料理人がいく!

八神

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番外編『魔法使いがいく!』

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「幸い協会不文律である不可侵協定が守られ、王族や政府関係者等は癒しの協会や魔導協会の支部がある街に避難して事なきを得ていますが…ソレもいつまで続くか…」

「それで?俺はソコで何をすれば良い?」


受付嬢の歯切れ悪く状況説明を終えると彼が問う。


「魔導協会からは街の防衛を任務としています。けど…」

「けど?」


受付嬢が資料を見てまた歯切れ悪い説明をするので彼は不思議そうに聞き返す。


「き、教皇から直々に指示が来てまして…『可能であれば防衛だけにとどまらず攻略に出て他の街を奪還して欲しい』…との事です」

「教皇からだって…!?」

「凄い…!魔導師でも滅多にない事なのに…!」

「…ふん、魔導協会の戦力増強を誇示しようって腹か…」


受付嬢の読み上げに周りがザワザワと騒がしくなる中、教皇の考えを読み取ったのか彼が面白くなさそうに呟いた。


「…まあいい、了承だ…俺はどこの担当になる?」

「A国の南側に位置する港町ですね…政府関係者や要人が数多く避難している街で、周辺にB国の軍がかなりの規模で集まっているという情報も…」

「最重要地点で最前線、最終防衛線の上に危険地帯か…初陣としては少々役不足感が否めないが、まだ所属したばかりの新人だからそこは我慢しないといけないな…」

「…お気をつけて」


受付嬢がトーンを落とした暗めな感じでの説明に彼は納得いかないのか、愚痴るように呟くも踵を返して出入り口へと歩いて行く。


「…召喚スキル『シュリオ』『ライド』」


彼は支部から出ると建物の裏の方に移動してスキルを使う。


そして上空に出現した召喚獣に乗り目的地へと向かった。


「……ほう、コレは…」


…本来ならどんなに早くても二、三日はかかるような場所に半日も経たずに着いた彼は上空から地上の様子を見ながら呟く。


地上では港町を包囲するように人が大量に集まっており、大規模なテントによるキャンプや木材で作られた急ごしらえの砦みたいな建物も複数存在している。


上空からはB国が南側に戦力を結集してる様子が一目瞭然だった。


「随分と大規模な展開だな…あの港町だけではなく、周りの街や村を睨んでいる…」


もしや…あそこに王族がいるのか?と、彼は上空から戦況を見ながら予想を立てる。


「…いや、東側にも少数ながら部隊が展開している…なるほど、協会があるのは東と南の一部の街や村…というわけか」


召喚獣でA国をグルリと周りながら現在の戦況を確認すると、人が大量に集まっている南側へと戻って来た。


「…今のところ無事なのは東側の街が一つ、そして南側に街二つで村一つ…さて…」


彼は港町の上空で待機しながらブツブツと呟き、どう動こうか…と考える。


「おそらく協会員や兵士の数も限られている…」


手薄な所から攻めるべきか…などと作戦を考えている間に太陽が沈み、辺りは真っ暗になっていた。
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