赤い宝石がはまったブローチだ。ゴブリンシャーマンのイメージではないことを鑑みるに、ドロップアイテムだろう。すでに加工済みなのは奇妙だ。カード化して鑑定する。???のブローチと出た。名前の最初にクエスチョンマークがついているアイテムは一度効果を目撃しないと正しい名前がわからない仕組みになっている。カードの縁が青なので装備アイテムなのはわかる。装備もできるようだが、呪い系のアイテムの可能性もある。ポケットに入れておくことにした。それにしても、服が変わっていないのは色々と救いである。このデザインは私ながら気に入っているのだ。身体を動かしても違和感はなかったし、これといって薬を飲まされた感じもない。この辺りはドクターやプリーストが専門なのでウォルと再会した時にメディカルチェックしてもらおう。いや、一般職だからとっていない可能性もある。
「あ、私としたことが・・・・・・」
装備品の保管場所を聞くのを忘れていた。リアルで1時間と言うことはゲーム時間で4分の1日経過程度だろうし、名誉蛮族以外は襲撃目的以外で町に入ることはできない。売られてはいないだろう。扇動した者があの価値をわからないとも思えない。少なくともこの辺りでは高級品である。現時点での店でできるフル改造だからだ。序盤の金欠状態でよくそんなことができたって?PvPはともかく、フィールドの敵と戦っているとお金は堪るものである。特にカメの甲羅の値段がよかった。加工の材料にもなった。弾丸の材料にはならなかったので銃弾不足は解決しなかった。
「止める気はないんだけれどね」
二丁拳銃の楽しさに目覚めてきた。すれ違うゴブリンを蹴りで止めるが、普通の蹴りでもとび蹴りでも膝蹴りでも踵落としで受けたゴブリンは何も言わずに消えていった。蹴りの威力バカ高くないだろうか?
基本レベルと技能レベルが離れていると威力の変動幅は大きくなる。だが、この辺りをウロウロして出会ったゴブリンを倒しまくった結果、いつの間にかそれが縮まっていた。というか、ステータスを確認したところ、基本レベルが10を超えていた。ゴブリンとのレベル差は5。クリティカルでもしない限り通常攻撃では一撃死しないHPはあったはず。
「通常のゴブリンよりも脆弱が集まっているというよりも、弱いのが生み出されているって感じかしら」
そういうのもありな世界ではあるが、そう言ったのはもっとレベルが上がってからなのでは?自分の常識で物を測ってはいけないという教訓を教えるためかもしれない。ゲーマーならレベルである程度イベントも把握してくる。それを打開するためとしたら、やるなと言える。問題はそのイベントが年齢制限に引っかかりそうなことである。
ウロウロしていると見覚えのあるドアに辿り着いた。出口とかではなく、エレベーターである。乗り込むとヤレヤレと一息ついて、冷や汗がドバっと噴出した。ボタンがなかったのだ。そして、出ようとした前で扉は無情にも閉まった。ふわりとGが弱まる感じに嫌な予感が加速する。
「いやー、開けてちょうだい!!」
間違いない。このエレベーターらしき空間は下に向かっている。辺りに検索をかける・・・・・・反応はない。これは、ただの密室の様だ。それもこれもドアが職場のエレベーターにそっくりだったのが悪い。ご丁寧に染みの形や位置まで同じなのだから悪意しか感じない。
「考えたくはないけれど・・・・・・」
危険感知から警告がくる。身構えた瞬間、軽快な電子音が鳴り、降下が止まった。ゆっくりと扉が開いて現れたのは、身長3mはあるゴツイ蛮族だった。私の腰回りくらいの力瘤が見える。キョロキョロと見渡した蛮族は中に誰もいないことに首を捻る。
『どうした?』
『誰もいないトロ』
『そんなはずはない。よく探せ』
再度探そうと向きを変えようとしたトロールの横っ腹に私は回し蹴りを叩きこんだ。強烈な一撃は巻き込みが発生して後ろにいた奴共々その巨体を壁まで叩きつけた。どこに潜んでいたのかって?ドアの斜め上の天井、トロールにとって死角となる個所に張り付いていたのだ。エレベーターにある非常用脱出口があればもうちょっと楽だったのだが、なかったものは仕方がない。
「イテテテッ、一体なんなんっすか?」
「その馬鹿に整った顔、見たことアルナぁ」
『あははは、気のせいじゃないっすか?』
「交易共通語話といて今更汎用蛮族語なんか話してんじゃねーよ」
そう言って私は草のような色の髪の頭を思いっきり殴ったのだった。トロールの下から這い出してきたそいつは長身設定した私よりも少しだけ背が高かった。ムカつくなるほど整った顔立ちは原型のままだった。「酷いっすよ~」とか言っているが、将来国民的俳優になるその自慢の顔に蹴りを叩きこまなかっただけありがたく思ってほしい。
「で、お前は何をしてるんだ?」
「先輩、素に戻ってるっすよ」
「・・・何をしているのかな?」
「笑顔余計に怖いっすから止めてほしいっす」
「ならさっさと質問に答える」
「悪人してるっす」
「・・・その頭脳でか?」
「あー、酷いっすね。俺だってやればできるっすよ」
「お前ができるのはナンパと合コンくらいでしょうが」
こいつはお茶の間のおばさん達に受ける様な、俗にいうイケメン悪人顔している。配役にはピッタリである。ただし、あまり臨機応変さがないのでアドリブや先程のような展開に弱いという欠点がある。なのに、ナンパの成功率は高い。世の中、顔らしい。
「で、やっぱりあいつ等が裏にいる訳ね」
「はいっす」
「まったく、私は一般参加枠で来てるのに」
ばれないようにわざわざパソコンを買い替え、演技力でもカバーしようとしたのだが、無駄になってしまったようだ。
「もう特定されてるっすよ」
「でしょうね」
じゃなきゃ、こんなバカげたこと仕掛けないだろう・・・・そう思いたい。
「そんで、これからっすね」
「馬鹿!!」
素直なのはこいつ、橋場 啓の美徳だが、素直すぎるのも問題である。ネタバレをしそうになったその口をグーパンして慌てて塞ぐ。
「一般枠での参加だって言ったでしょう。ゲームでネタバレはNGだって前に教えたよね」
「先輩、やっぱ、その喋り方違和感あるっす」
「まぁ、ボロが出てるとは思うよ」
女性口調を真似するといってもその道のプロという訳ではない。演技力もそんなにない。必要もなかった。なので性格はそのままにしている。こう考えているとばれる要素しかない。だとしても、である。身内が遊んでいるからってちょっかいをかけ過ぎではないだろうか。普通、生温かい目で眺めるくらいに留めるだろう。そうしないのは、らしいといえば、らしい。
「しかし、下りてしまったのは痛いな。一方通行なんだろ」
「そうっすよ」
しばいたついでに天井を開けさせた。
「どお?登れそう?」
「スキル飛行があれば何とかなる高さっすね」
パッと見たところ約18mある。妖精族が使える特殊能力、浮遊でもダメだろう。飛行持ちの人族は・・・・抽選で当たったレアPCしかいない。
「やはり、装備品探し再開かー」
戦力半分以下が続くのはいただけない。などと考えながらゴブリンを倒していく。
「結構経験値溜まったんじゃないっすか?」
「そうだね」
回復の泉が湧いている場所を発見してそこで一服するついでにステータスを振り分け、スキルの確認を行う。見事に戦闘系の蹴りスキルが成長していた。あとは、危険感知が上がっている。ドロップアイテムも結構溜まってきた。ここらで一斉鑑定しておこう→6割が鑑定できた。古びた武器とか欠けた宝石とかで実用性はないが、売ればかなりいい稼ぎとなる。鑑定レベルも上がった。パンだを食べながら、失敗したアイテムを破棄していく。
「そうだ、お前も食え・・・・って何でそんなに離れてるの?」
「自分、その部屋には入れないっすよ」
そう言えば、魔王をやっていると言っていた。回復の泉がある部屋は敵エネミー(モンスター)立ち入り禁止となっている。魔王と称される彼も例外ではない。パンだを投げてやると嬉しそうに食べた。
「先輩、料理上手っすね。美味いっす」
「そう?趣味程度だよ」
美味しそうに食べる姿を見るのは嫌いではない。料理を始めたのも、不味い出来合を食べるのが嫌になったからだ。今では実用的ないい趣味。家計的にも助かっている。
「だって、料理はまだ試験段階で、実際に作れる技能ないと無理って言ってたっすよ」
「まぁ、作る必要性ないからな」
宿屋の飯は不味い訳じゃない。寧ろちょっと懐かしい美味しい味に入る。値段もお手頃で、寧ろ材料を買って作る方が高い場合が多い。獲れた材料も持っていけば調理してくれる。とりあえず、フリープレイが売りなのでできるようにしたということだろう。
「これも食べる?」
「唐揚げ!大好物っす」
「お前、味覚子供だ、よね」
いかん。口調が戻りつつある。注意しなければ。
「むぅ、否定できないっす。そう言う先輩はどんなのが好きなんっすか?」
「・・・・山芋の鉄板焼きと新たまの煮びたし」
「めっちゃ居酒屋メニューじゃないっすか!」
「うるせー、全部自分で作れるっての。もう弁当作ってあげないからね」
肩パンを食らわせると痛いっすと肩を竦める。唐揚げを落とさなかったことは褒めてもいいかもしれない。
「あ!?」
「どうかしたのか?」
整頓も終わってそろそろ移動しようとした時だった。啓が素っ頓狂な声をあげて、私を見ながらオロオロし始めた。
「ちょっとやることできたんっす。別行動でいいっすか?」
「・・・お前、まだついてくる気だったのかよ」
「当たり前っすよ。先輩と俺は一心同体っす」
「・・・お前、結構重い奴だったのか」
「え、体重増えてたっすか?!それは不味いっす」
馬鹿なのは知っていた。ここまで酷いとは知らなかった。
「私を見張れとか言われていたの?」
「自分が一緒に居たいだけっす!」
「さっさと行ってこい!!」
見事な回し蹴りが啓の腹に炸裂する。彼は、振り返り振り返り涙を流しながら闇に消えていった。
「さて、マイ装備探しの続きといきましょう」
回復の泉の部屋から出る。途端に鳴った危険感知に急いで泉の部屋の陰に隠れる。ゴブリンが8匹ほど走り去っていった。あのまま進んでいたら出くわしていただろう。ホッとしたが、通り過ぎた時1匹が気になることを呟いていた。敵が来た、と。
「ひょっとして私を助けに・・・・・」
更に急がないといけなくなった。助け・・・来ているとしたらウォルだろう。マシロは無理やりフレンド登録した後、一回も会っていない。さっきの緑髪の男子が協力してくれていればまだ状況は変わるかもしれない。だが、それを振り切って彼女の第二性格だと単身突撃も容易に想像できる。地図を開いてみたが、罠にかかった後から移動した分しか記されていない。これまでの情報から分岐がある洞窟であること、降りた後変化した周囲の様子からして廃坑に繋がっていたことがわかる。チェックされているところの敵の動きなら知れるが、一定距離を行ったり来たりしているだけだった。
「さすがに、レベルまで反映してくれないか」
ちょっと高いが、手に入れられた自動記入マップ。持ち主の意識がある時に通った通路を勝手に記入してくれる優れものだ。気絶中は稼働しないので今回のようなことが起こった時に出口探しには使えないのが欠点である。
「まぁ、ここをこうして、あそこがああなっているから・・・・」
ダンジョンを作ったのは人である。初期ダンジョンなのでそこまで複雑ではないことを踏まえれば、上に続く階段はすぐに見つかった。そして、武器だが、階段裏の隠し所に放置してあった。弾を入れて構える。ガンベルト共々特に細工されている感じはない。四つ装備できるように改造しておいてよかった。何故、自動記入マップが手元にあったのか。右の袖口の布がそれだったのだ。亀の甲羅(無傷)との交換と他のプレーヤー(剣士)から持ちかけられたのだ。でなければ、他の町でしか売られていないアイテムを手に入れることはできない。消費アイテムなのがとても残念である。
「これで、よしっと」
キュッとガンベルトを締めて準備万端。銃を取り出して、構える。久しぶりに使うが、調子はいいようだ。荷物袋からマップを取り出し、スキャンを開始する。移動した1エリアを地図に書き下ろしていく作業である。コンピューターがやってくれるので楽だが、読み込みに時間がかかる。
「探索区域内及びその周辺に階段なし、か」
スキャンは通った距離の半径1mを地図に記載していく。壁沿いを歩いていると範囲内であれば壁の向こうも調べて記入してくれる。光を囲んでいる楕円の印は回復の泉だ。東側はあらかた歩いた。その範囲内に階段のマークが半分だけ写っていた。
とりあえず、そこを目指して歩くことにした。道すがら出会ったゴブリンを蹴り飛ばしながら私は進んだ・・・・・・のはいいのだが、目的の部屋の入り口が見つからない。階段周囲の探索は終えているのだが、そちら向きのドアがない。通路も立体交差している部分がない。なので、今は地道に壁を叩く作業に勤しんでいる。
ゲーム時間で1時間後
壁の一番薄い個所を突き止めた。蹴り飛ばし大穴を開けた←今ここ。階段も見つかったし、言うことなしなのだが、肝心の助けに来た仲間というものに合流できないでいた。後輩魔王が邪魔しに行ったし、まだこっちに来てないのかもしれない。階段を慎重に上る。二歩手前で壁に張り付き、手鏡で周囲を確認する。出なくて正解。ゴブリン達が集まっていた。中央には台座があり、その上でゴブリンリーダーが何やら熱心に叫んでいる。
「してるとしたら、次の士気貯めかな。知力低いだから演説という可能性はないと思うのだけれど」
その周囲には巨大なガラス筒と中に漂っているゴブリンの幼体・・・・・・成程。つまりここはゴブリン製造工場なのだ。通常より弱い個体ばかりだったのはここで人工的に作られていたからだろう。
等と考えていると、横の壁が崩れ、ゴブリン達に襲い掛かった。当然演説は中断。散り散りに逃げるかと思いきや、ほとんどのゴブリンは戸惑いつつもその場に留まっていた。それが原因で何匹か巻き込まれていたが。そして、土埃の中から飛び出してきたのは、あの時手を貸してくれた少年だった。体の所々から煙が出ている。火、いや雷属性の攻撃を受けた跡だ。
「マジ強いwww、あいつなんなんwwww」
笑う余裕はあるようだ。駆け寄ろうとしたが、それよりも早くゴブリン達が壁になった。急いで身を隠す。集まってきたゴブリンは少年の方に全て行った。エアースラッシュの呪文が聞こえる。ウォルは水属性なのであの少年が魔法剣士なのだろう。一緒に戦ってくれているようで、少し安心した。彼が壁に開いた穴の向こうに消えた後を追ってゴブリン達は全て穴の中に入っていった。最後にリーダーが入ると広場には誰もいなくなった。念のために隠密で気配を隠し、広場に入る。静まり返っており、巨大試験官中からの泡の音しかない。壁向こうでは戦いが繰り広げられているだろうに、やけに静かである。
「まぁ、いいわ。今のうちにここ調べ・・・たいのだけれど・・・・・・」
最初から習得している交易共通語以外の言語習得には一定の技能習得が必要である。習得方法はそれぞれ別で、話は音楽を聴く、読は本を読む必要がある(例外、スキルによる習得)。必要な音楽と本はそれぞれ決まっていて、こうして書類を眺めていても読めるようになる訳ではない。今自分が読めるのは交易共通語だけなので、この書類はそれ以外の言語で書かれていることがわかる以上のことは知ることができない。
「鷹の目と危険感知の応用で・・・・・・」
組み合わせると意外な性能を発揮する特技が稀にある。今回は鷹の目の獲物を発見する能力と危険感知の感知判定を組み合わせる感じでやって見た。結果は、青白く輝く書類の中に赤い印がついているものがちらほらと見られる。
【新しいスキルを獲得しました“第六感”】
「あら、これは嬉しいわ」
第六感を持っていると物語のヒントを貰える。この場合は、どれが重要書類かを判別するために使った。赤い印がついているこの三つが今回の重要だろう書類である。魔法使いはそれだけで読める言語が増えるのでウォルが習得している言語かもしれない。その辺に期待しながらアイテムボックスに入れた。
「さて、向こうは大丈夫かしら?」
瓦礫の隙間から覗くと、そこには・・・・・・。
『ふはははははは、二人して敵陣に乗り込むとは、無茶無謀よ!』
無傷で高笑いをする後輩。
「く、ナニイってんだ?」
「わっかんねーけど、漂う中二臭wwww」
ボロボロになっても頑張っている仲間。私の中で何かが弾けた。
「だ・か・ら、交易共通語で話やがれ!!!!」
「ぐふッ!!??」
「それでいい」
「・・・・うわwwwwwwwwwwwww」
「カッコいい・・・」
少年に大量に草を生やされ、目をキラキラさせたウォルに感動される。はて、何をしたかと自分の行動を思い返してみる。あまりにもイラッときたので跳び蹴りをその自慢の顔にヒットさせた。そのまま倒れた後輩を足下に抑え込んだ・・・・・・傍から見なくても中々凄まじい格好である。
「や、やぁ」
二人の顔を見れず、目を背けつつ手を振る。もうダメだ。口調を変えるのも忘れてしまった。耳は真っ赤になっているだろう。等と考えているとドンと胸にぶつかってきた。
「ブジだった!!」
ぐりぐりと水色の頭を胸に押し付けられる。よっぽど心配していたのだろう。がっちりとホールドされて逃げ出せない。まぁ、逃げる気はないが。
しかし、この力の強さ・・・・単なる水属性の魔法使いではない。格闘家のコラボなのだろうが、それにしては力と素早さが高い。格闘家に数値極振りでもしている可能性がある。となると、ちょっとまずいかもしれない。先程からジリジリとこっちに迫ってくる集団がある。
「先輩、そろそろ下りてくれないっすかー。二人分で重いっす」
「何もしないんならな」
「しないっすよ」
まずはウォルをずらし、ゆっくりと乗せていた足を上げる。酷いっすよーと文句を言う後輩の頭を軽く殴る。いい音がした。
「とりあえず、自己紹介しません?俺カーズ。風の魔法戦士やってまーす。よろしくー」
「ウォル、です。み、水の魔法拳闘士、です」
「***だよ。二丁拳銃使いやってるわ」
「え、そうなの?」
「なのよ~。弾丸の関係上めったに使わないからね」
「わかるww高いもんなwww」
「ひょっとして・・・」
「ひょっとするぜwwww」
別のIDでカーズは最初銃使いになろうとしていた。だが、あまりの必須スキルの多さと割り振り数値不足にて断念したのだと語ってくれた。彼とはいいお酒が飲めそうだ。
「・・・で、結局初期ステータスの関係もあって魔法戦士になったんだ。これならレベルアップでシューティング覚えれるだろ」
「魔法いいっすよねー。ギューンドンババーンって感じが」
「わかるwww狙い撃ちってところが好きだぜwwww」
あの擬音語をどう訳したらそうなるのだろうか?すり寄ってくるウォルを宥めながら自分の初期ステータスを思い出した。初期ステータスだけは入力IDごとにランダムに振り分けられるので調整が聞かないのだ。器用と敏捷が高くて知力も結構良かった。MPもそこそこあったが、その分HPと筋力が少ない。最初銃が外れていたのは慣れと器用不足だったと考えられる。貴重な弾丸削って練習に明け暮れたあの日々は無駄ではなかった。
「あ、あのぅ、この人は?」
大人しい方に戻った。また中身がチェンジしたのだろう。
「私の後輩で・・・・・あ・・・・・」
これは言っていい情報なのだろうか。
「啓っす。魔王やってるっす☆」
「言うんじゃねーよ!!」
右ストレートが彼の頬にめり込んだ。リアル情報と開発者情報を同時に流したのだ。自業自得である。
「先輩、顔はやめてほしいっす」
「ゲームで身バレは厳禁でしょう。HN使いなさいとあいつらからも言われたはずよ」
「あ、忘れてたっす。じゃあ、なんて名乗ればいいんっすかね?」
「wwwもう、魔王で良くねーwwww」
「それじゃあ、友達できないじゃないっすか!!」
「ラスボスに求めるものじゃないわね・・・」
「あ、あのぅ」
私の後ろに隠れたウォルがおずおずと声をかける。
「この人味方なのです?」
その疑問はもっともである。後輩の姿はどこからどう見ても悪の魔王である。頭に二本の角まである。鬼とヴァンパイアを掛け合わせたような姿を想像してもらえると近いだろう。そして、さっきまで戦っていた相手だ。
「そういえば、その辺どうなん?」
「えっと、俺もともとここに来た奴の補助役なんっす」
「「「はい?」」」
「ちょっと待って、なら何でこの子たちと戦ったの?!」
「あ、それは腕試しというか、スキル試しというか、何かムカついたからというか・・・・あはっ」
今度は蹴りを後輩にめり込ませる。今度は腹を狙った。のた打ち回っているが、顔よりましだろう。本人の言葉だ。
「で、どうだった?」
「自快できる闇属性の剣士って感じっすね」
らしいと言えば、らしいか。それに、闇属性なら自快できるではなく、しかできないが正しい。水魔法のキュアや光魔法のリカバリーと違って、吸引なのだ。その辺のことを教える。それに、こいつさっき雷属性の攻撃を使っていた。
「そういえば、さっき俺が飛び込んだ部屋何?」
「ここのことはさっぱりわからないっす」
「・・・・研究施設というよりは量産施設って感じだから工場の生産ラインの可能性が高そうね」
「あ、あのぅ、襲われないように施設壊していった方がいいと思います」
オズオズと手を挙げながらウォルが提案する。その案には賛成だが、問題があった。純、風、水、闇。破壊が得意な火と地がいないのである。ちなみに、純とは何の属性も載らない魔法で、今のところ、シューターの弾射ちと命中補正くらいしかない。使いにくい魔法という訳ではないが、使用どころが限られた魔法である。探索魔法はない。で、である。何故、火や地がいないとダメかというと、火力と破壊力が足りないのだ。魔力を積めばいいと思っている人もいるかもしれないが、それでも足りないものは足りないのである。水に行ったっては上級魔法しか高攻撃力の魔法がない。
「それなら倉庫に行くのがお勧めっす。ダイナマイトあるっす」
「そうだな・・・・・・・それで行きましょう」
「火種は松明でいっか」
そう言ってカーズは壁にかかかった松明をとろうとしたが、とれない。背景扱いなのだろう。カード化もできなかった。拾うではなく取るだったのが問題なのかもしれない。
「ひょっとして、皆初心者セット買ってないっすか?!」
初心者セットとは駆け出しの冒険者にとって必要であろう道具の類を集めたセットでお値段たったの100G。初期所持金は1200Gなのでそこまで高いものでもない。その中に小型松明が6本ほど入っているのだが、
「・・・買うお金なかったのよ」
「てっきり買ってくれているとばかり」
「存在忘れてたwww」
などと悲しい扱いを受けるのも初心者セットである。名前が悪かったのかもしれない。
「あれ、火口もロープも入っていてお買い得なんっすよ」
「わかってはいるんだけれど・・・・・」
「先輩は仕方がないっすよ。まだ初めて数日も経ってないから」
「何で知っているのよ・・・・いや、もうそこには触れない」
どうせ、仲間の誰かが調べ上げたのだろう。
「俺のいた仲間内では、マジで初心者用って感じだったぜ。買って大体数日で消耗されてたし」
「あることは知っていたのですが、魔法使いだし、暗視持ってるから買う必要ないかなって」
暗視は地味だが、便利なスキルである。文字通り、暗い所でも通常の視界情報が手に入るのだ。種族特性でなければとれないスキルで、今のところ、エルフ、ドワーフ、獣人が持っている。これは初期ステータス作成時に選択した種族で固定され、ゲームを進めても変更できない。
「俺も俺もwww」
「獣人っすね。何の動物にしたんっすか?」
「狼ってね。無難どころだが、これが中々強いんだなww」
「ワーウルフっすか。カッコいいっすね」
「そういうそっちは・・・・何だ?」
「あー、ヴァンパイアモデルとは言ってたっす」
「うわ、希少モデル。さすが開発関係者www」
だから暗視もあるっすよ、と言うモデルの頭をポカリと叩いた。確か、ヴァンパイアは最上位モンスターで、魔王級と言っても過言ではない。つまりは、啓の能力を解析されてしまうと、その辺の楽しみを奪ってしまうのだ。このパーティーでは解析できる人がいないのが救いだった。気を取り直して倉庫へ案内する後輩の背中に・・・・・・何も感じることなかった。
「そこは察してほしかったっす」
「お前は背中で語ることには向いていないな。で、何かあったのか?」
「本部から待ったがかかったっす。ここまだ使いたいから爆破はなしって」
「だろうと思った」
急きょ送られてきたミッションメールには工場を外観を整えたまま沈黙させること、ボスを倒すことと書かれていた。他の人にも送られている。確認し終えた途端、倉庫にあったダイナマイトが消えた。
「皆聞いて。状況はメールの通りよ。おそらく、いや、確実にボスを倒さなければここから出られないわ。リアルタイムでの10分がこちらの1時間に当たるのも考慮してよく考えて」
私は言った。
「ボス撃破に行くか、出口を目指すか」

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深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

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