ー MEMORIES OF YOU ー 決して君を忘れない

歴野理久♂

文字の大きさ
1 / 29

モノローグ ①

しおりを挟む
──潮風の届く丘にて

 目映まばゆいばかりの初夏の光。
 僕はそっとひたいに右手をかざし、仔犬とたわむれる和志の姿を目で追い掛ける。
 広い海原を見渡せるこの丘に、僕たちはもう何回、こうして一緒に来ただろう。

 季節が変わり人が変わっても、僕の中の君は永遠に変わりはしない。
 春にはタンポポ、そして秋にはコスモス──この丘を飾る花々が季節にいろどりを変えても、
こうして和志とこの丘に立つ時、
僕の胸に秘められた君との思い出は、いつも変わらずよみがえる。

「おーい!そんなに走って転ぶなよー!」

 僕は満面の笑みで和志に声を掛けた。
 和志は屈託も無い笑顔で僕に手を振り、飽く事もなくこの丘を駆けめぐる。
──この至福の時が、いつまで続いてくれるのか。
 幸せな時間はいつか必ず過ぎ去ってしまう事を、僕は悲しいほど知っている。

 人には必ず別れがあるから。

 たとえどんなに藻掻もが足掻あがいても、決して越える事の出来ない、厚い壁が有るから。

(和志……君ともいつか、別れの時を迎えるんだね……)

 広い海原から吹き渡る潮風に身をゆだね、僕は微かにまつ毛を濡らす。


(どうしてこんなに、君を愛する事が出来るのだろう)


 日の光を一杯に受けて、揺れる朝凪あさなぎの輝きのように。
 この広大な空に浮かぶ、無数の白い雲のように。
──いだいてもいだき切れぬほどの、君との愛しき思い出の数々。

──Memories  of  you

 君がいたから、僕は生きて行ける。


しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結済】あの日、王子の隣を去った俺は、いまもあなたを想っている

キノア9g
BL
かつて、誰よりも大切だった人と別れた――それが、すべての始まりだった。 今はただ、冒険者として任務をこなす日々。けれどある日、思いがけず「彼」と再び顔を合わせることになる。 魔法と剣が支配するリオセルト大陸。 平和を取り戻しつつあるこの世界で、心に火種を抱えたふたりが、交差する。 過去を捨てたはずの男と、捨てきれなかった男。 すれ違った時間の中に、まだ消えていない想いがある。 ――これは、「終わったはずの恋」に、もう一度立ち向かう物語。 切なくも温かい、“再会”から始まるファンタジーBL。 全8話 お題『復縁/元恋人と3年後に再会/主人公は冒険者/身を引いた形』設定担当AI /c

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

僕の恋人は、超イケメン!!

BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

ラピスラズリの福音

東雲
BL
*異世界ファンタジーBL* 特別な世界観も特殊な設定もありません。壮大な何かもありません。 幼馴染みの二人が遠回りをしながら、相思相愛の果てに結ばれるお話です。 金髪碧眼美形攻め×純朴一途筋肉受け 息をするように体の大きい子受けです。 珍しく年齢制限のないお話ですが、いつもの如く己の『好き』と性癖をたんと詰め込みました!

唇を隠して,それでも君に恋したい。

初恋
BL
同性で親友の敦に恋をする主人公は,性別だけでなく,生まれながらの特殊な体質にも悩まされ,けれどその恋心はなくならない。 大きな弊害に様々な苦難を強いられながらも,たった1人に恋し続ける男の子のお話。

俺の親友がモテ過ぎて困る

くるむ
BL
☆完結済みです☆ 番外編として短い話を追加しました。 男子校なのに、当たり前のように毎日誰かに「好きだ」とか「付き合ってくれ」とか言われている俺の親友、結城陽翔(ゆうきはるひ) 中学の時も全く同じ状況で、女子からも男子からも追い掛け回されていたらしい。 一時は断るのも面倒くさくて、誰とも付き合っていなければそのままOKしていたらしいのだけど、それはそれでまた面倒くさくて仕方がなかったのだそうだ(ソリャソウダロ) ……と言う訳で、何を考えたのか陽翔の奴、俺に恋人のフリをしてくれと言う。 て、お前何考えてんの? 何しようとしてんの? ……てなわけで、俺は今日もこいつに振り回されています……。 美形策士×純情平凡♪

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

処理中です...