ガーディストベルセルク

ぱとり乙人

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その生徒、都落ちにつき

4対4

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「柏原ァ!アイツ真っ先にとんずらしやがったぞ!?追いかけるか!?」
「うるせぇな……?そんなもんコイツ等ぶっ飛ばしてからでも十分に間に合う事だろうが!あぁ!?」
 柏原と金剛がいがみ合っている最中、石黒が三好に近づいてそっと耳打ちをしてきた。
「……オサムッチから上手い事注目を外す事が出来たじゃん?ミヨッシー、やるぅ♪」
「ここまで上手くいくとは、正直思ってもいなかったがな。……さて、問題はこの後なんだが……避けろ!!」
 三好の一声と共に、石黒は軽く横にジャンプしながら回避行動を取る。さっきまで二人が居た場所には、苦無のような飛び道具が通り過ぎて、そのまままたも壁に刺さった。
「ちっ。外れてもうたか。案外身軽なんやな、お二方。」
「あら、貴女の腕が悪いだけではありません事?」
「あ?なんや?まずは箱入り娘さんから片づけたろか?」
「ふんっ。やれるものでしたら、やってごらんなさいな。」
 玉手と御園生も同調するかのようにいがみ始めた。
「うーむ?なんか仲が悪いのか良いのかよく分からないクラスでござるな?」
「……い、まの……うち?」
 薬師丸がいつもの今にも消えかかりそうな声で言うと同時に、雷坂が持ち前のハンサム顔でサムズアップをしながら答えた。
「で、あるな!!ではではァ。」
 雷坂が両肩をゴキゴキと鳴らしつつ、急に体を低く構えながら右肩を前へ突き出すようにした。
 そして。
「コイツ等ぶっ飛ばしてって言うが、勝算はあるんだろうな!?何もなしに」
「金剛!気を付けろ!!」
「どっせぇぇーーーいっ!!」
 金剛はあっと声を上げる間もないままショルダータックルを盛大にぶちかまされ、轟音を立てながら雷坂はそのまま教室の壁を金刃と同じような穴を開けながら金剛と共に消えていった。
「クソが……!油断しやがって!」
「そう言うお前はどうなんだ?よそ見をしていると?」
 その言葉と共に、柏原の足をがしっと【何か】が掴んだ。
「あ……!?」
 足元に柏原は目をやる。それと共に、その顔がサァッと青白くなっていくのがわかった。
 柏原の足首を掴んでいた【何か】の正体。それは緑色の肌をしており、頭にはごく小さな角が生えていた。目はぎょろりと見開いて、鼻は極端に長い垂れ鼻、口は大きく裂けていて無数の小さく尖った牙が生えていた。
「【式神・小鬼】。どうだ?可愛い顔をしているだろう?」
「くっ……!!離れやがれ!!!」
 柏原は大袈裟に足を前後に動かし、それを振り払った。
「ケケケッ!!」
【式神・小鬼】と呼ばれているその存在は、振り回された反動で柏原の足首から手を離すと空中で器用に数回転し、教室の壁に張り付いて小馬鹿にするかのように嘲笑った。
「薄気味悪い化け物が……!」
 柏原が悪態をつきながら素早くポケットから銀色に輝くパチンコ玉を取り出し、持っていたパチンコのゴム紐をギュイッと限界まで引き上げた。
「おーっと!やらせる訳ないっしょ!」
 標的を定めている柏原を野放しにする道理はないと、石黒が襲い掛かろうとする。
 が、しかし。
「それはこっちの台詞や。」
「!」
 バシュッと、これまた【何か】が発射される音が聞こえると同時に、石黒が壁へ吹っ飛んだ。少し呻き声をあげながらパッと目を開くと、当然のように喚きだした。
「ちょっ!?は!?ナニコレ笑えないけど!!どっから出したし!?」
「お、なかなかの当たりやんけ。特製ネットランチャーちゃんや。」
 にんまりと口角をあげながら玉手は、少し憂さが晴れたような顔をして舌を出した。
「……ぅぉぉぉぉぉぉおっ!!??!」
 それと同時に、先程消えていったはずの人の声が少しずつ木霊しながらこちらに向かってくる。
「は!?ちょっとま」
「ゲフォーッ!?」
 その爆音と思われる飛来物の正体は、先程大きな声を上げながら突っ込んでいった雷坂であった。
 そして、ネットに捕らえられている石黒の身体を巻き込みながら、その外壁を破壊し共に校外へと放り出されていった。
「雷坂!?石黒!?」
「はわっ!?三つ葉!?今」
「あら、行かせませんわよ?」
 薬師丸が助けに行こうとした瞬間に高飛車な声が聞こえると、破壊されたはずの穴に突如として大樹の根のようなものが張り巡らされ、その穴を完全に塞ぎきってしまった。
「ふんすっ!!あのような軟弱なタックルで俺を倒そうだなんて……これはマジで勝ててしまうな。期待外れだ。」
「無様に消えていった人が言うセリフちゃうで、ほんま。」
「全くでございますわ!瞬殺されたと思いましたのに。」
「……ったく。」
 鼻息荒く戻ってきてモストマスキュラーのようなポージングをとる金剛と他二人を柏原は然程気にもかけない様子で、引き上げていたパチンコのゴムを手放す。
 ピュンッと気持ちの良い風を切る音と同時に、パチンコ玉が小さな怪物を目がけて飛んでいく。
「子供の玩具程度で仕留められる程、脆弱な式神ではないぞ!避けろ!」
「ケケッ。」
 小鬼は小馬鹿にしたように笑いながらも、確かに弾道を予測してパチンコ玉をギリギリまで引きつけながら避けたはずだった。
「……無駄だ。」
 避けた先の壁にパチンコ玉は弾かれて、虚しく地面にカランと落ちるのが自然の成り行き。
 即ち道理である。
 しかし、その道理は大きく裏切られる結果となる。
「ゲェッ……!?」
 物理的にあり得ない弾道を描きながら、小鬼の額へと命中した。しかもそれだけならともかく、なんとパチンコ玉はその額を貫き、物の見事に風穴を開けたのだ。
「なに!?」
 小鬼はただ一言の断末魔を遺しながら、無残にも地面へ仰向けに落下する。そして二、三度じたばたとその場で蠢きながら霧散し、消滅していった。
 そして、その場所には穴の開いたお札のような物が煙をあげながら落ちていた。
「……それがお前のガイストの正体か。随分と気色の悪いペットを飼っているんだな。」
「ペットじゃねぇ。式神って言うんだ。覚えとけ。」
 先程までは余裕の感じられていた三好の顔も、今の不可解な現象については納得がいっておらず、疑念と焦燥の表情をしていた。
「ほぅ?ちったぁいい顔するじゃねぇか。そういう顔をしてくれるのを期待していたんだぜ?もっとそういうの見せてくれよな。」
「図に乗るなよ。たかだか一匹始末した程度で。」
「だったら何体だってぶち抜いてやるよ。あの程度の化け物ならな。」
「……取り込みの所悪いが……なぁ、柏原。俺はあの雷坂という男を相手しようと思う。この場から離れても問題ないか?」
「勝手にしろ。があるのならな。」
「なんだ。お前さっきの俺の言葉気にしているのか。悪かったな。俺自身も相手が相手だから少し慎重になっていたんだ。……だが、それは考え過ぎだったようだ。」
 金剛が自信ありげに笑いながら、金刃が大きく開けた穴へと足を進めた。
「お、ならウチはあの痛ギャル相手にしたいわ。なんであないな眼帯しとるんか気になるわ。中二病ってやつ?」
 同じく玉手が金剛の後ろへついていく。
 そして。
「させ、ない……!」
 その巨大な穴の目の前に、巨躯の女性が大きく手を広げて立ち塞がる。薬師丸である。
「……俺は女の子に手を出すつもりはない。そこをどいてくれないか。」
「ウチは出してもかまへんのやけど、出していいか?」
 視線を落とす金剛とは対照的に、玉手は薬師丸の身体を見て私怨に似た怒りの眼差しを向けながら攻撃態勢をとった。
「およしなさいな、玉手さん。」
「きゃっ……!?」
 その大きな身体には似つかわない甲高く短い悲鳴を薬師丸があげた。
 先程穴を塞いだものと同じような大樹の根のような物が突如現れ、彼女を縛り上げた。
「御園生……余計な事を。」
「女の嫉妬ほど、惨めで醜い物はございませんわ。それよりも我々の目的をお忘れなく。おほほ。」
 どこからともなく出した羽扇子で口元を隠しながら、御園生は小さく微笑んだ。
「ちっ。けったくそ悪い!……っておわ!?金剛!?」
「この高さだ。万が一もある。しっかり捕まっていろ。」
「え……あ、うん。」
 金剛は少し顔を赤らめた玉手の身体を大事に抱き抱えると、その大きな穴から外へと飛び出していった。
「あら。案外良い間柄になりそうですわね。あの御二方。」
「これが終わっても、あまり茶化してやるなよ。後々が面倒だ。」
「勿論でございますわ。野暮な事を言うのは淑女としての礼儀がなっていませんもの。……さて、改めてですが。貴女のお相手はわたくしがしてあげますわ。光栄に思いなさい。」
 御園生は金髪縦ロールの髪をバサァッとわざとらしく靡かせた。
「……これで4対4という訳か。面白い。格の違いを見せなければな。」
「おう。存分に見せてもらおうじゃねぇか。」
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