商人でいこう！

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「ああ、最後に。皇帝が誰であるかは非公開情報にしましたので、お兄さん達が直接バラさない限りは知る人は限られて来ます」

「…影の権力者、と言うわけか」

「なのでその情報を広めるか否かの判断はお兄さんに任せます」

「…ありがとう」


どうやら情報屋の男は俺に気を遣ってくれたようなのでその配慮に対してお礼を言う。


「いえいえ。それでは私はこれで…あ、一応あのお姉さんにも同じ話はしてありますので」


部屋から出る前にふと思い出したように言うと会釈をしてから出て行った。


「…難しくて良く分からない話だった…」

「…簡単に言うならば、あの国で一番偉くなった…という事だ」


俺がため息を吐きながら呟くとおじさんが子供にも分かるような説明をする。


「…ふーん。一番偉いって言われてもね…」


俺が何したわけでも無いし…と、俺からしたら所詮異世界での地位なんて元の世界では一ミリも役に立たなそうなので特に嬉しさも喜びも無い。


「…今さっき情報屋が言ってたようになんでも出来るぞ？絶対王制の独裁者や支配者のようなものだ」

「…急になんでもできるって言われても…やる事思いつく？」

「そうだな…金は余るほどにある、美味い物は普段から食べ慣れている、女は…まだ早いか」


…そう考えたら特に無いな。と、おじさんは指折り数えて微妙な顔で答えた。


「でしょ？…まああまり気にしないのが一番かな。いつも通りでいいんじゃない？」

「…そうだな」


話が終わったところで時計を見ると…昼飯まで残り二時間。


…二度寝から起きたばっかりだから眠気も無いので…


暇つぶしに久しぶりに街の図書館に行く事にした。


「…じゃあまた昼前に」

「分かった」


図書館まではおじさんに久しぶりの馬で送ってもらって入口で別れる。


 …図書館で実用書とか歴史系とか適当な本を読んで午前中の時間を潰して昼食の時間に帰宅。


「…あれ？どうしたの？」

「昼食は車の中で食べましょう。どうやら動きがあったみたい」


家に着くとお姉さんが車の中に何かを運んでるので尋ねたらどうやら出発の時間が早まったらしい。


「…動き？」

「うん。詳しい話は移動中にするね」

「…分かった。準備するよ」

「お願い」


少しでも早く移動したいのか説明を後からすると言うので俺は用心棒のおじさんと一緒に出発の準備をした。


「…ごちそうさま。…そろそろ聞いて良い？」


俺は昼飯を食べ終わった後に食器をシンクに片付けてからお姉さんに聞く。


「敵が攻めて来たのよ。正確には鉱山に置いてある機材の回収だけど」

「…敵？なんで？」

「…魔王軍がいなくなったからチャンスだということだろう…が、当然他国の領土に許可無く軍を派遣するなど問題行動だ」

「…なるほど」


お姉さんの説明がよく分からなかったので聞くとおじさんが簡単に教えてくれる。


「そう、そこが問題なの。普通なら宣戦布告の敵対行為でしょ？」

「…って言っても…どうするの？こっちも軍を出すとか？」

「軍はまだ編成していない。各地の生き延びた兵達を招集するには多少の時間がかかる…それに、集まったとしても…」


お姉さんがおじさんの発言に付け足して来たので俺は案を出したが元騎士団長の男に却下された。


「…どうするの？」

「ふっふっふ…ちゃんと考えてあるから大丈夫！まずは鉱山に行って軍事行動の証拠を押さえる」


不安になって聞いたらお姉さんは余裕そうに漫画みたいな笑い方をして段取りを説明し始めた。


「…次は？」

「宣戦布告かと脅して…講和まで持っていく。条件は…最優先で製錬や精錬が出来る工場の譲渡ね」


それも人手付きの。と、いきなり妄想のような内容になってきた。


「…そういうことか。確かに国内に新しく作るよりはコストが低く済む」

「あとは…まあ経済支援とか国の立て直しに必要なその他諸々はゆっくり考えてからが良いと思う」

「…そんな上手くいくかな…？」


おじさんも、王子や王女…3人の女性達も驚いたような反応を見せるが俺は不安感が拭いきれない。