ガーディストベルセルク

ぱとり乙人

文字の大きさ
37 / 58
その生徒、都落ちにつき

彼女の切り札①

しおりを挟む
「さてと。じゃあ俺達も本気でやるか。」
「あら、わたくしは最初から本気でしたわよ?貴方は違いまして?」
「……いやそういう事を言いたいんじゃなくて……はぁ。まぁいいか。」
 柏原と御園生は余裕綽々といった感じで、三好と動きを封じられている薬師丸を睨んだ。
「ぐ……ぅっ……!!」
 薬師丸はなんとかもがき、足掻いて恐らく御園生から発動している謎のガイストから逃れようとする。
 しかし。
「っが……!」
 逃れようとすればするほど、大木の根がギリギリと彼女の身体に食い込むように浸食していった。
「およしなさいな。わたくしの【柳暗花明】からはそう易々と抜けられる訳ないでしょう?美しき自然の力には、この世の誰も勝つ事なんて出来ませんわ。おほほ。」
 口元を羽扇子で隠しながら、したり顔で薬師丸を見つめる。
「ぐ……!み……よし、君……!」
「ちっ。待っていろ、薬師丸!すぐその根っこ俺の式神で」
「やらせる訳ねぇだろうが!」
 式神を召喚しようと三好が札を取り出すが、ピュンッと再びパチンコ玉が発射される音が聞こえて三好がハッとその方向を向いて玉を視認して確実に飛び避けた。
 はずである。
「がぁっ!?」
 先程と同じようにその弾道は無軌道に動き、三好の右脚の脛に着弾する。
 だが、しかし。所詮はパチンコ玉である。人力で引いて飛ばす力となると、その威力はとかが知れている。
 せいぜい至近距離で撃ったとて、
 それでも、痛いというのは当然であり、三好はバランスを崩しながら床になんとか着地する。
「……確実に動きを封じるつもりだったが……まぁいい。それでもちょっとは大人しくなるだろ。」
 三好が足の痛みを堪えながらも、その痛みにも勝る疑問が頭をよぎっていた。
(……何故だ?さっきの俺の式神の時といい、確実に避けたはずなのに玉が当たってしまう……。それだけならまだ分かる。だが……!)
 三好は持っていた式神の札にエクトプラズムを流し、その場で三体の式神を召喚した。
「けっ。馬鹿の一つ覚えってか?見飽きたぜ、それはよ。」
(さっきのコイツの攻撃で、俺の式神は一撃でやられた……。なのに、今回の攻撃では俺の脚を貫きもせずに、痣が残る程度だ。先程とまるで威力が違う!)
「……面白いガイストだからな?ちょっとだけ見極めさせてもらうぞ。」
「エラソーに。やれるもんならやってみろ。その前にぶっ倒されるのがオチだがなぁ!?」
 三好は召喚したうち二体を柏原に差し向ける。
 不気味な笑い声をあげながら、その二体は身軽に柏原へと飛びかかっていった。
 それを見て柏原は、器用にパチンコ玉を二つ掴んで狙いを定める。
「散開しろ!!」
「ケケェッ!」
 三好の合図と共に、小鬼達が二手に分かれてその照準を合わせないように動き、背後を取る。
「奴のパチンコを取り上げろ!!」
 その声と共に、小鬼達が一斉に飛びかかる。
「ふん。」
 冷めた表情で、柏原はパチンコを弾く。その方向はまるで明後日の方向に射出していたはずであった。
 しかし。
「グケッ!」
「ギャッ!」
 またも同じように玉が無秩序に動きを変えて、小鬼達に命中する。
 しかし、威力は一度目とは大違い。加えて言うのであれば。
……!?)
 実際に玉を受けた小鬼達は怯んで距離を置くようにはなっていたが、まだ機敏に動けるようであった。
「……目障りな化け物共だな。……で、もう一体はそこの女を助けようとしているのか?」
「くっ……!」
 少しでも注意を逸らそうと試みていたが、バレバレの手であった。
 もう一体は必死になりながら、薬師丸に絡んでいる根を少しでも緩めようとしていた。
 だが。
「グギギィッ……!」
 身を捩じ切れんばかりにして必死に小鬼はその根を引っ張っていたが、ビクとも動く気配はなかった。
「おーっほっほっほ!そーんなチンケな妖怪で千切れる程、わたくしのガイストは貧弱ではございませんわ!おーっほっほっほ!」
 背をこれでもかと仰け反らせながら高笑いが止まらない様子の御園生の姿が、三好を更に苛立たせた。
「クソ…こんな所で使いたくはねぇが……!」
「み……よし君ッ!」
「!?」
 苦しそうな声を上げながら、薬師丸が三好に何かを伝えようとする。
「待っていろ!今コイツ等片づけて」
「て……ぶ、く……ろ……!」
「……何!?」
 苦しんで助けを求める声を出しているのだと三好は思い込んでいたが、それは全くの見当違いであった。
 薬師丸が本当に取ってほしかった行動。
 それは。
「わ……たし、の……手袋……外して……!」
 それは、【スーパーリカバリー】を発動させる為のガイストツールの手袋を外して欲しいとの事だった。
「……手袋を?」
 御園生が首を傾げながら呟く。
(わざわざ、外す……何故だ?)
 今度は柏原の方が怪訝な顔をする。
(どういう事だ?確かコイツのガイストは【スーパーリカバリー】……。コイツが触れた物なら有機物でも無機物でも何でもたちどころに治(直)なおっちまうって話だが……)
 柏原は標的を三好から薬師丸へと切り替える。
(それを発動させる為のツールを、……?何の為に……!?)
 柏原には嫌な予感がした。だから彼が次に出た言葉は至極当然の内容であった。
「御園生!ソイツをもっとキツく締め上げて気絶させろ!!」
「えっ!?と、突然なんですの!?もう身動きは」
「早くしろ!!」
「もうおせーよ。」
「「!!」」
 Aクラスの二人がその一瞬のやり取りをしている間に、三好が薬師丸の片方の手袋に手をかけていた。
「しまった……!?」
「そらよ、薬師丸!!」
 三好の声と共に、ガイストツールの手袋が宙へ舞った。
「あ、り……がと………う!!」
 顔がまるで見えないので表情が分からないはずであるのに。
 三好には長髪の向こう側にある薬師丸の勝ち誇ったような顔が見えたような気がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

リボーン&リライフ

廣瀬純七
SF
性別を変えて過去に戻って人生をやり直す男の話

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...