245 / 284
第19章 スピンオフ・夏生物語「今明かされる夏生の愛と苦悩の真実」って、おい理久ふざけんな!オレのこと勝手に書くなよ!SP
No,244 夏生、おいたちを語る
しおりを挟む
オレ、春川夏生。
幼い頃に父を亡くし、母と兄との三人家族で育った。父の顔は写真では知っているけど、実際の記憶となるとおぼろげだ。
オレ、昔から大人の男性に惹かれていた。それはきっと、父親がいないからだと思ってる。
友達の家に遊びに行って、その家のお父さんがいるとドキドキした。
それに街を歩いていても、同じ年頃の子がお父さんと仲良く手を繋いだり肩車されたりしているのを、胸が締め付けられるような思いでいつも見ていた。
そんなオレが思春期を迎え、初めて好きになったのが大人の男の先生だったから、しかもかなりなオジさんだったから、そりゃ子供ながらにパニックだった。
それまで普通に女の子が好きだと思っていたのに、そんなの恋でも何でもなかった。
その先生の事が好きになってからと言うもの、これが本当に人を好きになる事なんだって自覚した。
──でも、それはオレにとっては辛い現実だった。
実はオレの身近に、自分がゲイだと自覚しながら深刻にも考えず、ろくに苦悩もしなかった~と豪語する極楽トンボがいるけど異常だ。
奴は自分を繊細で神経質な母親似だと思い込んでうっとりしているが、オレから見るとあの原始人並みの鈍感さは明らかに父親ゆずりだ。
その証拠に何かあった時のあのとぼけたキョトン顔は、親子二人並ぶとまるでマトリョーシカだ。うける。
あ、話をもどそう──。
同級生は皆、クラスの女子の話題に夢中だった。誰が可愛いとか誰のおっぱいがでかいとか話している。
なのにオレはずっと年上の、言うならオジさんの男性教諭に胸がドキドキするのだから衝撃だった。明らかに皆と違うと自覚した。
そんな時、同級生の一人が余計な事を言ってくれた。
「でもさ、誰が可愛いって、その辺の女子より夏生の顔が一番可愛いんじゃね?」
って──そしてその発言は、クラスの中でオレの好感度を上げるものでは全くなかった。
「そうだよな!夏生は女みたいな顔をしてるからな」
「男のくせに女みたいな顔して、きもいよな!」
「そうだよ、そう言やこいつ、前からツンケンしていてまるで姫だな」
「あ、そうだよ、ちょっと勉強が出来るからってお高くとまりやがって、まさに姫だ」
「そうだ!夏生姫だ!」
悔しいけれど、その頃のオレには言い返す術も無かった。オレはそれまで、決して気の強いタイプではなかったのだ。
そしてほんの一人が思い付きで言ったそのひと言を切っ掛けに、クラス中の男子から「姫」呼ばわりされる日々が始まった。
夏生姫って──。
そしてそれは、やがて女子にも波及してしまった。
「夏生姫、男のくせにまつ毛が長くてキモ!マスカラ付けてんじゃない?」
「どうせなら姫らしくスカートでも履けば?もっと可愛いくなれるわよね」
「女装してテレビに出ればうけるのに~」
──なんて、女子からもからかわれるようになってしまったのだ。
それは明らかにいじめの要因となり得たが、オレには自分がいじめられるなんて現実は受け入れ難かった──。
オレはそれまでの「僕」をやめて、なるべく乱暴に「オレ」って言うように変えた。するとだんだん、言葉遣いそのものが粗野になってしまったようにも感じる。
女みたいな顔と言われるのが嫌で、必要以上に攻撃的になった。「姫」とあだ名されて、むしろ気が強くなって行ったように思う。
あまり笑わなくなり、いつもにらんだような顔付きになった。眼つきもきついと言われるようになって来た。
それでも、一度付いたあだ名を消滅させる事は中々出来ない。
本当に、姫とあだ名されるのが嫌で嫌で仕方がなかった!
中学校に上がっても、オレは「姫」と呼ばれ続けた。
地元の公立中学校は同じ学区の小学校からの持ち上がりだったから、そうそうあだ名が払拭される事はなかった。
幼い頃に父を亡くし、母と兄との三人家族で育った。父の顔は写真では知っているけど、実際の記憶となるとおぼろげだ。
オレ、昔から大人の男性に惹かれていた。それはきっと、父親がいないからだと思ってる。
友達の家に遊びに行って、その家のお父さんがいるとドキドキした。
それに街を歩いていても、同じ年頃の子がお父さんと仲良く手を繋いだり肩車されたりしているのを、胸が締め付けられるような思いでいつも見ていた。
そんなオレが思春期を迎え、初めて好きになったのが大人の男の先生だったから、しかもかなりなオジさんだったから、そりゃ子供ながらにパニックだった。
それまで普通に女の子が好きだと思っていたのに、そんなの恋でも何でもなかった。
その先生の事が好きになってからと言うもの、これが本当に人を好きになる事なんだって自覚した。
──でも、それはオレにとっては辛い現実だった。
実はオレの身近に、自分がゲイだと自覚しながら深刻にも考えず、ろくに苦悩もしなかった~と豪語する極楽トンボがいるけど異常だ。
奴は自分を繊細で神経質な母親似だと思い込んでうっとりしているが、オレから見るとあの原始人並みの鈍感さは明らかに父親ゆずりだ。
その証拠に何かあった時のあのとぼけたキョトン顔は、親子二人並ぶとまるでマトリョーシカだ。うける。
あ、話をもどそう──。
同級生は皆、クラスの女子の話題に夢中だった。誰が可愛いとか誰のおっぱいがでかいとか話している。
なのにオレはずっと年上の、言うならオジさんの男性教諭に胸がドキドキするのだから衝撃だった。明らかに皆と違うと自覚した。
そんな時、同級生の一人が余計な事を言ってくれた。
「でもさ、誰が可愛いって、その辺の女子より夏生の顔が一番可愛いんじゃね?」
って──そしてその発言は、クラスの中でオレの好感度を上げるものでは全くなかった。
「そうだよな!夏生は女みたいな顔をしてるからな」
「男のくせに女みたいな顔して、きもいよな!」
「そうだよ、そう言やこいつ、前からツンケンしていてまるで姫だな」
「あ、そうだよ、ちょっと勉強が出来るからってお高くとまりやがって、まさに姫だ」
「そうだ!夏生姫だ!」
悔しいけれど、その頃のオレには言い返す術も無かった。オレはそれまで、決して気の強いタイプではなかったのだ。
そしてほんの一人が思い付きで言ったそのひと言を切っ掛けに、クラス中の男子から「姫」呼ばわりされる日々が始まった。
夏生姫って──。
そしてそれは、やがて女子にも波及してしまった。
「夏生姫、男のくせにまつ毛が長くてキモ!マスカラ付けてんじゃない?」
「どうせなら姫らしくスカートでも履けば?もっと可愛いくなれるわよね」
「女装してテレビに出ればうけるのに~」
──なんて、女子からもからかわれるようになってしまったのだ。
それは明らかにいじめの要因となり得たが、オレには自分がいじめられるなんて現実は受け入れ難かった──。
オレはそれまでの「僕」をやめて、なるべく乱暴に「オレ」って言うように変えた。するとだんだん、言葉遣いそのものが粗野になってしまったようにも感じる。
女みたいな顔と言われるのが嫌で、必要以上に攻撃的になった。「姫」とあだ名されて、むしろ気が強くなって行ったように思う。
あまり笑わなくなり、いつもにらんだような顔付きになった。眼つきもきついと言われるようになって来た。
それでも、一度付いたあだ名を消滅させる事は中々出来ない。
本当に、姫とあだ名されるのが嫌で嫌で仕方がなかった!
中学校に上がっても、オレは「姫」と呼ばれ続けた。
地元の公立中学校は同じ学区の小学校からの持ち上がりだったから、そうそうあだ名が払拭される事はなかった。
応援ありがとうございます!
32
お気に入りに追加
30
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる