商人でいこう!

八神

文字の大きさ
95 / 208

94

しおりを挟む
「なに、まだまだ若いのには負けんよ」


おじさんは片手だけハイタッチすると女の子の隣に立つ。


「く、はは!たかが護衛と甘く見たか……いいだろう。今日のところは大人しく帰ってやる」


男は笑って立ち上がるとスーツを着てドアを開ける。


「…賽を投げたのはお前だ。せいぜい後悔しないように、な」


面白くなって来たぜ!と男は女の子を指差して捨て台詞を吐くと高笑いしながら出て行く。


「…なんだったのアレ?」

「領主を継いだ私に挨拶に来た…という名目でしたが、実際はお金の要求でした」

「ええ…」

「『暴れ熊』の常套手段よ。武力で脅して金を献上させるのは」


俺の疑問に答えてくれた女の子の言葉に軽くヒいてるとお姉さんも知ってたかのように内容を話す。


「そんな事が許されるの?」

「許されるのよ。…誰か止められる人がいるなら話は別だけど」

「…領土拡大の為の侵略は暗黙の了解となっているからな…難しい問題だ」


俺が聞くとお姉さんもおじさんもなんとも言えない顔で肯定した。


「…あんなのを相手にしないといけないなんて…領主ってのも大変だなー」

「…お嬢様。本当によろしかったのですか?」


俺が他人事のように呟くとドアが開き銀髪の青年が部屋に入ってきて女の子に確認する。


「私達は脅しには屈しない…という意思を見せなければ前領主の二の舞です」

「あの暴れ熊のことです。おそらく脅しでは済まない…実際に領土侵略を仕掛けてくると思われますが」

「ではあの男の提案を呑め、と?前領主は一度お金を差し出してからズルズルとたかられ続けたと聞きます」


私達は同じ過ちを犯してはならないのです。と女の子は不安そうにしている青年に強気の姿勢で返した。


「…なにがあったの?」

「…あの領主は面会するや否や『領土を攻められたくなければ金をよこせ』と威圧的な態度で脅してきたのです」

「…わお、まるでタチの悪い反社だな…」


俺が聞くと女の子は思い出すかのように状況を教えてくれ…


その内容に思わず呟きが漏れる。


「続けて『金さえ貰えれば攻めるのは勘弁してやる。平和や安全を金で買えるんだ…安いものだろう?』と」

「…えぐい因縁の付け方だな…反社の人だってもっとマシな理由を考えるのに…」

「しかも守るなんて一言も言ってないのが、また…お金を貰って不干渉。だなんて楽で羨ましいことね」


女の子の言葉を聞いてなんとも言えない気持ちで呟くとお姉さんが嘲るように鼻で笑う。


…いやいや、日本じゃそんな脅しを使おうもんなら一般人でも普通に捕まるぞ。


「お嬢様。そろそろ次の公務のお時間が…」

「…じゃあ、またね」


銀髪の青年が『さっさと帰れ』と言いたそうな目で見てくるので俺は邪魔しないよう帰る事に。


「ええ。仕事を捌けるようになってきたら今度はこちらからお伺いいたしますわ」

「頑張って、応援してるよ」

「…私はまだまだ至らぬ身ですので…もしもの際にはご助力の方をお願いすると思います。奴隷の分際で…と思われるかもしれませんが…」


迷惑でなければ…ぜひともよろしくお願い致します。と女の子は玄関先で見送りの挨拶なのか、長ったらしい事を言って頭を下げた。


「…忙しそうだったねぇ…」

「そうね。執務は主に側近の人達がやるでしょうし…今の所は主に視察や面談、会合への参加とか人前に出る仕事だけだと思う」

「…おお、まるで接客業…めんどくさそう」


少し早めの昼飯を食べる店を探しながら話しかけるとお姉さんが仕事内容を予想して返す。


「…接客業か。確かに間違ってはいないな」


質や責任の面では次元が違うが。と俺の呟きにおじさん反応する。


「…あの歳で責任を背負うのか…まあ、頑張って欲しいよね。俺には応援しか出来ないけどさ」


あの女の子を軽く不憫に思いつつも俺には関係ない事なので投げやりに話を締めた。


…適当に街をぶらついて美味しい物がありそうな店を見つけたのでそこで昼食を食べる。


「…お、美味い」

「…うーん、お酒が飲みたくなってくる…」


見た目はロールキャベツ、中身がサイコロステーキ、みたいな変な料理を食べてるとお姉さんが物足りないように呟く。


「流石に昼間から酒は…」

「大丈夫、週一以上は飲まないって決めてるから」


おじさんの呆れたような言葉にお姉さんが意外な返事をした。


…毎日飲んでるイメージだったのにあんまり飲んでないんだ…意外。
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

魔法使いじゃなくて魔弓使いです

カタナヅキ
ファンタジー
※派手な攻撃魔法で敵を倒すより、矢に魔力を付与して戦う方が燃費が良いです 魔物に両親を殺された少年は森に暮らすエルフに拾われ、彼女に弟子入りして弓の技術を教わった。それから時が経過して少年は付与魔法と呼ばれる古代魔術を覚えると、弓の技術と組み合わせて「魔弓術」という戦術を編み出す。それを知ったエルフは少年に出て行くように伝える。 「お前はもう一人で生きていける。森から出て旅に出ろ」 「ええっ!?」 いきなり森から追い出された少年は当てもない旅に出ることになり、彼は師から教わった弓の技術と自分で覚えた魔法の力を頼りに生きていく。そして彼は外の世界に出て普通の人間の魔法使いの殆どは攻撃魔法で敵を殲滅するのが主流だと知る。 「攻撃魔法は派手で格好いいとは思うけど……無駄に魔力を使いすぎてる気がするな」 攻撃魔法は凄まじい威力を誇る反面に術者に大きな負担を与えるため、それを知ったレノは攻撃魔法よりも矢に魔力を付与して攻撃を行う方が燃費も良くて効率的に倒せる気がした――

断罪まであと5秒、今すぐ逆転始めます

山河 枝
ファンタジー
聖女が魔物と戦う乙女ゲーム。その聖女につかみかかったせいで処刑される令嬢アナベルに、転生してしまった。 でも私は知っている。実は、アナベルこそが本物の聖女。 それを証明すれば断罪回避できるはず。 幸い、処刑人が味方になりそうだし。モフモフ精霊たちも慕ってくれる。 チート魔法で魔物たちを一掃して、本物アピールしないと。 処刑5秒前だから、今すぐに!

【第一章改稿中】転生したヒロインと、人と魔の物語 ~召喚された勇者は前世の夫と息子でした~

田尾風香
ファンタジー
ある日、リィカの住む村が大量の魔物に襲われた。恐怖から魔力を暴走させそうになったとき前世の記憶が蘇り、奇跡的に暴走を制御する。その後、国立の学園へと入学。王族や貴族と遭遇しつつも無事に一年が過ぎたとき、魔王が誕生した。そして、召喚された勇者が、前世の夫と息子であったことに驚くことになる。 【改稿】2026/02/15、第一章の39話までを大幅改稿しました。 これまで一人称だった第一章を三人称へと改稿。その後の話も徐々に三人称へ改稿していきます。話の展開など色々変わっていますが、大きな話の流れは変更ありません。 ・都合により、リィカの前世「凪沙」を「渚沙」へ変更していきます(徐々に変更予定)。 ・12から16話までにあったレーナニアの過去編は、第十六章(第二部)へ移動となりました。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

転生令息は攻略拒否!?~前世の記憶持ってます!~

深郷由希菜
ファンタジー
前世の記憶持ちの令息、ジョーン・マレットスは悩んでいた。 ここの世界は、前世で妹がやっていたR15のゲームで、自分が攻略対象の貴族であることを知っている。 それはまだいいが、攻略されることに抵抗のある『ある理由』があって・・・?! (追記.2018.06.24) 物語を書く上で、特に知識不足なところはネットで調べて書いております。 もし違っていた場合は修正しますので、遠慮なくお伝えください。 (追記2018.07.02) お気に入り400超え、驚きで声が出なくなっています。 どんどん上がる順位に不審者になりそうで怖いです。 (追記2018.07.24) お気に入りが最高634まできましたが、600超えた今も嬉しく思います。 今更ですが1日1エピソードは書きたいと思ってますが、かなりマイペースで進行しています。 ちなみに不審者は通り越しました。 (追記2018.07.26) 完結しました。要らないとタイトルに書いておきながらかなり使っていたので、サブタイトルを要りませんから持ってます、に変更しました。 お気に入りしてくださった方、見てくださった方、ありがとうございました!

異世界なんて救ってやらねぇ

千三屋きつね
ファンタジー
勇者として招喚されたおっさんが、折角強くなれたんだから思うまま自由に生きる第二の人生譚(第一部) 想定とは違う形だが、野望を実現しつつある元勇者イタミ・ヒデオ。 結構強くなったし、油断したつもりも無いのだが、ある日……。 色んな意味で変わって行く、元おっさんの異世界人生(第二部) 期せずして、世界を救った元勇者イタミ・ヒデオ。 平和な生活に戻ったものの、魔導士としての知的好奇心に終わりは無く、新たなる未踏の世界、高圧の海の底へと潜る事に。 果たして、そこには意外な存在が待ち受けていて……。 その後、運命の刻を迎えて本当に変わってしまう元おっさんの、ついに終わる異世界人生(第三部) 【小説家になろうへ投稿したものを、アルファポリスとカクヨムに転載。】 【第五巻第三章より、アルファポリスに投稿したものを、小説家になろうとカクヨムに転載。】

【完結】姉に婚約者を奪われ、役立たずと言われ家からも追放されたので、隣国で幸せに生きます

よどら文鳥
恋愛
「リリーナ、俺はお前の姉と結婚することにした。だからお前との婚約は取り消しにさせろ」  婚約者だったザグローム様は婚約破棄が当然のように言ってきました。 「ようやくお前でも家のために役立つ日がきたかと思ったが、所詮は役立たずだったか……」 「リリーナは伯爵家にとって必要ない子なの」  両親からもゴミのように扱われています。そして役に立たないと、家から追放されることが決まりました。  お姉様からは用が済んだからと捨てられます。 「あなたの手柄は全部私が貰ってきたから、今回の婚約も私のもの。当然の流れよね。だから謝罪するつもりはないわよ」 「平民になっても公爵婦人になる私からは何の援助もしないけど、立派に生きて頂戴ね」  ですが、これでようやく理不尽な家からも解放されて自由になれました。  唯一の味方になってくれた執事の助言と支援によって、隣国の公爵家へ向かうことになりました。  ここから私の人生が大きく変わっていきます。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

処理中です...