子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神

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青年期 68

…それから二週間後。


ついに敵軍が城壁の上からも目視出来る位置にまで迫って来ていた。


「いやー、敵の進軍速度が予想通りで助かった」

「そうですね。もっと早く来てたらダンジョンに行けなかったかもしれません」


俺は毎週の修行であるダンジョンからの帰還中に安堵しながら言うとお姉さんも同意する。


「まあ分身を行かせる…って手もあるけど。拠点に留守番させてる分身みたいに」

「本当に分身って便利ですね…おかげで魔法協会への魔石の納品が普段の倍ですよ、倍。上層部の人達はきっと笑いが止まらないでしょうね」


俺が保険としての手段や方法を話すとお姉さんは何回目かの再認識したように呟き、取引先の反応を予想した。


「一応先生も上層部でしょ?」

「そりゃ私は坊ちゃんのおかげで魔石に困る事が無いので、常に笑いが止まらないですよ。あはは」


俺の弄るかのような確認にお姉さんはジョークでも言うように笑って返す。


「そういや先生の余裕の無い切羽詰まった様子なんてここ数年は見た事ないな…」

「…そうですね。最後に心の余裕が無くなってたのはいつでしょう…?協会員が大騒動を起こした時…?」

「あー…あのヤバイ噂が広まった時」

「あの時は大変でした…なんせゼルハイト家と協会の橋渡し役を頼まれてましたし…」


俺が思い返すように言うとお姉さんは思い出を振り返るように呟いて過去の苦労を語り始める。


「先生はあの頃から既に上層部だっけ?」

「協会に魔石の取り方を教えて直ぐに上層部に取り立てられました」

「そのおかげで俺すぐにM級に飛び級だもんなぁ…あの時は魔法協会の権力と影響力の凄さにびっくりしたよ」

「私もです。まさかあそこまでとは」


俺の確認にお姉さんが教えてくれるように答えるので過去の思い出を振り返りながら笑うとお姉さんも笑いながら同意した。




ーーーーー





「…敵軍が迫って来ているな」


俺とお姉さんが兵舎区間まで戻ると隊長の一人が状況を報告してくる。


「そうだね。一応明日からは都市の防衛に入るから出入りできない…って市民や商人に前もって伝えてはあるけど…」

「問題はいつまで続くか…だな」


俺が肯定しながら防衛の準備を進めてる事を言うと隊長は考えるように返す。


「ま、一週間もすれば将軍が騎士団や兵士達を引き連れて戻って来るから、そうなったら流石に敵軍は退くんじゃない?」

「ですね」

「…ああ」


俺の楽観的な発言にお姉さんが賛同すると隊長を同意した。


「…都市防衛戦は初めてだから楽しみだな…それも危ない状況じゃなくてかなり有利な状態で…だから良い経験になりそう」

「ふっ…確かに」


俺がワクワクしながら言うと隊長が笑ってまたしても同意する。



…その翌日。



『ついに』というべきか『ようやく』というべきか…


都市が一万を超える敵の軍勢に包囲されてしまった。


なので俺ら傭兵団は城壁の上で治安維持部隊の人達と共に弓矢を構え、敵が矢の範囲に入るのを待つ。


「…ん?」

「聞け!城塞都市『カルデザード』を守る兵よ!無駄な血を流す前に城門を開けよ!大人しく降伏すれば命は助けよう!」


すると軍勢の中から馬に乗った一人の男が出て来て大声で降伏勧告をしてくる。


「…射つか?」

「いや、やめておこう」

「返事はどうだ!」


隊長の一人が弓を構えて確認するので俺が止めると男は返答を尋ねた。


「無駄な血を流すのを避けたいのはこちらも同じこと!ならば一騎打ちで決めようではないか!こちらが負ければこの都市を引き渡そう!」

「…やはりそうなるか」


俺の大声での返答ついでの提案に隊長の一人は面白そうに呟く。


「返事はいかに!」

「……しばし待たれよ!使者をもって返答とする!」


俺が少し間を空けて催促すると男は少し考えて大声で返事をして軍勢の所へと下がる。


「くっくっく…守城戦、拠点防衛戦すらも一騎打ちに持ち込むか…」

「流石だね。自分の強さに絶対の自信が無いと普通はそんな提案出来ないよ」

「…それでこそ我らがリーダーといったところだな」


その様子を見ていた隊長達が笑いながら話し合う。


「…だけど、敵は一騎打ちを呑むかな?」

「どうかな…俺の予想では呑むと思うけど」


隊長の一人が冷静な感じで尋ねるので俺は可能性が高い事を告げた。


「…確かに。無理に攻めても犠牲者が出るだけ」

「それに奴らは騎士団や兵士達が戻って来るまでにこの都市を落とさねば苦境に立たされる事になるだろう」

「…よく考えたらなんで依頼人が王都に出発して直ぐに攻めて来なかったんだろう?今来ても時間が無いのに…」


隊長達が俺の考えに賛同すると別の隊長が疑問を尋ねる。


「多分途中で反転して戻って来られたら危ないからじゃない?」

「でもそれなら直ぐには戻って来れない距離で攻めてこれば良いんじゃ?」

「…確かに。そう言われてみれば…」


俺の予想に隊長の一人が反論するので俺は賛同するように考えながら呟く。


「…おそらくだが、敵は見誤ったんじゃないか?あらかじめ軍勢を潜ませておくとソレを理由に王都への呼び出しを断る口実を与える事になるからな」

「あー…いや、でもそんなアホな事ある?まあ他に理由は思い当たらないけど…」

「もしかしたら狙いはこの都市では無く別のところにあるかもしれん」


別の隊長が敵の失敗を予想し、俺が否定的に返すとまた別の隊長が敵の考えを予想した。


「別のところ?」

「それが何かまでは分からんが…本命がこの都市を奪う事で無いのなら、杜撰な軍事行動にも納得がいく」

「あー…」


俺の問いに隊長は敵の狙いを探るように考えながら話すので俺も納得するように呟く。
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