料理人がいく！

番外編『魔法使いがいく！』

4

…それから数日後の朝。


「…それでは行ってくる」


彼はドアを開けると、朝食後の片付けを済まして椅子に座ってる彼女に出かけの挨拶を告げた。


「ん？ああ」


彼女は彼を見ずにどうでもよさそうに言うと手をヒラヒラと振る。


「…お、もう行くのか…頑張れよ」

「頑張って下さい！」


彼女の反応に微妙な表情をしながら外に出ると、丁度ストレッチ中らしい青年と女の子が彼に気付いて声をかけた。


「ああ、彼女の事は任せたぞ…何かあれば連絡しろ、直ぐに駆けつける」

「分かっている」


彼が有事の際に自分を頼るように、と告げると青年は笑いながら頷く。


「…召喚スキル『シュリオ』…『ライド』」


彼は青年の返事を聞くと手を上げてスキルを使う。


すると彼を中心に魔法陣が展開し、上空に巨大な飛空艇が出現する。


「…とりあえずは支部、か…」


スキルを使って飛空艇に乗り込むと、ボソッと呟き魔導協会の支部がある街へと走らせた。


…10分後。


「『ダウン』…召喚スキル『ストック』」


早くも支部のある街の上空へ着いた彼は少し離れた場所でスキルを使って降り、召喚獣をしまってから支部へと向かう。


「おはよう」

「お、おはようございます！」


彼が支部へと入り挨拶すると中に居た人達がざわめき、受付嬢が立ち上がって挨拶する。


「早速依頼の詳細を聞きたいんだが…」

「あ、はい！…数ヶ月前に起きましたA国とB国の戦争をご存知ですか？」


彼の言葉に受付嬢は緊張した面持ちで資料を取って話し始めた。


「…いや、すまない…世間には疎くてな」

「ああ、いえ！大丈夫ですよ！開戦の理由はB国による侵略です、近年の調査でA国とB国の国境付近の山で資源が豊富な事が明らかになりまして…」

「…なるほど…B側がAから奪い取られた土地だ！とでも難癖を付けたか…」


受付嬢の説明を聞いて彼は思い出したかのように呟く。


「それで戦争になるや否や聖騎士がB国側に介入し始めたんです」

「！？なんだと！協会は常に中立の立場でなくてはならない。の協会五原則に違反するんじゃ…！」


続く説明を聞いて彼は驚愕する。


「協会も黙認しているようなので明確な違反です…が、今現在聖騎士の数が多い聖騎士協会を誰も咎められないのが現状です」

「…どこの国だって協会側と争うのは避けたいだろうからな」


…魔導協会や癒しの協会とパワーバランスが取れていればこんな事には…！と、彼は憤るように呟いた。