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第16章 迷走の果てのため息
No,180 え!亮ちゃんと再会?
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【これは30歳の時のお話】
俺が会社の後輩──広橋君に辛い片想いをして悩んでいた頃。
30歳の盆休み──。
ななんと!
あの亮ちゃんと再会した!大学2年の梅雨の頃、俺をこっぴどく振りやがったあの亮ちゃんと──!
それは久し振りの再会だった。
俺はお盆休みで帰省していた。
実家のある町内会では周辺のいくつかの町内会と連携し、案外ちゃんとした花火大会が催される。
──開始は19時30分。
がっちり場所取りをしなくても結構間近で見られるのが魅力だった。俺はラフな格好で散歩がてらに行ってみた。
打ち上げ場所からほど近い公園に夜店が並び、家族連れが集まっている。
(亮ちゃんだ!!)
一目で分かった。
ふらりと甚兵衛姿──浴衣姿の妻と思しき女性と、更に幼年の女の子もいる。
そう言えば数年前に耳にした。
──結婚して子供も出来たって。たしか、首都圏に住んでいると聞いていたけど……。
(そうか、お盆で帰省してたか。花火大会でばったり会っても不思議じゃないな)
気付いて直ぐに身を隠そうとしたけど、どうやら向こうも見付けたらしい。
俺たちは離れた場所から暫し見詰め合った。
(10年?……亮ちゃん、もうすっかりおじさんだね。でも、念願の家族を作れた)
思いがけなく会ってしまったけれど、もう今は全然平気。
時効だね……。
今なら笑顔で再会できる?
うん、でもそれはしない方がきっといい。
(会えて良かった。でも…………
さよなら……)
打ち上がる花火を背にして、俺はとぼとぼと実家に帰った。泣くほどじゃないけど、ちょっとだけセンチメンタル。
──ベッドに寝転び、花火の音だけを聞いていた。
(亮ちゃん……家族が出来て良かったね。今は幸せ?)
って、瞳を閉じた──。
………………って、
フィクションならここで余韻で終わるのに、そうも行かない。
これは実際のお話。
やって来ちゃうんですよ!!
無神経な亮ちゃんだから!!
階下から母の声が響き渡った。
「理久~!斜めお向かいの亮ちゃんが来たわよ~」
って、何年かぶりの他人を気軽に家に上げるなよ母さん!
ったく!こっちの事情も知らずに、お構いなしのご近所コミュニティ恐ろし!!
勝手知ったる他人の家。階段を昇る足音がドカドカと無遠慮に近づく。
亮ちゃんが俺の部屋に入って来ちゃった!
「おう理久、久し振りだな」
「亮ちゃん!なんて言って出てきた?」
「そのまんまだよ。斜め向かいの幼馴染みに会ってくるって」
「ばかじゃね?普通、来ないだろが。だって、僕達………」
(ん?)瞬時に気付いた。
「……って、おい亮ちゃん!身体どうした?!」
「おう、気付いたか?この頃すっかり筋トレにはまってんだ」
さっきは遠目で気付かなかったけれど、近くで見ると身体から発するオーラが凄い。甚兵衛からむき出た腕、足、そして合わせから見える胸。
「ムキムキじゃないか!」
って、思わず声を発してしまった。
何だこりゃマッチョ!
どうする?理久!
「あ、見るか?」
って、亮ちゃんは嬉しそうに脱ごうとする。
「いいよ!やめろ!」
目をそらす僕の顔は真っ赤になっていたと思う。
「理久、相変わらず若いな。どう見ても30には見えない」
「うるさい、来月には31だ」
「それに比べて、俺はおじさんだよな」
「そうだね!……え、だけど」
「だけど何だよ?」
僕はうっかり「かっこいい」って言いそうになった。
(だめだ!しっかりしろ僕!)
って、あ、未だに僕、亮ちゃんの前では自分のこと僕って言っちゃうんだ……。
思い出すのは付き合っていた大学1年の頃じゃなくて、なぜかずっと昔の子供の頃。
──亮ちゃんとはずっと兄弟のように一緒に育った。懐かしい数々の思い出が瞬時に浮かび上がり、僕の胸はキュンとした。
(だめだ!しゃきっとしろ!)
俺は──そう!僕じゃなくて俺は!冷静そうな表情を作って亮ちゃんにたずねた。
「亮ちゃん、何しに来たんだよ……」
俺が会社の後輩──広橋君に辛い片想いをして悩んでいた頃。
30歳の盆休み──。
ななんと!
あの亮ちゃんと再会した!大学2年の梅雨の頃、俺をこっぴどく振りやがったあの亮ちゃんと──!
それは久し振りの再会だった。
俺はお盆休みで帰省していた。
実家のある町内会では周辺のいくつかの町内会と連携し、案外ちゃんとした花火大会が催される。
──開始は19時30分。
がっちり場所取りをしなくても結構間近で見られるのが魅力だった。俺はラフな格好で散歩がてらに行ってみた。
打ち上げ場所からほど近い公園に夜店が並び、家族連れが集まっている。
(亮ちゃんだ!!)
一目で分かった。
ふらりと甚兵衛姿──浴衣姿の妻と思しき女性と、更に幼年の女の子もいる。
そう言えば数年前に耳にした。
──結婚して子供も出来たって。たしか、首都圏に住んでいると聞いていたけど……。
(そうか、お盆で帰省してたか。花火大会でばったり会っても不思議じゃないな)
気付いて直ぐに身を隠そうとしたけど、どうやら向こうも見付けたらしい。
俺たちは離れた場所から暫し見詰め合った。
(10年?……亮ちゃん、もうすっかりおじさんだね。でも、念願の家族を作れた)
思いがけなく会ってしまったけれど、もう今は全然平気。
時効だね……。
今なら笑顔で再会できる?
うん、でもそれはしない方がきっといい。
(会えて良かった。でも…………
さよなら……)
打ち上がる花火を背にして、俺はとぼとぼと実家に帰った。泣くほどじゃないけど、ちょっとだけセンチメンタル。
──ベッドに寝転び、花火の音だけを聞いていた。
(亮ちゃん……家族が出来て良かったね。今は幸せ?)
って、瞳を閉じた──。
………………って、
フィクションならここで余韻で終わるのに、そうも行かない。
これは実際のお話。
やって来ちゃうんですよ!!
無神経な亮ちゃんだから!!
階下から母の声が響き渡った。
「理久~!斜めお向かいの亮ちゃんが来たわよ~」
って、何年かぶりの他人を気軽に家に上げるなよ母さん!
ったく!こっちの事情も知らずに、お構いなしのご近所コミュニティ恐ろし!!
勝手知ったる他人の家。階段を昇る足音がドカドカと無遠慮に近づく。
亮ちゃんが俺の部屋に入って来ちゃった!
「おう理久、久し振りだな」
「亮ちゃん!なんて言って出てきた?」
「そのまんまだよ。斜め向かいの幼馴染みに会ってくるって」
「ばかじゃね?普通、来ないだろが。だって、僕達………」
(ん?)瞬時に気付いた。
「……って、おい亮ちゃん!身体どうした?!」
「おう、気付いたか?この頃すっかり筋トレにはまってんだ」
さっきは遠目で気付かなかったけれど、近くで見ると身体から発するオーラが凄い。甚兵衛からむき出た腕、足、そして合わせから見える胸。
「ムキムキじゃないか!」
って、思わず声を発してしまった。
何だこりゃマッチョ!
どうする?理久!
「あ、見るか?」
って、亮ちゃんは嬉しそうに脱ごうとする。
「いいよ!やめろ!」
目をそらす僕の顔は真っ赤になっていたと思う。
「理久、相変わらず若いな。どう見ても30には見えない」
「うるさい、来月には31だ」
「それに比べて、俺はおじさんだよな」
「そうだね!……え、だけど」
「だけど何だよ?」
僕はうっかり「かっこいい」って言いそうになった。
(だめだ!しっかりしろ僕!)
って、あ、未だに僕、亮ちゃんの前では自分のこと僕って言っちゃうんだ……。
思い出すのは付き合っていた大学1年の頃じゃなくて、なぜかずっと昔の子供の頃。
──亮ちゃんとはずっと兄弟のように一緒に育った。懐かしい数々の思い出が瞬時に浮かび上がり、僕の胸はキュンとした。
(だめだ!しゃきっとしろ!)
俺は──そう!僕じゃなくて俺は!冷静そうな表情を作って亮ちゃんにたずねた。
「亮ちゃん、何しに来たんだよ……」
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