商人でいこう!

八神

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「…はい、おしまい」


魔法陣の描かれた紙の上に立って目を閉じると直ぐに終了のお知らせが。


「…え…?」

「それじゃあ次もごひいきに~」

「あ、はあ…」


やっぱりスキルを得た感覚も無いままお姉さんが別れの挨拶をしながら手を振るのでそのまま部屋から出る。


…こんなんで本当にスキルが買えたのか?前と同じくやっぱり騙された気分だ…


実感がないまま民宿?から出て用心棒のおじさんや情報屋の男と合流した。


「…どうだった?」

「おっと!ココではアレなので、戻ってからにしましょう」


おじさんの疑問に答えようとしたら男が遮って来る。


それからは特に何も話さずに男について行くまま表通りへと戻った。


「…それで、どうでした?」


男は周りをキョロキョロと見渡すと安心したように息を吐いて聞いてくる。


「買えた、けど…やっぱり実感が湧かない」

「そりゃあ、ねぇ…?努力で身につけていないモノはそうでしょう」


でも表示はしっかりと残ってるハズですよ?と男はフォローしてくれるかのような事を言う。


「で、値段の方はいかほどでした?相場通りでしたか?」


やはり情報屋として興味があるのか指を二本立てて確認してきた。


「あ、うん…スキルかける2万だった」

「うひゃー…相場通りで安上がりとはいえ、それでもレベルMAXじゃ相当な値段でしょう?」

「…まさか…スキルの売買を…?」


俺と男の話を聞いておじさんが驚いたように話に参加する。


「あ…うん…一応…」

「おっと、アタシはそろそろ行かないと…急いでる事をつい忘れてました」


では、またのご利用を心よりお待ちしております。と男は俺が言葉を切ったタイミングで割り込み、頭を下げて去って行った。


「…えーと…」

「話は後にした方が良さそうだ。仕入れを先にした方が良い」


俺がどこから話そうか迷ってるとおじさんは気を遣ったかのように仕事の話をしてくれた。


「あ、じゃあ、あとで…」


スキル売買の説明は後回しにして市場に向かい、何か良いものはないものか…と探す。


そしていくつかの野菜や穀物を買って目的の町へと馬を走らせる。




…その道中暇でちょうど良かったので、さっきの話をしてみる事に。



「……まあ、そんな感じ…」

「…なるほど、裏社会や闇市場では稀にスキルを売ってる事がある。と聞いた事はあったが…」


まさか本当だったとは…とおじさんは馬の手綱から片手を離して顎に手を当てた。


「それにしても額が額だな…私にはどうやっても手が出ん」

「…確かに、高いとは思うけど…」

「いや…スキルを身につけるまでの時間と労力を考えたらとても割に合わんものだ」


おじさんの意見に同意しようとしたら何故かハシゴを外されたような感じになる。


「私ならとてもじゃないがそのような端金ではスキルは売れん」

「…はしたがね…」


…元の世界に比べたら遥かに簡単だったとはいえ…


それでも苦労して稼いだ金で、悩みに悩んで買った物をそんな風に言われると多少なりともイラつくものだ。


「鑑定スキルを身につけるには最低でも一月はかかると言われ、それからレベルを上げていくのに数年から数十年も必要だと聞く」


ただの感情論に過ぎないが、やはり私にはその程度の金で売るなど考えられない。とおじさんはため息を吐きながら言う。


…ああ、なるほど…確かに数十年かけて作った物が5千万とか言われるとな…


俺でも、流石に安すぎない?とは思うかもしれない。


…という事は…俺は良い買い物した。という事になるのか?


実感は無いし、そもそも鑑定スキルってのが何か分かってないけど…


もしかして運が良かった?


…まあ、その買った鑑定スキルが本物だったら…の話だけど。
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