料理人がいく！

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「では行ってくる」

「おー」


昼食後。


出掛けの挨拶をする青年に作業している彼女がやる気なさげに返事する。


「俺も行ってくる」

「はいはい」


青年に続くように男が言うと彼女は興味無さそうに返した。


「ふふんふん♪」


久しぶりに一人となった家の中で彼女はご機嫌そうに粉と水を混ぜた生地を練る。


「よし、後は置いとくか」


練り終わった生地が入っている大きなボウルと小さなボウルにそれぞれ大風呂敷の布とハンカチのような布を上からかぶせた。


「さて…夕飯の準備も半分は終わったし…」


彼女は青年が置いていった食材が入っている大風呂敷を持ち上げるとシンクの中に入れ、水で洗う。


「包丁スキル『皮むき』『みじん切り』」


そしてフライパンを取り出し、スキルを使って刻んだ食材を入れて外に出る。


「…スキル『料理』『瞬間加熱』」


はしごをのぼってフライパンの中身を大釜の中に入れるとスキルを使って一気に加熱させた。


「ねるねるねる……ねるねるねる…♪」


某CMのような言葉を口ずさみながら彼女は大きめの棒で大釜の中身をかき混ぜる。


一方その頃、青年達はというと…


「なあ、なぜ徒歩で行くんだ？」

「魔物達も何回も往復して疲れてるだろうからな」


ようやく山の麓へと着いた所だった。


「…それもそうか…」

「なに、夕方までには帰って来れるさ」


いざとなれば走ればいい、と青年は爽やかに笑う。


「…この体力バカが…」

「あ…」


男が呆れたように呟くと『騎士 Lv17』と表示された女の人と遭遇する。


「こ、これからお出かけですか？」

「君は何しにこの山に？」

「…ほう、コレが話に聞いた女の子か…中々可愛いじゃないか」


女の人の問いに青年が聞き返すと男が品定めするように見た。


「俺たちは『ゾンビ解除』の料理を作るために足りない材料の買い出しに行くんだが…」

「あ、ではお供します、何かしらの手伝いをするために来たので」

「…俺、邪魔？」


青年が言いかけると女の人が助力を申しでて、男がポツリと呟く。


「？なぜだ？」

「…いや…騎士団の秘密の話でもするのかと…」


不思議そうに聞き返して青年に男はなんとかごまかす。


「秘密の話なんてあるわけないだろう？じゃあ一緒に行こうか」

「はい！」

「…やれやれ…」


青年が笑いながら女の人の同行を促すと嬉しそうに返事し、男が一歩遅れて歩き出して聞こえないようにため息混じりに肩を竦める。


道中適当な世間話を交えつつ、山の麓から歩く事二時間ほどで近くの街に着いた。


「…ふう、やっと着いたか…」

「…そういえば…君は何を買いに来たんだ？」


街に入り疲れたように呟いた男に青年が聞く。


「ジュースとかの飲み物だよ、あとは生活用品」

「…生活用品…か、そうだな、いくら自給自足とは言え食べ物以外にも必要な物はある」


男の答えに青年はその手があったか…みたいな反応をして顎に手を当て考え始める。


「とりあえず俺は街をぶらつくぜ？田舎の街だからそんな広くないし、適当に歩いていれば自然に合流するだろ」


男はそう言って一人で歩いて行った。