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第17章 恋愛不毛症候群
No,219 あれよあれよと1年後
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【これは30代前半のお話】
去年の忘年会で森山と急速に親しくなり、俺達の関係が変化してから1年が経った。
──もう直ぐ今年も忘年会。
ある日の午後──同僚の女子社員達から3時のお茶に誘われた。
事務所の隅にはちよっとした来客を接待する小さなコーナーがあった。小振りなテーブルとソファーのその場所で、3時にはいつものプチ女子会が始まる。
「歴野さん、一緒にお茶どうですか?」
「ありがとう、まぜてもらうよ」
こんな俺を女子からモテると勘違いしている同僚もいるけど、なんて事ない、ゲイに有りがちな女子との親和性だ。
女子A「今日も森山さんは現場なんですね」
歴野「今や森山もこの部署のホープだ。引く手あまたなんだよ」
女子B「でも森山さん、ここ一年で随分雰囲気が変わりましたよ」
女子C「あ、それ、歴野効果ってみんな言ってるんですよ♪」
歴野「え、何だよそれ?」
女子C「つまりですね、地味で暗かった森山さんが、ある日突然歴野さんと親しくなって明るくなったって評判なんです」
歴野「俺は別に……まあ、森山が酒を飲めるようになりたいって言うから、時々夕食をかねて居酒屋に付き合ってるだけだよ。特別な事は何もしてない」
──そうだ。酒に付き合うのはまあいいけど、俺の部屋じゃ困る。何故ならまたいつ何時あぶない雰囲気になるか分かったもんじゃない。
だからあれ以降、週に1~2回居酒屋で夕食を共にしている。当然話す機会も増えて、仲はどんどん良くなって来た。
ただ、平日に誘うというのがポイントだ──休前日だと、またもや泊めなきゃならない状況に陥る危険があるから。
女子C「だって歴野さん、今ではすっかり森山さんと仲良しじゃないですか。それって去年くらいから?」
女子A「ああ、それ去年の忘年会からよ。森山さんが悪酔いして歴野さんが送って行ったじゃないですか。あれが切っ掛けでしょ?」
女子B「そうそう確かに、あれから何故か森山さん、歴野さんにすっかりなついちゃって……
歴野さん、一体森山さんと何があったんですか?」
歴野「いやいや、何も無いけど、確かに悪酔いして爆睡しちゃったから俺んとこに泊めた。
で、色々話したら急速に仲良くなっちゃって」
女子A「ふ~ん、森山さん元気になりましたよね。笑顔が多くなったし口数も増えた。私達とも会話するようになったしね」
女子B「それだけじゃないですよ。何だか垢抜けたって言うかセンスが良くなったって言うか」
女子C「そうそう、まずメガネが変わりましたよね!何だか顔立ちがぱ~っと明るくなったみたい」
──そうだった。あのごつい黒縁メガネが顔を暗くしていると思って、俺が誘って新しいメガネを買いに行った。
俺の見立てで今流行りのスタイリッシュなフレームにしたけど、あの鼻筋が映えて似合ってる。やっぱり女子はよく見ているんだな。
女子B「それに髪型も変わったわ?いつからかしら?やっぱり歴野さんと仲良くなりだしてから?」
──「行きつけの床屋決めてるのか?」って聞いたら、いつも行き当たりばったりだって言うから、会社の近くの俺の行き付けを紹介した。
「歴野さんが行くようなお洒落な店、オレには入り難いですよ~」なんて言うから、「美容室じゃなくて床屋だよ?短髪ならやっぱ男には床屋の方が向いてる。俺の担当、腕がいいんだ」って強引に連れて行ったけど、そしたら森山、やっぱ断然カッコよくなった。
女子A「見た目だけじゃなくて、とにかく人柄が変わったわよね?元々仕事は出来る人だったけど、なんて言うの?男に磨きが掛かったって感じ?」
女子B「やっぱり歴野さんの後輩教育の賜物ですよ~♪森山さん、変わらずお酒は苦手ならしいけど、飲み会にもよく参加するようになりましたよね~」
女子C「こないだの二次会のカラオケには驚いたわ~、森山さん意外にも歌が上手いのよ~」
歴野「だよね!とにかく声がいいよね♪太いってか、低音の魅力ってか、とにかく男の色気がむんむんで……」
女子C「え?歴野さんには男の色気ってのが分かるんですか?
私はいまいち分からない。女として未熟なのかしら?」
(お~っと、やばい!うっかりの失言だぞ!調子に乗るとゲイ丸出し発言をやらかしてしまう)
女子A「それでかしら?今まで浮いた噂ひとつ無い森山さんだったけれど、最近営業の小泉さんといい感じなのよね」
女子B「あ、それ私も聞いた!どうやら小泉さんの方がご熱心とか?」
歴野「へ~っ、他部署の女子と噂になるなんて、森山も成長したもんだな~」
女子C「そんなんですよ~、私もこないだのお昼、一緒に地下鉄駅近くのテラスで食事してるの目撃しちゃいましたよ~」
歴野「テラスで食事?森山がそんなお洒落行動なんて、見間違いじゃね?」
女子C「いいえ!確かに森山さんと小泉さんでした!間違いありませんよ~」
──そうか、森山にもついに彼女が出来たか。
(やっぱりノンケだったんだな)
良かったけど……なんか淋しい。
あ、いやいや!これで正解!
あれから一年──今年の忘年会も近付いていた。
去年の忘年会で森山と急速に親しくなり、俺達の関係が変化してから1年が経った。
──もう直ぐ今年も忘年会。
ある日の午後──同僚の女子社員達から3時のお茶に誘われた。
事務所の隅にはちよっとした来客を接待する小さなコーナーがあった。小振りなテーブルとソファーのその場所で、3時にはいつものプチ女子会が始まる。
「歴野さん、一緒にお茶どうですか?」
「ありがとう、まぜてもらうよ」
こんな俺を女子からモテると勘違いしている同僚もいるけど、なんて事ない、ゲイに有りがちな女子との親和性だ。
女子A「今日も森山さんは現場なんですね」
歴野「今や森山もこの部署のホープだ。引く手あまたなんだよ」
女子B「でも森山さん、ここ一年で随分雰囲気が変わりましたよ」
女子C「あ、それ、歴野効果ってみんな言ってるんですよ♪」
歴野「え、何だよそれ?」
女子C「つまりですね、地味で暗かった森山さんが、ある日突然歴野さんと親しくなって明るくなったって評判なんです」
歴野「俺は別に……まあ、森山が酒を飲めるようになりたいって言うから、時々夕食をかねて居酒屋に付き合ってるだけだよ。特別な事は何もしてない」
──そうだ。酒に付き合うのはまあいいけど、俺の部屋じゃ困る。何故ならまたいつ何時あぶない雰囲気になるか分かったもんじゃない。
だからあれ以降、週に1~2回居酒屋で夕食を共にしている。当然話す機会も増えて、仲はどんどん良くなって来た。
ただ、平日に誘うというのがポイントだ──休前日だと、またもや泊めなきゃならない状況に陥る危険があるから。
女子C「だって歴野さん、今ではすっかり森山さんと仲良しじゃないですか。それって去年くらいから?」
女子A「ああ、それ去年の忘年会からよ。森山さんが悪酔いして歴野さんが送って行ったじゃないですか。あれが切っ掛けでしょ?」
女子B「そうそう確かに、あれから何故か森山さん、歴野さんにすっかりなついちゃって……
歴野さん、一体森山さんと何があったんですか?」
歴野「いやいや、何も無いけど、確かに悪酔いして爆睡しちゃったから俺んとこに泊めた。
で、色々話したら急速に仲良くなっちゃって」
女子A「ふ~ん、森山さん元気になりましたよね。笑顔が多くなったし口数も増えた。私達とも会話するようになったしね」
女子B「それだけじゃないですよ。何だか垢抜けたって言うかセンスが良くなったって言うか」
女子C「そうそう、まずメガネが変わりましたよね!何だか顔立ちがぱ~っと明るくなったみたい」
──そうだった。あのごつい黒縁メガネが顔を暗くしていると思って、俺が誘って新しいメガネを買いに行った。
俺の見立てで今流行りのスタイリッシュなフレームにしたけど、あの鼻筋が映えて似合ってる。やっぱり女子はよく見ているんだな。
女子B「それに髪型も変わったわ?いつからかしら?やっぱり歴野さんと仲良くなりだしてから?」
──「行きつけの床屋決めてるのか?」って聞いたら、いつも行き当たりばったりだって言うから、会社の近くの俺の行き付けを紹介した。
「歴野さんが行くようなお洒落な店、オレには入り難いですよ~」なんて言うから、「美容室じゃなくて床屋だよ?短髪ならやっぱ男には床屋の方が向いてる。俺の担当、腕がいいんだ」って強引に連れて行ったけど、そしたら森山、やっぱ断然カッコよくなった。
女子A「見た目だけじゃなくて、とにかく人柄が変わったわよね?元々仕事は出来る人だったけど、なんて言うの?男に磨きが掛かったって感じ?」
女子B「やっぱり歴野さんの後輩教育の賜物ですよ~♪森山さん、変わらずお酒は苦手ならしいけど、飲み会にもよく参加するようになりましたよね~」
女子C「こないだの二次会のカラオケには驚いたわ~、森山さん意外にも歌が上手いのよ~」
歴野「だよね!とにかく声がいいよね♪太いってか、低音の魅力ってか、とにかく男の色気がむんむんで……」
女子C「え?歴野さんには男の色気ってのが分かるんですか?
私はいまいち分からない。女として未熟なのかしら?」
(お~っと、やばい!うっかりの失言だぞ!調子に乗るとゲイ丸出し発言をやらかしてしまう)
女子A「それでかしら?今まで浮いた噂ひとつ無い森山さんだったけれど、最近営業の小泉さんといい感じなのよね」
女子B「あ、それ私も聞いた!どうやら小泉さんの方がご熱心とか?」
歴野「へ~っ、他部署の女子と噂になるなんて、森山も成長したもんだな~」
女子C「そんなんですよ~、私もこないだのお昼、一緒に地下鉄駅近くのテラスで食事してるの目撃しちゃいましたよ~」
歴野「テラスで食事?森山がそんなお洒落行動なんて、見間違いじゃね?」
女子C「いいえ!確かに森山さんと小泉さんでした!間違いありませんよ~」
──そうか、森山にもついに彼女が出来たか。
(やっぱりノンケだったんだな)
良かったけど……なんか淋しい。
あ、いやいや!これで正解!
あれから一年──今年の忘年会も近付いていた。
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