子爵家の長男ですが魔法適性が皆無だったので孤児院に預けられました。変化魔法があれば魔法適性なんて無くても無問題!

八神

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青年期 315

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「…なんと不可解でなんと不可思議でなんと奇妙でなんと面妖なことか…この刀が折れているにも関わらず、血の一滴も流していないとは…!」

「ははは。だから言ったでしょ、『相性が悪い』って」


青年はかすり傷一つ付いていない無傷の状態の分身の俺を見て愕然とした様子を見せるので分身の俺は笑って返す。


「幻術…妖術の類でこざるか?…いやしかし、拙者の太刀筋は金属や岩をも容易く断ち切る…」

「幻術や妖術で刀を折れるわけないじゃん。ああ言うのは幻とか幻覚とか人間の視覚や認知の歪みを利用する技なんだから」

「しからば妖。かつて源頼光なる武士は悪逆の限りを尽くした鬼を退治した、という逸話を思い出したでござる」


不思議そうな感じで予想する青年に分身の俺がツッコミを入れるように否定して軽く原理を話すと、青年は更に見当違いの方向へと向かった結果…本当かどうか疑わしい歴史の逸話を挙げてきた。


「かつては剣聖『上泉信綱』に一番近いと称された拙者の技を易々と見切り、確実に傷を負わせたと確信したにも関わらず無傷ともなればもはや人ではあるまい」

「へー、確かに今まで戦った相手の中でも上位には入ると思うけど…正直に言うと相性の差でソッチでも勝てそうに無いのは俺以外にも何人かは居るよ?」


青年が長刀を放り投げて腰に差した刀を抜きながら警戒した様子で告げ、分身の俺は過去に戦った刺客のおじさんや精霊使いの男性…


そして青年では絶対に勝てないであろう帝国の女の子やマスタークラスのハンター、家庭教師の男を思い浮かべながら世の中には上には上が居る事を伝える。


「ふ、ふふふ…望むところでござる。元々強くなり過ぎて戦う相手に困り果てていたところ、異なる世界では戦う相手に事欠かないのならばそれこそ拙者の望み通りでござる!」

「『いなるせかい』?って事はやっぱり異世界から来た転移者か…アイツが言った通り他にも居たんだな…」


青年は嬉しそうに笑って刀を正眼に構えたまま嬉しそうに叫び、分身の俺は予想が確信に変わった事に驚きながら呟く。


「…しかし、あと5分ほど休憩させて下さらんか?先の一撃に全ての力を込めたゆえ、今は立っているのがやっとでござる」

「…まあ刀が折れるぐらいだしな…じゃあコレあげる」


…とても一騎打ちや果たし合いの最中とは思えない青年の正直な発言に分身の俺は納得しながら近づいて回復薬の入った容器を渡す。


「…コレは?」

「簡単に言えば滋養強壮の効果が凄く高い飲み物。ソレを飲めば直ぐに疲労がポンと取れるよ」

「ほう!では早速いただこう」


青年が不思議そうな顔で受け取るので分かりやすいよう言い方を選んで説明すると青年はあっさりと信じて意外そうに喜び、一気飲みした。


「…おお!これは…!このような飲み物が存在したとは…!」

「最近ではタブレット型も普及してきてね。オブラート的なのに包むとかして口の中に仕込んで継戦能力を高める、って方法も広まってきてるよ」


少し経って回復薬の効果に驚く青年に分身の俺はヨーグルトのお菓子のような薄くて丸いタブレット型の回復錠の入った小瓶を見せながら説明した。


「…たぶれっと?とはよく分からぬが…異なる世界には素晴らしいモノが存在するのでござるな…」

「まあ固形で量が少ないから液体に比べて体力が回復するまでに時間がかかるし回復量も少ない、って欠点はあるけど…それでもどんな状況でも隙を作らず直ぐに飲めるって利点はかなり大きいからね」

「…ふむ…では拙者の体力も戻ったところで、いざ」


青年が感心したように呟き、分身の俺がメリットデメリットを話すと青年は興味深そうに呟いた後に刀を上段に構えて合図をする。


「…ふっ!」


青年は今度は叫び声を上げずに一気に距離を詰めて懐に入ると刀を振り下ろす。


「…なにっ!?」

「かかった!きええい!」


分身の俺がさっきよりも少し遅い刀を半身ズラしてギリギリで避けると、青年は振り下ろしたはずの刀を上段で構えていて…叫びながらもう一度思いっきり振り下ろした。


「くっ…!」

「なにっ!?」


…避けきれないと察した分身の俺は鉄の棒でガードし、刀が触れたと同時に向きを変えて斜めに滑らせるようにして軌道を変える。


「…流石にござる。拙者の必殺の幻影を使わされたというのに仕留め切れぬどころか傷一つ付けられぬとは…」

「『幻影』?なるほど。そんな漫画みたいな技を実際に使えるだなんて侍だか武士と言うのはヤバいな」


青年が一旦距離を取って感嘆するように言うので分身の俺は技の仕組みを理解し、先端が斜めにカットされて鋭くなった鉄の棒を見ながら呟く。


「…しかし一撃必殺を信条としている拙者の一撃が三度も避けられ、未だにお互い無傷のままとは…異なる世界ではまこと摩訶不思議な事が起こるものでござるな」

「三度…?二の太刀要らずの振り下ろしが三度って事か…?」


嬉しそうな青年の発言に分身の俺は不思議に思いながらツッコむように呟いた。


「拙者もまだまだ修行不足という事か…この果たし合い、拙者の負けでござる」

「お。降参する?」

「うむ、そなたの勝ちだ。もはや拙者に勝ち目は無い」


青年は刀を鞘に納めると負けを認め、分身の俺の確認に肯定する。
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