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第17章 恋愛不毛症候群

No,200 ナッキーのお説教①

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【これは30代前半のお話】

「ナッキー、久し振り!ここんとこ会えなくて淋しかった~」
 俺はナッキーに飛び付いた。

 ナッキーの仕事については詳しく書けないけれど、ナッキーも年齢なりに責任のある役割を与えられ、ここ数週間は研修やら出張やらで本当に会えなかった。

「オーバーだな理久。てか、オレなんていなくても全然淋しくなかったんだろ?
何やらひと回りも若い恋人が出来たらしいって、フラッシュのみんなが騒いでたよ?」

「え、マモルのこと、もう知ってるの?」
「理久の生態、このオレ様に隠しおおせると思うな」
「はい、流石です」

「で、どうなの?そのマモル君と今しあわせ?」
「う~ん、それがさ~、なんだか今いちなんだよね~。
俺は両手を広げてウェルカムなんだけどね、どうもマモルが踏み込んで来てくれない。
亮ちゃんも隼人も、それにナッキーも、タイプは違えどみんな俺と言葉のキャッチボールが成立しただろ?それがどうにもギクシャクしていて上手く行かない。
年の離れ過ぎかな~?
マモルにしてみりゃ俺なんてオジさんだろうし」

「ええっ?世界で一番、自分がオジさんだなんて思っていない理久が何を言ってる?」
「あ、確かにオジさんとは思ってないけど、近ごろ俺ってオバさんか?とは思う時はある」

「まあそんな掛け合いはいいとして、向こうが踏み込んで来てくれないなんて甘えたこと言ってるけど、理久はマモル君の話をちゃんと聞いてあげてる?」
「もちろんだよ。でも何回会っても親しくなれない。
あいつ秘密主義なんだ。大学も住所も何も教えてくれないし、俺、きっと信用されてないんだ」

「え、電話番号も?」
「うん……」
「そりゃ確かに水臭いな」
「だろ?だろだろ?」

「でも、んじゃ何でそこを教えてくれないのか、ちゃんとそこまで踏み込んで聞いた?」
「え、それは聞かない。話さないって事は言いたくないって事なんだろうから……」

「理久、その大事なところを聞いてあげなくっちゃ。もしかして何か訳が有るのかも知れないよ?
例えば以前、大学や住所を知らせたら迷惑な事をされたとか、恐い事が有ったとか……」
「あ、そこまでは考えなかった」

「だろ?みんながみんな理久みたいにお気楽とは限らない。
もしかしてゲイの世界に不安を感じてるかも知れないし、現にトラウマが有るのかも知れない。男性不信ならぬゲイ不信におちいってるって事だってあるかも。相手は未熟な年下なんだから、もっと大きな心で包んであげなくっちゃ」
「あれれ……そう言う話になっちゃう?俺がもっと大人らしくするべきだった?」

「理久、ちゃんと優しくしてやってるんだよね?」
「ええっ?俺はいつでも優しいよ?てか、ナッキーなんでそんなこと言うの?」

「そうかな~?理久みたいにチヤホヤされて生きて来た奴って、たいがい年下と付き合うのが難しいからな~」
「え、どう言うこと?」

「言葉の通りだよ。蝶よ花よと可愛がられるばっかで、自分は人を可愛がったりしないからな~」
「ちょっと待てよ、若い盛りならとにかく、俺なんて今や地味な普通のオジさんだよ?」

「いや、見た目じゃなくて性根の問題。理久のお坊ちゃま気質は何歳になっても変わりゃしないよ」
「反論です!それはナッキーだって一緒だろ?いや、ナッキーなんて俺以上にチヤホヤされて来たはずだ」

「あ、その認識がちょっと違う。オレは全然お坊ちゃまなんかじゃない。昔から綺麗、可愛いって言われる度に不愉快な逆コンプレックスを感じてた。根が暗いと言われりゃそうだろうけど、理久とは真逆だ。
その点理久は生まれながらのド天然極楽トンボだから綺麗、可愛いって言われる度に、そりゃ当然だと疑いもせずに受け入れて消化吸収している。オレとは全然違うよ?一緒にするな」
「あれ?それってもしかして、今回は年上の俺がマモルを可愛い可愛いってチヤホヤしなくちゃいけなかったってこと?」

「いやいや、そう言う見せ掛けの話じゃなくてもっと心根って言うか……そう、真心の話だよ。
理久はさっき、マモル君が踏み込んで来てくれないって言ったけど、理久はどう?
ウエルカムって両手を広げて、ただ向こうが来るのを待っていただけなんじゃない?」
「え、それってダメだった?」

「現に理久、マモル君の肝心なところを何も聞いて上げていないじゃないか」
「それはさ……そんなに言いたくないなら知らんぷりしといた方が当たり障りも無いかな?……と」

「そんなじゃマモル君に誤解されても仕方がないよ、ああ僕なんて何にも関心持たれてないんだな、って……。理久はいつだってツンとおすましの気取り屋だから」
「痛いとこ突くよな、ナッキー、それ辛辣だよ~」
「それに理久って、案外受け身なところ有るしね」
「え?あ、そうなのか……?」

 ナッキーと話していたら何だか俺、とっても大人気無かったような気がして来た。

(ナッキーは俺のこと、お見通しだからな~)


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