最期を告げる時計の針は

雪那

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クロードに隼が連れてかれた直後のことだ。
俺はどうしても気になって聞いてしまった。
「あの、王様一つ質問いいですか。」
「なんだい?祐也くん。」
「何故、彼をクロードさんに連れていかせたんですか?」
「こっちにもちょっと都合があってね。」
「その都合って?」
身を乗り出しそうになった俺を姉御が抑える。
「少し言えない感じだろ?祐也、お前も察しろ。」
「すんません、姉御!」
「ハハハ、ヒールも面白い子連れてきたねぇ。元気があってとてもいいと思うよ。」
「アズリエル、恐縮だが勘違いしないでほしい。こいつはただのアホだ。」
「ひどい!」
と、俺が言うと姉御とアズリエル王がお笑いになった。
一通り笑いが終わって、2人は机の上の白いカップに注がれているゴクッと紅茶を飲んだ。俺も飲もうと思ったがあいにく紅茶はなんとなく苦手で飲めない。
「さて、本題に入るとしよう。アズリエル、貴方は誰がこの天音という少女を狙うと思う?」
「...一応、宛はある。神霊人イマジンだ。今の名前はなんだかわからない。居る場所もわからないが、彼女は『呪いを扱う能力』を持っているよ。」
物騒な能力だな。死の呪いなんかでもかけたんだろうか?
「でも、アズリエル、何故その嫉妬の神霊人イマジンだと?」
「それは、クロードに言っちゃいけないって言われたから言えない。」
あっ、まさかの側近に尻しかれてるよ王様。
凄いこと気がついちゃったなぁ。
「まぁ、とにかくその可能性が高いというわけだな。その点も入れて私たちも調査してみるよ。ありがとう、アズリエル。」
「力になれて光栄だよ。ヒール。」
今、少し疑問に思うことが出てきた。何故、この2人は面識があるのか。何故タメ語なのか。聞かずにはいられないタチなので、聞いてみる。
「姉御と王様はなんでそんなに仲がいいんですか?」
「あぁ、なんでかって?
 幼なじみなんだよ。私たちは。」
「幼なじみ!?ということは王様は姉御のこんなことやあんなことも知ってるってこと!?」
「誤解を招く言動をするな。」
姉御のゲンコツが落ちてきた。とても。痛い。王様が紅茶を1口飲んで、俺の飲み物は何がいいか聞いてきた。すごく王様なのに気が効いてるなぁとか思いながら、俺はカフェオレと答えた。

そして、王様は口を開いた。
「あの話をここでしても大丈夫かな。ヒール。」
「大丈夫だろ。こいつはアホだし。」
違う!アホやない!天才だ!
とは言わないでおく。真面目な話しそうだし。
「やっぱり悠久の玉マテリアルが盗まれた件と、空間の歪みは関連してそうかい?」
「おそらく。白虎はなんか知ってそうだっけれど教えてくれなかったからな。でも、もうすぐ麒麟キリンが現れる気がするって言っていたな。」
そういや姉御のこのまえの外出は四神の会議か、この話を聞く限り、今、麒麟という幻獣に当たる者がいないということだな。
悠久の玉マテリアルの一つは黒い仮面ジャックの野郎に盗まれてるからな。あれを取り戻さないといけないんだが、あの野郎が何処にいるのか全くわからない。全てが謎だ。」
「そうかい...。」

その時ガチャっとドアが開いた。
血相を悪くした、隼が息を上がらせてそこに立っていた。そして、俺たちに向かって安心したように笑って膝から崩れ落ちた。
「!?。しっかりしろ!!!隼!」隼のもとへ急いで駆け寄る。
「悪い、アズリエル、今日はもう上がるぞ!また、お茶でも飲もう!」
姉御はそう言ってカチカチっとサンミューズを回し、俺たちはテレポートした。


アジトへ戻って、隼を部屋のベッドに寝かせた。
銀髪で赤と青のオッドアイ、童顔、こいつはかなりのイケメンだと俺は思っている。でも、告白されたことは1回もないらしい。

(こいつ、クロードって奴に何されたんだ?王様の隠してることは一体?)

考える。
そもそもなんで、嫉妬の神霊人イマジンだと想定できたんだ?そいつと隼の彼女は面識あるのか?いや、十中八九ないだろう。隼の話だと彼女さんは恨まれるような性格の人ではないはずだ。

では何故?

と思った時に一つの答えに結びつく。彼女さんのことを知らなくても恨める方法。それは
そいつが隼に好意を寄せていたが、彼女さんと隼がくっついたことにより嫉妬して殺意が芽生えたこと。

こうすると納得がいく。でも、そいつはどこで隼と知り合った?

はっ、と俺は隼のことで思い出す。
隼が俺の住んでる街へ引っ越してきたのは10歳の時。その時はなんか腹立つすんごく無口な奴だったっていうのは覚えている。
隼はどこから来たんだっけ?


思い出せない。

もしかしたら、隼が俺の街に来る前に何かあったのかもしれない。
まぁいいや、隼が目を覚ましたら直接聞いてみよう。






隼は1週間も目を覚まさなかった。




チェリンも俺も心配で心配でたまらなかった。
俺たちは隼が目を覚ました時は号泣して隼にすっごく不思議な顔をされた。いや、お前だよ!お前のせいで泣いてんだ!心配させやがって!




夢を見るというよりは、今回は悪夢だったり、良い夢だったり。
久しぶりに普通の全くありえないような、これだれ!?みたいな夢を見た。

でも、誰かが俺が起きる直前にこんなことを言った。
「この人殺し。」




目が覚めると、チェリンと祐也が号泣していて、ドア皮の壁には少しクマが出来ているヒールの姿もあった。
「2度と目を覚まさないんじゃないかって、怖かったなのー!」
「俺もー!」
チェリンはわかるけど、祐也、お前、精神年齢いくつだ!俺と同い年だろうが!
うわぁぁぁん!と二人共泣くわ泣くわ。
「まぁ、二人共落ち着け。隼が困った顔をしている。とりあえず隼は無事なら顔洗ったりだとか昼食とかとってすっきりしてこい。話はそれからだ。」
「はい。行ってきます。」

ベッドから降りて洗面所へ向かう。ついて行こうとした祐也をヒールが止めているのが視界に入る。
お前はどこまでついてくる気だったんだよ...。

洗面所で顔を洗う。
ふと鏡を見ると血みどろになって、鋭い眼光を放った俺がそこにいた。
!?
瞬きするとそれはいなくなっていたが、俺に込み上げる吐き気。うっとなったが、とりあえず堪えた。またあいつらに心配されるからだ。
一体...なんなんだよ...。

あと。
俺はクロードの話を思い返していたが、いまいちしっくりこないし、信じられなかった。
信じたくなかった。
信じたくなかった。

とりあえず待ってる祐也に申し訳ないので食堂に来ると、
「よう!顔は洗えたか!?隼?
 って少し顔色悪いな!」
「水だけ飲みさせて。昼食はいらない。」
そう言うと、祐也はコップに水を注いできた。俺はその水を半分だけ飲んだところで
「なあ。」
と声がかかった。祐也の声だ。
「なんだ?」
「お前、引っ越してきたよな。どこから引っ越してきたんだ?」
「それは○○小学校...。」
あれ?そんな小学校ってあったか?なんて思ったけど無理にそう思い込むことにした。だって、親なしで生活なんかしてないのは覚えてる。顔は思い出せないけど、ちゃんと、保護者はいたはずだ。
「本当に、そうなのか?」
また、念を押して祐也が聞いてくる。
俺はイライラして
「そうだって言ってんだろ!
 何度も聞くなよ!」
「だって、そう、お前挙動不審。
 ...俺が悪かった。ごめん、隼。」
俺はその言葉を聞かないうちに自分の部屋へ向かった。ドアを開いてベッドにダイブした。
布団は俺の友達!
よし。寝て嫌なことは忘れよう。



怒られちった。
珍しいな、隼が怒るなんて。、
「んー...。」
なんか、アイツは悩んでるようだったな。

アイツは多分当分口を聞いてくれないだろう。当分と言っても2、3日くらいかな?
ちょうど俺も仕事ないし...。
俺は少し隼のことについて、探ることに決めた。

俺は姉御の部屋のドアを開けた。そこには山積みの資料と、TVと、まあ整理はされてるんたけど、多分収納スペースより、物があるんだろう。ごちゃごちゃした空間がそこにはあった。机に座っている姉御に声をかける
「姉御、やっぱり、戸籍って何処にあるかっていったら、王城だよな。」
「当たり前だろう、まぁ、一部はここにあったりするけどな。どうしたんだ?」
「へへっ!ちょっとね。」
「?。余計なことするなよ?」
「わかってるって姉御!」
そう言ってパタンと俺は姉御の部屋の扉を閉めた。


よし、潜入捜査のはじまりだ!
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