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第19章 スピンオフ・夏生物語「今明かされる夏生の愛と苦悩の真実」って、おい理久ふざけんな!オレのこと勝手に書くなよ!SP
No,246 夏生、ルカと名乗る
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新宿二丁目に足を踏み入れて、直ぐに行き付けの店が出来た。
Blue night──出会った人達に連れてこられて、他にも何軒かの扉を開けたけど、ここが一番しっくりときた。
カウンターのケンちゃんが優しくて親しみやすい。
「はじめまして、春川と申します」
なんて緊張してたら、
「かたいな~春川君。ええっと、ハ・ルカ・ワ?
ルカか?ルカでいいよね?」
って、オレの愛称を決めてくれたのがケンちゃんだった。
「姫」より「ルカ」の方がずっといい!
(あ~あ、年上の人と付き合うのも、何か違うのかな~)
なんて思い始めて憂鬱だった頃、そんなオレの心を揺さぶるあいつが現れた。
──色白スケベ、あ、いえ、
理久だ。
出会ったころ理久はまだ本名を名乗らず、二丁目での通り名は「キノちゃん」だった。
※──────────※
その夜、オレは Blue night のカウンターの奥で一人っきりを持て余していた。
上京してわずか数カ月。なのに色々な事が有り過ぎて、オレは少しナーバスになっていたのかも知れない。
「いらっしゃいませ」
マスターの落ち着いた声が静かに響く。
反射的に入口に目をやると、同年代と思われる二人組が立っていた。
「今晩は。僕、久し振りなんですけど……」
「よく覚えてるよ。タッチ君だね?どうぞ好きなところへ座って」
「ありがとうございます」
(あれ?見た事のない二人組だな)
タッチと呼ばれた地味な子の隣に、いかにもオネエなド派手な奴が立っていた。ひょろりとガリ細で背が高い。
てか、それより何だ?あのギラギラの金髪は!!
オレは瞬時に不快を感じた。
(あれは周りにちやほやされて勘違いしている、典型的なあほオネエだな)
特に服装が派手なわけじゃないけれど、そうだな、なんだか存在そのものが一歩前に踏み出している感じ──傲慢な孔雀のような奴だった。
(どう見ても面倒くさそう。関わらない方が得策だ……)
ところがそいつ、ずかずかとオレの方へと向かって来たのだ。L字角のギリ端っこ、つまりオレの横顔を間近に見れる席に着きやがった。
「いらっしゃい♪」
ケンちゃんが地味な方におしぼりを差し出した。
「ありがとう、ケンちゃん」
「タッチ、久しぶり」
なるほど、タッチって呼ばれた地味な方は常連のようだな。
「こちらは?」
と、ケンちゃんがタッチに金髪の事をたずねた。
「友達のキノちゃん」
「よろしく、キノちゃん。ケンです」
ケンちゃんがキノちゃんとか言う金髪におしぼりを差し出した。
「ありがとうございます」
(なるほど、この金髪は初来店なんだな)
その時、キノちゃんとか言う金髪がフッと笑顔を見せたのだ。
(え?あ、間近で見るとこの金髪、笑顔はちょっと可愛いかも……)
ケンちゃんがたずねた。
「その金髪はなんの金髪?」
「何の金髪って?」
「ほら、バンドの金髪とかヤンキーの金髪とか、色々じゃない?」
「ああそうか、うん、これはね、ヅカ真似の金髪」
「は~ぁ、そうなんだね。いるいる、この街でも時々見掛けるよ?」
(え?ヅカ?何だそりゃ?マグロのヅケじゃなくて?)
ケンちゃんはそのひと言で理解したらしく、シンクの方へと戻って行った。
………………う、う、ううっ!
それにしても何だこの金髪!
オレの横顔を食い入るように
にガン見しやがって!
何だよ!オレに文句でも付けようってか!
オレは堪らずキッ!と金髪の方へ向き直り
「何だよ!じろじろ見るなよ!」って、思わず気色ばんでしまった!
なのに金髪!ひるむどころか見た事もないような満面の笑みを浮かべやがって、いけしゃあしゃあとのたもうた。
「君があんまり綺麗だから、つい見入っちゃった。
僕キノちゃん。君は?」
(あ!こいつ、綺麗だなんて、オレの一番イヤな呪いの言葉を吐きやがったな!)
オレは躍起となって言い返した。
「はぁ?自分をちゃん付けって、頭軽くない?ちょっと可愛いからっていい気になるなよ!」
(あ、やば!口滑らせて可愛いなんて言っちゃった!)
Blue night──出会った人達に連れてこられて、他にも何軒かの扉を開けたけど、ここが一番しっくりときた。
カウンターのケンちゃんが優しくて親しみやすい。
「はじめまして、春川と申します」
なんて緊張してたら、
「かたいな~春川君。ええっと、ハ・ルカ・ワ?
ルカか?ルカでいいよね?」
って、オレの愛称を決めてくれたのがケンちゃんだった。
「姫」より「ルカ」の方がずっといい!
(あ~あ、年上の人と付き合うのも、何か違うのかな~)
なんて思い始めて憂鬱だった頃、そんなオレの心を揺さぶるあいつが現れた。
──色白スケベ、あ、いえ、
理久だ。
出会ったころ理久はまだ本名を名乗らず、二丁目での通り名は「キノちゃん」だった。
※──────────※
その夜、オレは Blue night のカウンターの奥で一人っきりを持て余していた。
上京してわずか数カ月。なのに色々な事が有り過ぎて、オレは少しナーバスになっていたのかも知れない。
「いらっしゃいませ」
マスターの落ち着いた声が静かに響く。
反射的に入口に目をやると、同年代と思われる二人組が立っていた。
「今晩は。僕、久し振りなんですけど……」
「よく覚えてるよ。タッチ君だね?どうぞ好きなところへ座って」
「ありがとうございます」
(あれ?見た事のない二人組だな)
タッチと呼ばれた地味な子の隣に、いかにもオネエなド派手な奴が立っていた。ひょろりとガリ細で背が高い。
てか、それより何だ?あのギラギラの金髪は!!
オレは瞬時に不快を感じた。
(あれは周りにちやほやされて勘違いしている、典型的なあほオネエだな)
特に服装が派手なわけじゃないけれど、そうだな、なんだか存在そのものが一歩前に踏み出している感じ──傲慢な孔雀のような奴だった。
(どう見ても面倒くさそう。関わらない方が得策だ……)
ところがそいつ、ずかずかとオレの方へと向かって来たのだ。L字角のギリ端っこ、つまりオレの横顔を間近に見れる席に着きやがった。
「いらっしゃい♪」
ケンちゃんが地味な方におしぼりを差し出した。
「ありがとう、ケンちゃん」
「タッチ、久しぶり」
なるほど、タッチって呼ばれた地味な方は常連のようだな。
「こちらは?」
と、ケンちゃんがタッチに金髪の事をたずねた。
「友達のキノちゃん」
「よろしく、キノちゃん。ケンです」
ケンちゃんがキノちゃんとか言う金髪におしぼりを差し出した。
「ありがとうございます」
(なるほど、この金髪は初来店なんだな)
その時、キノちゃんとか言う金髪がフッと笑顔を見せたのだ。
(え?あ、間近で見るとこの金髪、笑顔はちょっと可愛いかも……)
ケンちゃんがたずねた。
「その金髪はなんの金髪?」
「何の金髪って?」
「ほら、バンドの金髪とかヤンキーの金髪とか、色々じゃない?」
「ああそうか、うん、これはね、ヅカ真似の金髪」
「は~ぁ、そうなんだね。いるいる、この街でも時々見掛けるよ?」
(え?ヅカ?何だそりゃ?マグロのヅケじゃなくて?)
ケンちゃんはそのひと言で理解したらしく、シンクの方へと戻って行った。
………………う、う、ううっ!
それにしても何だこの金髪!
オレの横顔を食い入るように
にガン見しやがって!
何だよ!オレに文句でも付けようってか!
オレは堪らずキッ!と金髪の方へ向き直り
「何だよ!じろじろ見るなよ!」って、思わず気色ばんでしまった!
なのに金髪!ひるむどころか見た事もないような満面の笑みを浮かべやがって、いけしゃあしゃあとのたもうた。
「君があんまり綺麗だから、つい見入っちゃった。
僕キノちゃん。君は?」
(あ!こいつ、綺麗だなんて、オレの一番イヤな呪いの言葉を吐きやがったな!)
オレは躍起となって言い返した。
「はぁ?自分をちゃん付けって、頭軽くない?ちょっと可愛いからっていい気になるなよ!」
(あ、やば!口滑らせて可愛いなんて言っちゃった!)
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