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第17章 恋愛不毛症候群
No,218 可愛い後輩に変化した
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【これは30代前半のお話】
(……でも、どうせノンケなんだよな……?)
俺はそこで止めときゃ良かったのに、またぞろ確認のために手を伸ばしてしまった。
そお~っと、恐る恐る…………
(え、ええ~っ!!!)
森山がギンギンに固くなってる。あまつさえ俺に触れられ
「あ、ああ……」と、微かに悩ましい声を漏らした──。
(森山~っ!ダメだろこれ~、
俺たち、どうなっちゃう?!)
俺はまたぞろ石化してしまった。そして戸惑いながらもグルグルと思考が回る。
(もしもここで、やっちゃったらどうなる?)
大きく分けて三つの結末が予想できる。
1)つべこべ言わずにハッピー・エンド。
が、そもそも俺って森山の事を好きだっけ?いやいや、全くの対象外だったし好みのタイプでもないし──下手に成就しちまっても同じ職場の同僚だぞ?これは後々重荷になってしまう危険性も……。
2)何となく最後までイッちゃったとしても、そもそも男はイッた直後に気分が180度変化する生き物だ──それを「事後賢者」と称する。
酔った勢いでやっちゃった後、森山がズドーンと落ち込んで後悔する危険性は大きいし、そのフォローも非常に微妙で難しい。
3)イク以前に、俺が手を出した途端に驚愕され、拒否される。これが最も危険な結末だ。トラブル以外の何物でもない。
そもそもこれは単なる生理現象かも知れない。いわゆる男なら当たり前の「朝勃ち」と言うやつだ。そこに俺が勘違した愚行を犯せば言い訳も出来ない。
(おいおい!どのパターンも危険な結末ばかりじゃないか!)
それに対して「何もしない」の結末はどうだ?
そりゃ~、何もしないんだから何も起こらない。
危険度ゼロだ。
(これは……とにかく我慢して何もしないのが一番だ……!)
と、決意したのに、森山は容赦なく密着して来る。
素足は絡めるし、その手も俺の
腰に回った。
時折俺の耳元に悩ましいため息を吹き掛けてくるし、さらに固くなった股間を俺の太腿に押し付けてくる──!
(知らん!俺は知らんぞ~っ!)
※──────────※
──いくらか眠ったのだろうか?
目を開けるとそこには森山の顔があった。先に目覚めて俺の顔をまじまじと見ていたらしい。
「歴野さん、昨夜は本当に済みませんでした。オレ、すごい迷惑を掛けてしまって……」
「もういいよ、昨日から何度も謝ってもらってる。
それより気分はどう?」
横になったまま、森山は俺の顔を見詰めながら答えた──近い。とにかく顔が近い!
「もう大丈夫です。それより……このポジションって、彼女さんの場所ですよね?オレなんかが汚してしまって済みません」
「いや、彼女なんていないし」
って、それは100%正しい。
まあ、恋人と言い換えたとしても、隼人と別れて以来ご無沙汰なポジションではある。
「汚れたなんて思ってないけど、でも確かに汗が匂うな。昨夜泥酔したままだったから」
「えっ?!本当に済みません!」
──言葉では漢字が伝わらない。俺にとって男の汗は「匂い」であって「臭い」ではない。
「シャワー浴びてこいよ。タオル出してやるから」
「臭くて済みません!直ぐシャワーして来ます!」
「俺ので良かったら下着も貸すけど……あ、勿論ちゃんと洗濯してあるやつ。でも、やっぱ気持ち悪いか?」
「そんな事ありません!確かにせっかくシャワーしても汚れた下着じゃ気持ち悪い。歴野さんの下着なら喜んで借ります」
(あれれ、可愛いこと言ってくれるじゃないか)
俺は森山がシャワーしている間にタオルと着替えを用意した。
(どのパンツを貸そうか……?)
改めて引き出しの中をチェックすると、ちゃっかりナッキーのパンツが数枚まじっている。
(間違ったら大変だ、俺のパンツを貸さなくちゃ)
まだ数回しか履いていない、新し目のパンツを選んだ。
(この際だからワイシャツも貸してあげよっと♪ワイシャツならクリーニング店から直行のが何枚か有るし)
またぞろ、俺のお節介モードが全開していた。
※──────────※
その日はもちろん休日だった。忘年会やらのイベントは必ず休前日に行なうのが習慣だったから──。
シャワーを済ませ、パリッと着替えた森山と一緒に外出し、近所のファミレスでモーニングを食した。
「大丈夫?食える?」
「はい、歴野さんのお陰でもうすっかり平気です。悪酔いしてからの事はあんまり憶えていないんだけど……確か歴野さんが居酒屋のトイレで思いっ切り吐かせてくれたでしょ?お陰で胃腸はすっきりしてます。てか、腹減ったくらいです」
「そうか、なら良かった」
(なるほど、昨夜の事はあまり憶えていないんだな。それならかえって良かった。てか、なんもしなくて良かった~っ!)
もし手を出していたら、こんな風に平和なモーニング・サービスを楽しむ事は出来なかったに違い無い。
人生は選択の連続だ。そしてその選択はとても難しい。
「歴野さん、図々しい事を言ってもいいですか?」
「ああ、なに?」
「長年一緒に仕事して来ましたけど、昨日から急に、こんなに沢山話せた事が驚きなんです。
散々愚痴を聞いてもらったでしょ?オレ、ずっとつまんない人生だと思っていたのに、何だか急に歴野さんと親しくなれた気がして……嬉しいんです」
「おいおい、可愛いこと言ってくれるじゃないか、俺、胸がキュンとしちゃうぞ♡」
(あれ?ちょっと言い過ぎ?)
「歴野さん、酒に慣らすなら一人じゃ危ないって心配してくれたじゃないですか。
よかったら……時々誘ってもらえませんか?歴野さんと一緒なら安心なんです」
「いいよ!これからは仲良くしよう!」
俺と森山の関係性は、この日を境に大きく変わった──「ただの同僚」が「可愛い後輩」に変わったのだ。
(……でも、どうせノンケなんだよな……?)
俺はそこで止めときゃ良かったのに、またぞろ確認のために手を伸ばしてしまった。
そお~っと、恐る恐る…………
(え、ええ~っ!!!)
森山がギンギンに固くなってる。あまつさえ俺に触れられ
「あ、ああ……」と、微かに悩ましい声を漏らした──。
(森山~っ!ダメだろこれ~、
俺たち、どうなっちゃう?!)
俺はまたぞろ石化してしまった。そして戸惑いながらもグルグルと思考が回る。
(もしもここで、やっちゃったらどうなる?)
大きく分けて三つの結末が予想できる。
1)つべこべ言わずにハッピー・エンド。
が、そもそも俺って森山の事を好きだっけ?いやいや、全くの対象外だったし好みのタイプでもないし──下手に成就しちまっても同じ職場の同僚だぞ?これは後々重荷になってしまう危険性も……。
2)何となく最後までイッちゃったとしても、そもそも男はイッた直後に気分が180度変化する生き物だ──それを「事後賢者」と称する。
酔った勢いでやっちゃった後、森山がズドーンと落ち込んで後悔する危険性は大きいし、そのフォローも非常に微妙で難しい。
3)イク以前に、俺が手を出した途端に驚愕され、拒否される。これが最も危険な結末だ。トラブル以外の何物でもない。
そもそもこれは単なる生理現象かも知れない。いわゆる男なら当たり前の「朝勃ち」と言うやつだ。そこに俺が勘違した愚行を犯せば言い訳も出来ない。
(おいおい!どのパターンも危険な結末ばかりじゃないか!)
それに対して「何もしない」の結末はどうだ?
そりゃ~、何もしないんだから何も起こらない。
危険度ゼロだ。
(これは……とにかく我慢して何もしないのが一番だ……!)
と、決意したのに、森山は容赦なく密着して来る。
素足は絡めるし、その手も俺の
腰に回った。
時折俺の耳元に悩ましいため息を吹き掛けてくるし、さらに固くなった股間を俺の太腿に押し付けてくる──!
(知らん!俺は知らんぞ~っ!)
※──────────※
──いくらか眠ったのだろうか?
目を開けるとそこには森山の顔があった。先に目覚めて俺の顔をまじまじと見ていたらしい。
「歴野さん、昨夜は本当に済みませんでした。オレ、すごい迷惑を掛けてしまって……」
「もういいよ、昨日から何度も謝ってもらってる。
それより気分はどう?」
横になったまま、森山は俺の顔を見詰めながら答えた──近い。とにかく顔が近い!
「もう大丈夫です。それより……このポジションって、彼女さんの場所ですよね?オレなんかが汚してしまって済みません」
「いや、彼女なんていないし」
って、それは100%正しい。
まあ、恋人と言い換えたとしても、隼人と別れて以来ご無沙汰なポジションではある。
「汚れたなんて思ってないけど、でも確かに汗が匂うな。昨夜泥酔したままだったから」
「えっ?!本当に済みません!」
──言葉では漢字が伝わらない。俺にとって男の汗は「匂い」であって「臭い」ではない。
「シャワー浴びてこいよ。タオル出してやるから」
「臭くて済みません!直ぐシャワーして来ます!」
「俺ので良かったら下着も貸すけど……あ、勿論ちゃんと洗濯してあるやつ。でも、やっぱ気持ち悪いか?」
「そんな事ありません!確かにせっかくシャワーしても汚れた下着じゃ気持ち悪い。歴野さんの下着なら喜んで借ります」
(あれれ、可愛いこと言ってくれるじゃないか)
俺は森山がシャワーしている間にタオルと着替えを用意した。
(どのパンツを貸そうか……?)
改めて引き出しの中をチェックすると、ちゃっかりナッキーのパンツが数枚まじっている。
(間違ったら大変だ、俺のパンツを貸さなくちゃ)
まだ数回しか履いていない、新し目のパンツを選んだ。
(この際だからワイシャツも貸してあげよっと♪ワイシャツならクリーニング店から直行のが何枚か有るし)
またぞろ、俺のお節介モードが全開していた。
※──────────※
その日はもちろん休日だった。忘年会やらのイベントは必ず休前日に行なうのが習慣だったから──。
シャワーを済ませ、パリッと着替えた森山と一緒に外出し、近所のファミレスでモーニングを食した。
「大丈夫?食える?」
「はい、歴野さんのお陰でもうすっかり平気です。悪酔いしてからの事はあんまり憶えていないんだけど……確か歴野さんが居酒屋のトイレで思いっ切り吐かせてくれたでしょ?お陰で胃腸はすっきりしてます。てか、腹減ったくらいです」
「そうか、なら良かった」
(なるほど、昨夜の事はあまり憶えていないんだな。それならかえって良かった。てか、なんもしなくて良かった~っ!)
もし手を出していたら、こんな風に平和なモーニング・サービスを楽しむ事は出来なかったに違い無い。
人生は選択の連続だ。そしてその選択はとても難しい。
「歴野さん、図々しい事を言ってもいいですか?」
「ああ、なに?」
「長年一緒に仕事して来ましたけど、昨日から急に、こんなに沢山話せた事が驚きなんです。
散々愚痴を聞いてもらったでしょ?オレ、ずっとつまんない人生だと思っていたのに、何だか急に歴野さんと親しくなれた気がして……嬉しいんです」
「おいおい、可愛いこと言ってくれるじゃないか、俺、胸がキュンとしちゃうぞ♡」
(あれ?ちょっと言い過ぎ?)
「歴野さん、酒に慣らすなら一人じゃ危ないって心配してくれたじゃないですか。
よかったら……時々誘ってもらえませんか?歴野さんと一緒なら安心なんです」
「いいよ!これからは仲良くしよう!」
俺と森山の関係性は、この日を境に大きく変わった──「ただの同僚」が「可愛い後輩」に変わったのだ。
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