料理人がいく!

八神

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「…ソレで、騎士を辞めてココに来たワケだ」

「なるほどな、どうりで魔物が彼女に懐いてるワケだ…共存か」


男は青年が説明している最中にも我関せずでスルーを決め込んでいた彼女を見る。


「…平等を自分優位だと思い込んでる、という発言にはズシンとクるモノがあるな」


男が天を仰ぐように椅子の背もたれに体重を預けながら続けて言う。


「ああ、流石に年の功とも言うべきか…俺のような若輩者では到底敵わない事を知った」

「おいおい…あんな少女に向かってその言い方は無いだろう」


シミジミと呟く青年に向かって男がコソコソと発言の訂正を促した。


「…は?もしかして…まだ言ってないのか?」


青年は男の言葉に驚くと彼女の方を向いて聞く。


「は?」

「…君に言ってるんだが…」


何言ってんだコイツ…みたいな男の視線を受けて青年が彼女に再度話しかける。


「ふんふ~…ん?何が?」

「話を聞いてなかったのか…?」


彼女は作業を止めずに首を傾げて聞き、青年は意外そうに呟いた。


「ん~…聞いてたけど右から左で覚えてない」


手を止めて少し考えるも彼女は直ぐに作業を再開してどうでもよさ気に言う。


「彼に君の…その…年齢とか…教えてないのか?」

「ああ、うん、今まで聞かれなかったから」


言い淀みながらしどろもどろの青年の発言に彼女は何かを理解したように答える。


「…年齢?もしかしてその外見で実は二十歳でした、とかか?」

「いや…」

「そんなに若くねぇわ」


男の茶化すような発言に青年が困ったように軽く否定すると彼女がツッコむように否定した。


「だってもう80前後だし」

「…は?はは、おいおい…いくらなんでも冗談が過ぎるぜ…どう見ても見た目13、4の少女だろう」


彼女のカミングアウトにも男は本気にせず笑いながら返す。


「なあ?お前も80なんて嘘だと思うだろ?」

「…ああ、そうだな…」

「まあ信じるも信じないも勝手だけどね」


笑いながら同意を求める男に青年は適当に同意すると彼女は投げやりに言う。


「流石に信じないって…なあ?」


更に男は笑顔で青年に同意を求めるも青年は気まずそうな顔をして何も言わない。




「……え?なに?マジなの…?は、ははっ…は、80ってこんな少女がありえな…ぃ…」


この場の空気に男の笑顔が徐々に困惑へと変わっていき…言葉も尻すぼみになる。


「いやいやいや!おかしいだろ!どう見ても少女だろう!?」

「だから、信じるも信じないも勝手だって」


シーンとした空気の中で男がテーブルを叩いて立ち上がり叫ぶも彼女は軽く流した。


「…お前は、信じたのか?」

「ああ、君と同じかそれ以上に驚いた」

「…え、えええー!!!」


男が青年に聞くとその返答に少し間を空けて驚き絶叫する。


「おかしいだろ!その外見で80歳はおかしいって!エ○ゲーでも中々無いぞ!?」

「その驚き方もおかしいと思うが…彼女曰くアンチエイジングらしい」

「あ、アンチエイジングか……なんか一気に納得できてしまったな」


かなり取り乱した様子の男も青年の説明で一気に冷静になった。


「それとコレを言って良いのか…彼女は…」

「あ、俺…実は男だからさ?外見は女だけど」


青年が言い淀んでると彼女が作業を止めて男の方を振り向きながら告げる。




「…は……はああああ!!!?」


青年の時と同じように、彼女の性別カミングアウトで本日二度目の男の絶叫が響き渡った。
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