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王子と従兄弟の生活
王子6
しおりを挟む食べ終わった僕は久しぶりに兄様と一緒に出かけた。
目的地は町の図書館だ。
そこで神器が出てくる御伽噺の本をいくつか読んだ。
大鎌は今は大鎌の形になっているけど、実際は定まった形はないようだ。杖だったり、剣だったり、懐中時計だったり、色々なものになって御伽噺に出てきている。
それらを扱うのは王子や王女ばかりで、ある一人を除けばみんな子供だった。
ある一人、というのは初代魔王…時の神クロノス。
彼女が世界を半分にした時の話にこの神器は出てきた。
そう、この大鎌でクロノスは世界を二つにした。それほどの強い力をこの神器が持っている。
「もし、これほどの力を持つ神器の主となったのなら、貴方はその力を正しく使えるようにならなければなりません。」
本を閉じた兄様は僕を見つめている。
「力を正しく使うには、どうしたらいいのかな?」
「さぁ。私にはわかりかねます。どの書物にも書いてませんから。」
「そんな…」
「貴方次第で神器は変わるのではないでしょうか? 神器のかつての持ち主たちは、性格もバラバラのようですし。」
うぅ…、僕次第であれが変わる?そんなこと言われてもどうすればいいかわからないよ。
僕は兄様が席を立っていったことにも気付かずに悩み続けた。気付けば夕方だったから、慌てて家に帰ると兄様が夕食を作って待っていた。もう席に着いている兄様は僕を見て微笑んでいた。
久しぶりに見た兄様の微笑みに、僕は驚きながらも手を洗って食卓に着く。しばらくすると兄様の笑みは消えて無表情に戻ってしまったけど、一体何に対して笑っていたのだろうか。
二人そろってお祈りをした後、パンと温かいスープを味わって食べていく。兄様は一度手を止めて話しかけて来た。
「収穫はありましたか?」
「全然。何をやればいいのかもわからなかった」
「そうですか。まぁゆっくり考えればいいと思いますよ。人生は飽きるほどに長いのですから」
そう言って兄様は再び食事を進めたのだった。
強くなろう。兄様を守れるように。
~二年後~
神器の持ち主になってからずっと俺は強くなるために剣を習ったり、魔法を習ったりしていた。大切な人を守れるように。
だというのに、なんだこれは。
俺が家を出ている間に兄様は叔母さんに首を絞められていた。
結局俺は、何も守れてないじゃないか!
「やめろ!」
俺が声をあげると、叔母さんは兄様を手放し、代わりに俺を捕まえて殴ってきた。鍛え上げた身体にも痛覚はある。じわじわと鈍い痛みが殴られた頬にくる。
「何をしてるんだ! 貴方はそれでも母親なのか?!」
「子は親の言うことを聞くべきよ。言うことを聞かなかったからお仕置きをするのは当たり前でしょう?」
駄目だ。この人は自分が絶対的に正しいと思い込んでしまっている。
叔母さんが満足してまたどこかへと去っていった後、兄様は咳き込みながら立ち上がった。
「けほっ、……ヴェル。あの人には何を言っても無駄です」
「兄様…」
僕は兄様を抱きしめて、前から考えていたことを話す。
「兄様、もう逃げよう。ずっとこんなところにいたら、兄様がしんじゃう・・・」
「もう、死んでいるのと同じようなものなのに?」
そこで僕はきっと、初めて兄様の本音を聞いた。
離れても、兄様と目が合うことはなかった。
「私は貴方が羨ましい。生みの両親に愛されて育った貴方が」
「え、」
「だからでしょうか、私は貴方が憎くて仕方がないのです」
口元は緩く弧を描き、微笑んでいるのに兄様は泣いていた。
「出ていきなさい。私が手をあげてしまわないうちに」
ぎゅっ、と腕を抱きながら兄様は震える声で命令する。これはきっと、兄様の最初の我が儘で、俺が最後にしてあげられることなんだろう。
でも、やっぱり面と向かって好きな人に「憎い」と言われたことはショックで、とてもじゃないが立ち直れそうになかった。
そうして、俺はそのまま荷物を持つことなく家を出た。あれは全て兄様が俺のために用意してくれたもので、いろんな感情が入りすぎている。未練がましく想い続けるのは辛いことだ。
その日以降、俺は国を出て、魔界から離れた。
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