最期を告げる時計の針は

雪那

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「では!ヒール様!
 行ってまいりますなのー!」
「あぁ、行ってらっしゃいチェリン、隼。」
「い、行ってきます。」


願い人カンパニーの食堂から俺たち...といってもチェリンと俺の2人はチェリンのスイッチを押して、黄金の風が吹いて飛ばされて奇跡の門ワンダーゲートの前まで到達した。

「迷子にならないように手を繋ぎましょーなのー!」
「チェリン、ありがとう。」
「道案内よろしくなのー!」

そして、顔を見合わせ俺たちは手を繋いで、奇跡の門ワンダーゲートの中へ足を踏み込んだ。



戻ってきたのは、俺の住んでいる町のよく利用する駅の前だった。
ここには通学の為に、この前バイクを置いていたのをおもいだした。

「どうしたのー?隼お兄さん。」
「バイクに乗ってくぞ!チェリン来い!」

チェリンを振り返るとと桃色の綺麗なロングストレートな髪が黒色に染まっている。が、チェリンの目の色はまだ綺麗な桃色のままだった。

「バイク?」
「乗り物のことだ!チェリン、振り落とされるなよ!」
「う、うん!しっかり掴んどくなのー!」

ドゥルルルとエンジン音を鳴らして、バイクは彼女の家へ走っていく。

「そ、そういやチェリン、お前の能力ってどれくらいもつんだ!?」
「裏世界だと3年、
 表世界だと、1年なのー。」
「そ、そんなに短いのか。」
「短いのー。」

(まじか...)

「俺は天音に真実は伝えないつもりだ。だから、天音が出たら、チェリンが急いで能力をかけて、すぐに裏世界へ帰ることにしたい。大丈夫か?」
「大丈夫なのー!」
「ありがとな。チェリン。」

俺たちは天音にの家へ着いた。天音の予定では今日は家にいるはず。
マンションの三階まで足を運ぶ。
そして、天音の部屋の前でピンポーンとチャイムを鳴らした。

「すごいのー、表世界。初めて来たのー!
 機械いっぱいなのー!」

チェリンははしゃいでいる。
と、そこでガチャっと音がして、中から天音が出てきた。

「はーい。あ、隼くん!珍しいね、遊びに来るなんて。」
相変わらずくるんとした茶色の毛が内側に曲がっている。
「その子は?」
「チェリンなのー!お姉さん、隼お兄さんの彼女さんの天音さんなのー?」
「そうだよ~。」
「お姉さんに会いにきたの~。じゃあ、魔法をかけるのー!」

チェリンの桃色の瞳の色が増して強くなっていく。そして、天音は桃色の光に包まれた。そして、桃色の光が消えた頃に、黄金の温かい光が周りを包んでいた。
そう、俺の後ろ上には奇跡の門ワンダーゲートがあった。さよならの時間がきた。次に生きて会うための、ちょっとしたさよならの時間。
チェリンは能力を天音にかけている。

「えっ、これは何?」
「お姉さんが生きるための保険なのー!ではさよならなのー!」
「えっちょっと待って!隼くん待って!」
「天音!」
「なに!?隼くん!?待って!」
天音が必死にマンションの淵から手を伸ばすが、あまりにも遠すぎた。俺たちは奇跡の門ワンダーゲートへ吸い込まれていく。
天音は俺が裏世界へ行く理由も何も知らない。俺が教える必要はないと判断したからだ。だってそんな話をしても、信じてはくれないだろう。

ただ、1年間大人しく俺を信じて待っていてほしい。その間どうかご無事で。

「天音!...!」
「なに!?聞こえないよ!隼君!」

泣きじゃくっている天音を見て心を痛めるけど、見ていないふりをした。俺たちは奇跡の門ワンダーゲートをくぐって、もとの願い人カンパニー青龍支部まで戻ってきた。

さて、ここからが本番である。





私、神沢天音は気づいたらベッドで寝ていた。とても悪い夢を見ていた気がする。
隼くんと離れてしまうようなそんな夢。

「うーん...。」

あわい青緑色のカバーのついたスマホを取る。そこには端的に隼くんからメッセージが届いていた。

『まだ、寝てたらごめん!
 今日から俺、急に用事が入ってしばらく会えない、しばらくってどれくらいか分からないけどちゃんと帰ってくるから!』

そんなメッセージが。
そんな消えることはないと思っていた。けど、ことはやはり、起きていることに私は気づいていなかった。隼くんが本当にいなくなったという異変に気づいて事を決行したのはこれから4ヵ月後のことである。


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