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王子と従兄弟の生活
そして彼は旅立つ
しおりを挟む八年の時が経ち、成人を迎えたゼウス。
彼は立派な貴族の青年となっていた。
しかし、子供の頃の出来事は彼のトラウマになり、彼は女性に触れることも同性に近づくこともできず、婚約者はいなかった。
彼の容姿だけを見れば、あの愚王とそっくりなこともあり、あの母親の妄言はあながち間違いではなかったのではないか、と囁かれるが、彼が誰かに近づこうとしなかったこともあり、友人の一人さえいなかった。
故に彼への悪評や誤解も解かれることはなかった。
そして彼自身、その悪評や誤解を解く行動はしなかった。
彼の周りにいて、彼を理解できたのは、彼が生きるための知識を蓄えた図書館を管理する平民だけだった。
「母上、行ってまいります」
「気をつけて行ってらっしゃい。」
彼は今日、魔界から出ることを決意した。
母親と初めて家族らしい会話をひとつして、そして初めて母に抱きしめられた。彼は貼り付けた笑顔の仮面の下で何を思っただろうか。
母は瞳を涙で濡らして、名残り惜しげに手放した。
母を一瞥した彼は、それ以上何も言うことなく家を出た。
家を出て少ししたところで森の中のに入ると小屋がある。
そこに予め床に刻んでいた転移の魔法陣を起動させにかかる。
彼の有する魔力は少なく、持ち物は茶色いトランクがひとつあるのみ。目を閉じて深呼吸をすると、ゆっくりと魔法陣に魔力を流していく。
何時間か経ったような、数分しか経っていないような時の流れの中に身を委ね、もう一度目を開いたときにはもう別の世界だった。
一面に広がる青い空。
空を流れる雲は白く、山は緑に溢れている。
彼はこの世界の空気を肺いっぱいに吸い込む。
ここが彼の夢見た世界。
人間の住む下界で、彼を知る人が誰もいない世界。
己の名すら自ら捨てた彼は、今まで見たことのない美しい景色に感嘆の息をつきながら、この世界で暮らしていく決意を固めた。
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