最期を告げる時計の針は

雪那

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俺は部屋をクロードに出された。そして
「こっちだ。」
と廊下を歩かされる。
なにが、あるんだ?どうして俺だけ連れ出したんだ?
階段まできて、そこからまた別の廊下を進んでいくそして、クロードが一つの部屋の前で止まり、
「こちらへ。」とドアを開けた。
俺が部屋に入るとクロードも後から入り、鍵を閉めた。
「っ!?」
なんで鍵を閉めたんだ!?
「なんで鍵を閉めたんだって顔をしてますね。久しぶりに会いましたね。少年。立派に成長して。」
「クロードさん、これはどういう事ですか?」
「どういうことも何も。あなたはアズリエル王の首を取りに来たのでしょう?」
...
「はぁ?何も言ってるんですか?私はただ単に会いに来ただけ...」
「貴方の本当の名などない。やはり、貴方は表世界へと逃げ込んでいた。」
「な、何を。」
頭がズキッズキッと痛み始めた。
何か、来てはいけない、そんな衝動が、あぁ、なんだこれ、とても苦しくて痛い。
「風谷 隼なんて偽の名だ。」
「や、やめろぉぉおおおおお!」

俺は頭を抑えて蹲った。ただただ、苦しくて痛くて涙が出る。でもどこが苦しくて痛いのかわからない。それを抑えるために
何も考えるな何も考えるな。
抑えろ、抑えろ。
と心の中で唱えた。
そしたら、クロードは部屋の外の人に何か頼んだ。そして、黙って壁にもたれかかった。

ちょっとして、コンコンと音がしてクロードがそっちへ向かった。そしてドアが閉められ、俺の方へ歩いてきて、
「とりあえず、ココアでも飲め。すまなかったな。風谷  隼。それを飲んで落ち着いてくれ。」
と、ココアを渡された。そして、
「私の思うことはやはり本当だった。」
と語り始めた。
「聞いてくれるだろうか。風谷 隼。
 お前は裏世界の者だ。そして、お前はあることがきっかけで表世界に逃げ、平凡に生きていた。と、推測する。」
どうしてそう言いきれるんだろうか。
俺は表世界の人間なのに、何故裏世界の人間だなんて言うのだろうか。
「なぜなら、お前は私が育てた、七賢者セブンスコードの1人だからだ。根拠はお前の私の言葉に対する不審な動き、なにか動揺しているんだろう?」
動揺していることは認めよう。
でも、セブンスコード?なんだそれは。
なんとなく、知りたくない。
「お前はcodenameコードネームゼロ』の名前で通っていた。アズリエル王に仕える特殊暗殺部隊の一員だった。そして、今回お前が裏世界へきたことに関してだがお前が狙いだとして考えると。」

少しクロードは離れて俺の方を向いてこう言った。

codenameコードネームイシスが関与してる可能性が非常に高い。」

...

「誰ですかそれ。」
「本当に何もかも忘れてしまってるのだな。まぁ、あんなこともあったし、無理もない、か。後は自分でなんとかしろ。お前にアズリエル王に悪意がないことはわかっただけでも収穫だ。」
クロードは部屋から出ようとし、壁にもたれかかってココアを飲んでる俺に
「あぁ、あと、」
ポケットから瞬時にナイフを取り出し俺に投げてきた。俺は何が起きてるかわからず、ただ、危機感を感じて、はっと目を瞑った。

カチッとまた例の音が聴こえたんだ。

目を恐る恐る開けると止まったクロードが。
ナイフは俺の目の前にあり、脳天に刺さる直前だった。俺は一瞬身震いしてその場から離れた。ココアを飲み干し、カップを床においた。

動け!
カチッと音がする。

すると、クロードは壁に刺さるナイフを見て
「やはり。」
と呟いた。
「さっきからお前何なんだよ!何がしたいんだ!」
「私は確認したかっただけ。君に用は終わったから、青龍のところへ戻っても構わない。」
「...。なんなんだよ!本当に!」

ただただ不愉快だった。俺は部屋を出て廊下を走っていく。

「強くなりたい、と思ったら私のところへ来なさい。」
と、遠くでクロードの声がしたが聞こえないふりをした。

だって。
信じたくない。
信じたくない。
信じたくない。
俺が平凡な人間じゃないなんて、祐也や天音と対等じゃないなんて。
ただただ安心したくて、祐也とヒールがいるあの部屋へ戻ろうと走った。
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